⑬ロリータのために
昼休み。
「きたぁーー!今日は、給食当番の日だぁーーー!!!」
突然席から立ち上がり喜びを心の奥から産地直送してみたところ、私の席を取り囲む四人、どころではく教室全体が注目の視線を寄越してきた。配膳係、待機列、おまけに先生までも作業の手を止めて、不可思議で私を不可視にしてしまいそうな目からビームを撃つ。楽しそうなガールズトークやボーイズトークも瞬間的に葬式へと出向き、確かに空気は死んじゃったなーという趣旨の独り言を流石に喉元で抑えた。目下のストローを覗き込んで穴があったら入りたいと思う余裕もなく、死んだ空気に則した慎ましやかな仕草で手配済みのお盆が乗った机に親しげな椅子とお尻をぺったんこする。人為的に緊迫感と刺激を与えられた日常は椅子を引く音をイントロとして通常を奏で始め、「またあの調子だよ」「いつものことだな、あいつには」と言った歯に衣着せぬ意見を有無も言えず受信した。
「いや、えへへ」
恐縮振りつつ心の内では最高の知らせに胸と両足をじたばたさせる。また台風の目に飛び込まないよう多少控えめに。私が言う給食当番とはこの六年一組で私の横槍がありながらも任務を全うしている彼女ら彼らのことではなく、六年生の義務として一年生の給食の面倒を見る役割のことだ。個人的には毎日通いたいけど日替わりで担当グループが変わるからその思いは実らない。そして今日は私達の班が一年生幼女といちゃいちゃできるという旨がちょうど先生の手腕により黒板に刻まれたのだ。先生や同級生には何の感情も抱いてないしだからこそ普段の生活ではどう振舞おうが問題ないけど、幼女のことになればそれはもう一大事でとっても大事。六年生に進級してからの一番の楽しみとなっている。
両肘を机に付けながら特に仲良しなあの娘を空に浮かべて上昇する感情を出来る限り心の中に抑えていると、一人また一人と班員が食料の調達から舞い戻り過疎地域だった教室の着席率も高まってきた。六年生と一年生の食事のタイミングは年の功ゆえこちらの方が早く急いでべれば食べるほど幼女との時間も増えるのでいつ知らされても対応できるよう真っ先に給食を受け取った私だったが、お約束の「いただきます」を唱えるまでいただけないため結局無駄足に終わった。座ってゆく生徒達には気持ちを切り替えてお友達との世間話に現を抜かす人もいれば継続は力なりを信じて私を噂し続ける人もいる中、私の近隣住民は呆れた雰囲気で見ていなかったことにしていた。一年生の教室に同伴した経験があるから
二重の声を踏み台に食事開始のゴングが鳴ると、即ノックダウンが目標のわたしはお皿に乗った白米、海苔、ミートスパゲティ、けんちん汁、リンゴゼリー、牛乳を酸素のように吸引しお腹を窒素の割合=腹八分目で満たし教室から二酸化炭素のごとき速さで走っていった。置き去りにしたクラスメイト及び班員がどんな顔になっているかそれとも興味を示していないか分からないまま、廊下をドリブルで駆け抜け、階段でバンジージャンプし、地上一階にトリプルアクセルする。印刷室やら図工教室やらの前を通れば、一年二組と書かれた看板が目に入る。今日も一番乗りでかわいい子供たちが拝めるぞやったぁと思いながらその興奮を包み隠すようにスピードを徐々に落としていくこと十数秒、横開きのドアの前へと至った。児童達の黄色い声が板切れ越しに聞こえてきて、まだまだもぐもぐ真っ最中なことが伺える。深呼吸による息の調整と頬の緩み具合の確認を遂げて脳がゴーサインを告げた時、待ちわびていた聖地へ足を差し伸ばす。
中に入れば予想以上に激しい黄色が飛び交い、私の加入に気付いた手前の子どもが「あー!来たおー!」と叫ぶ。それを切っ掛けに二十四くらいありそうな瞳が一斉にこちらを向く。「わぁ、お姉ちゃんだぁ」「ハルネちゃん、でしょー?」「いらっしゃあい!」等々の歓声と歓迎が広がり、私も「来たよぅ」手を振って応える。「あ」の一文字が一面に飾られた壁をバックに擬似ファンサービスに浸っていると、誰よりも早く私の元にやって来る娘がいた。たったったっと軽いステップで駆け寄り、「おねーちゃーんーっ」と言いながら私の膝下に抱きついた。
