第36話
後日。
「是非も無しー! いやー、この間は驚いたぞ! まさか余があんなに出現するなどとは! のう、光秀!」
「は、はい、まことに大変でしたね」
超萌え萌え戦記の織田信長は、真っ黒なアイドル衣装のようなものを身に纏い、背中には放射状に種子島銃を装備しているという出で立ちだった。今彼女は中央広場にて、光秀と団子を食べている最中である。
それを眺めているのは、SSR子、SR子、R子、N子。そして覚醒の宝玉(R以下)である。
「……しかしまさかN子が頭脳プレイに走るとはな。よく気が付いたな。『織田信長が知ってる明智光秀もそれぞれ違う』っていうことに」
SR子が、何か憑き物が落ちたような顔でN子に言った。久しぶりにストレスを大いに解消出来た様子である。
「ああ。あれだけ色んな種類の織田信長見せつけられてちゃ、結構気が付くもんだぜ。最終問題ってことで光秀連れて、『こいつはだーれだ』って言ったらアイツが一発ヒットしてさ。それでその瞬間そいつだけ残してお帰り願ったんだよ。玉藻前達が1か所に集めてくれたおかげだな」
「全員殺せばよかったのにな」
「やめてくれR子。マジで。お前の想いの深さはよくわかった」
R子が殺意に漲った目で織田信長・明智光秀を見ていた。
「今回俺は出番なかったみたいだが、流石出来た妹たちだ。割れずに済んだしめでたしめでたしだ」
「あ、やっぱ割れるのは嫌なんだ? 兄ちゃん」
「うん、わりと痛いんだぞあれ」
「そうなんだ!? 痛覚あったんだ兄ちゃん!」
「……でさ。うん。めでたしめでたしってことは分かったんだけど、一つだけいいかしら? N子」
「何だよ?」
「この方々は何?」
そう言って指さしたのは。
隣でこっちをガン見している、教科書に忠実な織田信長×5だった。
「ああ……そいつらな。サービス終了したゲームからダウンロードされたらしいから帰りようがないんだと。だからここに置いてくれってさ」
「何で!? 何でここに留まらせるのよ!?」
「知らねーよ! アタシだって知らねえよんなもん! だけどいくらなんでも、全て終わった世界に帰れなんつーのも忍びねえからっていうこと村長に言われたんだよ! 断れねえだろーが!」
「もっと素敵な殿方だったらよかったのにー! 何でよりにもよってこんな教科書通りの顔をしてるのかしら!」
「うん、邪魔だよね。殺そ、やっぱ。今すぐ殺そ」
「やめろR子! こいつらだって住人になるんだぞ!」
忠実織田信長はR子の方を向いた。
そして、チューでチューなトレインよろしくぐるぐる回り始めた。
「やっぱ殺していいよね」
「やめろって! 気持ちは分かるけど! 大いに気持ちは分かるけど殺しはするな!」
「命乞いなのか抗議なのか分かりにくいんだよ! 何なんだよテメーらのその習性は!」
馬鹿馬鹿しくて騒がしい、ボックス村の日常は続く。
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