③夢想旅行

旅行先。【白】

見上げ切れないホテル。【灰】

ブラウンな光沢を撒き散らしたロビー。【茶】

下る矢印に合わせるエレベーター。【黄】

クラスメイトで満たされた箱の中身。【茶】

一足早く着いて開ける部屋の鍵。【銀】

隣に付いてきたのは一人。【肌】

遅れてやってくる相部屋の人達。【黒】

和室に広がる一面の畳。【枯】

置かれた荷物。【黒】

敷かれた布団。【灰】

点けるテレビ。【黒】

じゃれ合うクラスメイト達。【黒】

端で体育座りする彼女。【肌】

窓に反射する二人の影。【透】

予定時刻までの猶予を示す時計。【鼠】

決心して話しかける、彼女の唇。【桃】

快諾して立ち上がり、二人で去る部屋。【飴】

後ろに残す級友の声。【黒】

来た道を折り返す廊下。【灰】

足元に落ち着きを生む絨毯。【小豆】

天井に吊り下がるシャンデリア。【象牙】

二人きりのエレベーターで降りる階下。【茶】

通過するフロント。【杏】

エントランスを抜け、外気に触れる夕暮れ。【朱】

車道の手前で曲がる脇道。【鈍】

進んでゆくと現れる石畳の階段。【墨】

左右に植えられた観葉植物。【緑】

軽い勾配を登り、越えた先。【素】

目に飛びんでくるのは、ひたすら広大な田園地帯と、それを一望できる大量のベンチ。【青丹】

野球場よりも大規模な土地に、縦横へ何十列にも及ぶ石製の席。【灰青】

後方には茂った草木と雑木林、そして落葉の降り積もった地面。【深緑】

石の間の通路を歩き、何となく向かう奥側。【薄鈍】

周りには既にぽつりぽつりと幾人かの生徒。【黒】

自然と人気の少ない場所を求め、行き着いた中央。【鈍】

ベンチの左端へ腰を下ろし、続いてその隣に座る彼女。【肌】

真正面を見据えると、下半分の隠れた夕日。【小麦】

陽炎のような空気の淀みに、揺らぐ木々。【黄赤】

不規則に繁茂する森林と田畑が補う枯れた地面。【浅黄】

赤銅の景色を焼き付けていると、北から吹く風。【萱草】

右を振り向いて一瞥する彼女の髪。【濡羽】

一瞬に留まらず吸い込まれる表情。【肌】

気付いた彼女は背を傾けて崩す姿勢。【肌】

視線と視線が向き合い、訴える何か。【肌】

何かとは、恐らく衝動。【緋】

心の奥から舞い上がる彼女への欲求。【緋】

彼女の優しさ。【桜】

彼女の優美さ。【薔薇】

彼女を独り占めする優越感。【深緋】

散り散りの群衆なんて気に留めない、隣同士の彼女。【肌】

右手を強く握り、呼吸の整調。【肌】

少し背の高い彼女の襟元。【肌】

今がチャンス。【紅】

向きを変える足。【肌】

回す腕。【肌】

伸ばす身体。【肌】

ゆっくり近付く彼女の顔。【肌】

その横に寄せる唇。【桃】

彼女の耳の側。【肌】

好き。【紅緋】

囁く、詞。【紅】

横顔からも分かる、彼女の真っ赤な顔。【紅】

照れ隠しに、息を吐く悪戯。【薄紅】



陽が地平線の下。【かち

薄暗い空が占領する風景。【褐】

ベンチの隅でこそばゆそうに笑う彼女。【薄紅】

すると彼女の奥から、人の形。【黒】

階段から生えてくる人々の大群。【黒】

館内に居た生徒等。【黒】

右から左へ、こぞって席を埋め出す様子。【黒】

記念撮影の時刻。【黒】

それを告げる雑音。【黒】

あれだけ空虚だった一帯が、勢いよく埋没。【黒】

二人の座るベンチにも加入、介入。【黒】

個人から集団へと移り変わる雰囲気。【黒】

儚く思い、暗色の光景を展望。【青褐】

その時、水田に生まれる小さな灯り。【丹】

ぼんやりとした淡い炎。【橙】

一つ浮かぶと、二つ、三つと、次々に煌めく灯火。【丹】

美しく、朧気な光。【橙】

周囲の騒めきを忘れて、夢中に見入る目の前。【丹】

下腹から上腹へ範囲を拡げ、とうとう全体に到達。【橙】

深まる夜闇に伴う調和。【紫黒】

初めて旅行らしい景色に出会ったと、心に抱く情感。【白】

ふと右を覗くと、また顔を赤らめる彼女。【紅】

何だろうと思索し、下半身の密着を自覚。【白】

お互いの足が擦れて、帯びる熱。【薄紅】

肌と肌の交わり。【紅】

無意識を意識した途端、沸騰する気持ち。【紅緋】

曖昧な明かりに照らされて、艶めかしい彼女。【牡丹】

そして手を差し伸ばす、その太股。【肌】

軽く愛撫。【緋】

口を抑えて、彼女の我慢する声。【牡丹】

もう我慢できない、理性の限界。【深緋】

抱きついた、彼女の胸。【紅】

カメラにポーズするクラスメイトの中。【黒】

二人だけの微かに甘い夜。【黒】

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