「おねぇちゃん……おかえりぃ?」
アクセントの外れた声で、下から私を見上げる女の子。かわいい。この娘の名前はみーなちゃん。みーなちゃんとは初めて一年生の教室に来た時からとても仲良くしている。一生櫛の出番が無さそうなすらっとした髪が肩で揺れ、前髪の隙間から上目遣いする瞳は淡く輝き、程よく日に焼けた肌色が健康的な心象を抱かせて、かわいい。体全体を見回して思う自然な感想は圧倒的に絶対的に、私のタイプ、だ。私のウエスト周りに腕を固めて離さないみーなちゃんは「ふぐふぐー、ふぐふぐー」とティーシャツに吐息をかけ、このシャツはしばらく洗わないことが決定した。みーなちゃんの小顔が埋まって私の下腹部の感覚は凄まじく研ぎ澄まされる。というか研ぎ澄ます。私より一回りも二回りも小さい体がくっついていたら、もうやばい。
「ただいま、かな」
化けの皮の表では平静を装い、剥いだ裏ではみーなちゃんのか細い体に全神経が集中している状況。華奢、無邪気、小悪魔。幼女の中でも特にみーなちゃんはあざとい。潔白なあざとさがある。ぐいんと全力のえくぼを作る様子が素直に愛らしい。さらにきゅんとすることに、みーなちゃんは他のメンバーといるより私といる方が表情が柔らかい、と思う。一つ一つの挙動も大きい気がする。気付いたら真っ先に走ってくるしその度に飛び付いてくる。そんなにされたら勘違いしちゃうのに。恐らくみーなちゃんは深く考えず、大人のお姉ちゃんとして接しているのだろうけど。でもその無自覚さが人間の本質なように思えて、そのルートへ進んでしまいたくなる。周りの白目なんて外にして。
「おねぇちゃん、ふかふかぁ」
みーなちゃんは接着していた頭の角度を変えて顎一つ中央に添える。このままふかふかされていたい気持ちと私もふかふかしたい気持ちがみーなちゃんの温かさで包み込まれ、あらゆる観点から密度の高い至福の一時を味わう。「今日も早く来たよ」一年生相手に六年生的な会話を交わすのは厳しいため何を話しかけるべきか迷って、淡白な事実で切り出す。「わぁいうれちー」私の屈折した心境とは違い、みーなちゃんは正直で率直な反応を返す。学年という運命により対等になれないのが微妙にやり切れない。
みーなちゃんは頭を戻すと、私の前腕をナチュラルに掴んできた。みーなちゃんの瑞々しい手のひらが触れる、肌と肌が重なり合う。それだけで心が惑わされる。「ねぇねぇ、こっちこっちぃ」そのまま腕を引っ張っていくのに釣られて壁際から児童の集まりへ移動する。衆目の注目を買いながら机と机の間をかいくぐり、完全記憶済みのみーなちゃんの席へ向かう。少年少女の「みーなちゃん、きゅーしょくちゅーだよぉ」という指摘も蚊帳の外にしてお求めの席に到着すると、みーなちゃんは私に幼い体を向けて「おねぇちゃん、すわってぇー」と言ってくねくねし出した。一瞬の衝撃の後、椅子に乗った小さな防災頭巾に天国を思い浮かべ浄化と不純の概念を瞬く間に行き来し地上に恵みの癒しの祝いの種まきする天使がそこにいた。手に巻きつく環状線が感情の栓を切って血潮が渦潮となり真昼の太陽に燃えるところ萌える心が頭上に打ち上げ花火するものだから聖なる宴が始まる空想妄想、否現実。厚意なのか好意なのかはたまた行為なのか真実は常に一つだけど何はともあれ有難くそのもっふもふみーなちゃん座席に生唾を一気飲みして、「座って、いいの?」と下心の上澄みを曝け出す。みーなちゃんは腕をハンドル感覚で回転させ「すわってよぅ」たる意思表示を無慈悲に繰り出す。その円運動に促されて勢いよく威勢よく骨盤的な部分が屈折した。
