第3話

 第二回戦開始から先のことは多くは語れない。

 パタンと窓を閉めるとベランダの兄妹喧嘩の詳細は聞こえなくなったからだ。

「あっそうだ。一応訊いておかないと」

 ポケットに入っていた携帯電話を取り出して操作し、思い出したことをそのままメール本文に打ち込む。

 妹に、話が聞かれていたかを、一応確認してくれ、と。

 部屋に携帯電話を置いてきているであろう瑪瑙からすぐに返信が返ってくるとは思わない(というか、あの服装で携帯電話はどこにも仕舞っておけないはず)が、それでも気になることは解消しておきたい。そう思っての内容だ。

「スゥゥゥーハアァァァーッ」

 大きく一呼吸してから、窓の前から移動する。

 移動先のベッドに無造作に寝転がると、照明に照らされた白い天井が、なんだかすごく眩しく感じた。

 べつに、あそこまで仲良く喧嘩ができる兄妹が羨ましいという眩しさと照明の眩しさとを重ね合わせたわけではない。

 考えているのは別のこと。

 瑪瑙の眩しさ、男の眩しさだ。

「ったく、いくら一緒に行ってくれる相手がほしかったからってさ……」

 考えているのは瑪瑙妹の乱入がある前の話のこと。

 もっと言えば、明日のこと。

 一旦独り言を呟くと、不思議と次々と口を吐いて出てくる。

「いくらわたしが百合だからって……、幼馴染で女友達のわたしを誘うかよ、普通……」

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