尻尾が生まれつき備わっていたら敏感に刺戟が走っていただろう大腿骨上方が尻隠して頭隠さずの境遇にあることも含めて防災訓練なんて真意から縁遠いと悟ってしまう頭巾に出交わし微かに幽閉されたみーなちゃんの体温と体感が未知なる世界と未来に栄えある一石を投じた。高揚感高揚感高揚感高揚感。みーなちゃんの肌に直接的な関係を持つことも然ることながらみーなちゃんの形跡が残りたてほかほかな箇所に尾骶骨の面から間接的そして関節的な擦れ合いが出来ること則ち幸せ。本来の用途として頭を嬉しい潜らせたい一心に胸が膨らむけど、変なおねぇちゃんの称号を授かりたくはないしみーなちゃんに奇異の目を向けられたら生きる意味が激減するので「座ったよ?」とありのままの自分を見せた。六年の席順と全く同一の班分けから眺めるクラスの全貌はさっきまでの教室より純粋で他意のない視線に溢れている。やっぱり一年生は最高だぁと肺の奥で絶叫した。
「ぬふぅっ」子供独特のくぐもった声を操るみーなちゃんはそう言うと私との握腕を持続させた状態で捻りを加え、フォースダンスでもしたいのかなと探っている私の膝上にすんっと落下した。膝にみーなちゃんが乗った。「&&#*?&↑_/;♪!☆+$}」意想外の到来に頭が来世に飛ぶ。飛びそうになりながら時空にしがみつく。やばいやばいやばいえええなんでなんでなんでかわいいかわいいかわいい。てか乗ってる!お尻が、私に!密着!スカート!ふともも!なななななななんて奇跡!みーなちゃん!みーなちゃんが近くにいてみーなちゃんがあってみーなちゃんとこうしてみーなちゃんがみーなちゃんが「えへへん」みーなちゃんが言う。あああああ「あ、あばはは」私が日本語不自由になる。頭の下にみーなちゃんの頭が見えて近くて胸からお腹の一帯にみーなちゃんの背中がカーブしてみーなちゃんの下半身がもうもうもうほんっともう。もーもーもーもー牛か私は。牛だ私は。みーなちゃんは天使だ。繋がれていた右腕は解かれるどころか左腕という仲間を増やしてみーなちゃんの両脇に挟まれて仲良し小好しする始末だし人生で最も熱狂していってる最中なんだけど私手汗すごいかもしれない今。コンセントプラグになった気分、と言うとみーなちゃんに私を差し込んでるって感じで相当やばいけどそんな格好でみーなちゃんと接触しているこの体勢と言い熱量と言い結局かなりやばい。瞬間瞬間のアジテーションを同じ言葉で周回させるにつれて何かに目覚めるようなホルモンがとばどば分泌されてゆくったらゆくゆく。
目の前の髪から流れる良い香りにくらくらゆらゆらする意識の中、掴んだ右腕が机の中心へ伸ばされ、「おねーちゃんっ、たべさせてぇ」聞き捨てならない声が届いた。そうかだから椅子に座らせたのかと理解したけどしたところで特に冷静沈着になることもなかった。「いい、いいいよわかったっ」今まで六年生のお姉ちゃん職に務めてきた中でも初めてのイベントに動悸を不整脈レベルに仕上げて答える。斜め上から鳥瞰する食器と食材へ消化混合物と化した私のものより遥かに真摯な感謝を込めて手に取ったフォークを捧げ隣の皿に盛られたミートスパを私の精神状態のように渦巻かせた後、ゆっくりと慎重に手前に運んでゆく。無理な体位からフォークの刃先、ミートソースの飛散、みーなちゃんの口の位置全てを計算し、確実にみーなちゃんの唇の間に運び入れた。ほっぺをもむもむして滑らかに飲み込むと、「おねぇーちゃんーっ」言いながらまたも内ももをぐねらせてくる。良く言えば活発、悪く言えば言うことなしで脈絡もない運動が私の足腰を甘酸っぱくくすぐってくる。みーなちゃんの純潔な心と体が今後も健やかに育ってくれることを親御さんに伝えたい。もしくは発育が途絶えて永久にこのままのみーなちゃんでもいい。どっちにしても、みーなちゃん、好き過ぎる。
好意の種類が違ったとしても方向は一致している私達に観客の子供たちは怪しい眼光を向ける訳でもなく独自の話題に花を咲かせたり、そもそも気にも留めず私やみーなちゃんへ会話のロケットを射ってきたりした。私達も相手に合わせて相槌や答弁を打ち返しつつ、お口にあーんを繰り返す。すると私達の所業に気付いた一人が「あーっ、食べさせてるー!あたしもやりたいー!」と大声で教室のロッカーや給食台に響かせた。当然先生の耳の膜も震わせたようで「……ハルネさん、お手伝いにきてもらって悪いけど、そういうのは控えてもらえる?」との忠告を受けた。宣戦布告と見なして先生と一騎打ちに勝利すればこのクラスの主導権は私に、なんて不相応な御伽噺は中断して諦めて引き下がる。物理的にはみーなちゃんを一旦立たせた上で椅子から退いた。「ごめんね、やっちゃいけないらしいから」「…………うん」先生の言うことに抵抗なく従うみーなちゃんだけれど私達の間には多少の湿り気が生まれる。水蒸気が冷えて涙になるかならないかの境目で愛しいその眼球が潤う。椅子に座って私が来る前と同じはずの姿勢になっても三分の一の残飯に手をつけない。そんなに私の食べさせ方が上手かったのかというのは却下するとして、もし現実に私の欠如に不満を思っているのだとしたらこの上なく嬉しい。同時に少しでも悲しませているとしたら何とかしないとならない。
ひとまず席の隣でしゃがみ、頭頂部の高度を合わせてみーなちゃんの傍に寄り添う。よく考えてみれば重なり合って着座することは禁止されていなかったかもしれないけど、今更自ら再現するのも恥ずかしくこの位置関係に収める。数秒様子見しても一つは丸く一つは尖るように加工された鉄器を用いそうにない。だから私は接合が消えみーなちゃんの指紋だけが残留する空虚な腕を使うことにする。先生の死角へ巧みに隠れるようにみーなちゃんの側面を屈んだ私の全面で覆い、当の禁則事項の食べさせごっこへ再挑戦する。少なからずこの周り四、五人には見られていると知りながら「内緒に、食べさせてもいいかな?」提案してみると、「……うみゅっ」快く頷いて笑みを弾けさせた。みーなちゃんの復活に安心し、私の頬も十八歳未満も閲覧可能な意味で緩む。有言実行すべく穏やかな所作で西洋の利器を握り後方百八十度そしてみーなちゃん分の前方六十度に配慮しながら、再度のあーんを実行した。「ぁーん」控えてはないけど控え目ではあるから何も罪悪感を覚える必要はないと理屈を組み立て、みーなちゃんとのお楽しみに耽ってゆく。みーなちゃんも食欲を取り戻したようで何より。
見られたか見られていないかはともかくその後は先生に注意されることなく給食タイムを経過させていき、私より約十五分遅れて六年の班のパーティが登場する時には「ごちそうさまでした!」の大合唱が室内を席巻していた。まぁ私が異様に早いというだけなんだけれど。食後の呪文を詠唱し終えた後は、食べ切っていない児童を除く全員が班ごとにお盆やお皿をさっきの私達のように積み重ね、一人一種類の器具を給食台の指定場所まで運搬して行った。私はその工程をみーなちゃんの側近で手伝い、給食台自体の運送までみーなちゃんから離別しなかった。給食関連の仕事が完了したら次は掃除のコーナーとなる。掃除も班別に割り振りが異なり、もちろん私はみーなちゃんのグループに腰巾着またはイソギンチャクのようにぐにょぐにょ付いてく。同級生は察してくれているようでそれぞれ他の班を担って廊下やら特別教室やらへ去っていった。良い仲間を持つと幸せなものだと感動した。
私達は引き続きこの教室に居て掃除すればいいらしく、隅っこに佇む用具ロッカーから
これは誘導の二文字の内、誘いと導きどちらだろうと掃除用具の放置に悪気も意識せず期待して歩き始めると早速教室を出た。続いて廊下を横切り、水道で担当者がバケツに水を汲む姿を他所に階段とは逆方向へ行く。「ちょっちょちょ、これ何処にいくつもりっ?」「いいからぁ、ゆこぅ」幼い少女の方針は一貫しているようで優柔不断な私の問いは一刀両断された。焦っているようにも解釈できる。だけど幼女にお供して悪いことは起こるまいと思い改めて二人ドリブルの新技を練習していく内に、幅広のワンピースを着こなした全身真っ赤な女の子のシルエットが見えてきた。「あ、お手洗い?」そう言うとみーなちゃんはこくっと首を傾けた。何だそんなことか期待するほどのことでも無かったないやみーなちゃんと一緒にいるだけで満足ではあるんだけどと思想を巡らせて、みーなちゃんにとっては待望であろう女子トイレへ入室する。もしかして給食の時点から我慢していたのだろうかと思うと何となく申し訳なさが宿る。
昼下がりで誰もいない個室の前まで来て「さ、お入り」と腕解きを示唆する。けれどみーなちゃんは腕を離す気配を現さない。二回目のどうしたの?を発声させようかという時、みーなちゃんは「いっしょに……はいってぇ?」と言語の限界を覆してきた。失神しかけた。神はそこにいた。それは本気なのか。一個隣りの個室とかだったら女同士よくある事だし現実的だけど、正しく全く完全にぴったり同じ狭い近い小さい幼い個室に同席しようだなんてそれは神様ですか?いいえみーなちゃんです。私は今日で死ぬのか。だったらみーなちゃんに膝枕してもらいながら一生を終えたい。ならば迷うことはない。「了解でありますっ」扉を引いて中に入る。みーなちゃんより早く入ってしまったことに若干の自虐心を込めて主役のみーなちゃんを迎え入れる。脇役でも合格できたことに自尊心を高め情緒不安定に拍車を掛けている間にみーなちゃんが便座にちょこんと乗っかる。
その時になって「あれ、私は何をしているんだろう」と過去を悔やむはずもなく「あれ、私は何をするんだろう」と将来に希望を投げかける。すると便座を座板にスカートを鎖にしてブランコするみーなちゃんが、「ぬがせてぇ」と世界の意味を説いてきた。なるほどなるほどふむふむ死ぬ。今日やばい。てか何で?「いいけど……何で?」疑問符の応酬の接頭に本心が垣間見えつつ訊く。回答は、「あたちひとりじゃ、できないからぁ……」らしいです。その発言で見識が全身に行き渡ったけど、何が抜きん出ているかと言えばそれはもうみーなちゃんのかわいさ。私の欲なんてどうでもよくなるくらい尊い。みーなちゃんの垢を煎じて飲みたい。生まれてきてくれたことにありがとう。それでも強欲な私はみーなちゃんのスカート、そしてその奥に目が向き目を剥き目が離せない。唾液の産出が格段に増え、みーなちゃんに伝導しそうなほど脳内の体温計が上昇気流を描く。しかし使命を受けた以上、熱膨張な熱暴走も恐れず慌てず真紅に輝くスカートの裾へ指先を派遣する。トイレットペーパーの右隣で中腰から臨むみーなちゃんの肢体は発展途上の塊のようで成長期真っ盛りな私達にはない価値が眠っている。その秘境、秘宝を明かすためまずは布一枚、振り払った。
ショーツが露出した。これ以上私の心情描写を克明にするとシャバの空気を味わえそうにないので事実説明に踏み留める。ちなみにショーツは薄黄色だった。そんでもってその布さえ脱がせた。太ももの中盤辺りまで引っ張った。もはや情景描写すら危ういため、以下略。本当に、もう。
生理現象が一通り終了して「ふぅー」と溜息を吐くみーなちゃんに布地を纏わせ、終始繋ぎっぱなしだった右腕を持ち上げて便座から立ち上がらせる。いつも綺麗にご利用頂き有難うございますの注意書きもない個室から私の雑に切り取ったペーパーを横目に、二人で退出した。そして何事も無かったかのように見えるように、廊下を滑りゆく。まさかあんな近距離で誰かとお花を摘む、ましてやそれを想いを寄せる人とすることになるとは。私が子供の頃はおトイレくらい自分で出来た気がするけど、みーなちゃんはそれが出来ないらしい。それで私を頼ったということだ。そんなところも含めてかわいいと思う。こんな時期だけど、みーなちゃんの新たな一面を知れて良かった。それに何よりみーなちゃんと甘い一時を過ごせた。他の人間には見せないだろう特別な笑顔を以て、二人で。「おねぇちゃん、ありがとうっ」ほら、今も隣で笑っている。
私の心には、今日の思い出が死ぬまで残り続けると思う。
ただ、一つ聞けないことがある。
みーなちゃんが、私のことを上級生として見ているのか。
それとも、一人の女の子として見ているのか。
分からない。
掴めない。
みーなちゃん自身も分かっていないかもしれない。
子供とは、そういうものなのかもしれない。
私だって、本当はどっちでもいい。
ただ。
ただ君と一緒にいられたら。
それでいいのに。
もうすぐ春休み。
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