第18話 宇宙人

 宇宙人、地球外生命のうち知性を持つものの総称。


「説明しましょう」


 ブレインは嬉々として鈴木に話を始めた。


「まず、あなた方の知っている歴史は大分違うことを教えておきたい」

「歴史が違う?」

「はい。あなた方の歴史では、宇宙から侵略され、地球人は宇宙人に対抗したことになっている。しかも撃退に成功したことになっていますよね」

「はい」


 鈴木は先程まで耄と話していた内容を思い出して、ブレインに頷いた。


「しかし、最初の宇宙人は、地球人と友好を持とうとしました。ですが、宇宙から来たと言うだけで地球の人たちは、宇宙人を捕まえ人体実験を行ったのです」


 鈴木は息を飲む。確かにテレビや小説でそんな話が出てくるが、実際にそんなことが行われているなど思わなかったのだ。


「どこでどんな風に捕まったかは、あまりにも残酷なため省かせて頂きます」


 ブレインの声に悲しみが含まれているように感じた、鈴木は突っ込んで聞こうとは思わなかった。


「地球の対応に怒りを感じたある宇宙組織は、地球人を脅かすつもりで宇宙怪人を解き放ちました。決して侵略や征服が目的ではなく、脅しのつもりでした。ですが、地球人は強力な武器を持って怪人達を悉く倒しました」


 淡々と語るブレインの話しは、地球側ではなく宇宙側の話なのだろう。違う側面から語られる話に鈴木は集中していた。


「ですが、怪人を倒すために地球は甚大な被害も出しました。核兵器が使われ、多くの人が死に、多くの自然が死にました。それは宇宙人も望まぬ光景だった。そのため、再度宇宙人は地球人と交渉をしたのです」


 鈴木も核が使われたことは知っている。日本では核が無かったため、その時に戦った地球防衛軍の判断で核発電に使われていた物が使われたと歴史の本に書いてあった。


「交渉は成功しました。両者の話し合いの末、宇宙と地球が決めた条約は決闘制度でした。宇宙人は一日に一度、地球に侵略をする。それに対して地球人は核兵器を使わずに対抗する。条約の条件として宇宙からの技術を地球に提供して対抗手段を与える。その手段を使い、宇宙怪人と地球代表が決闘をすることで、互いにそれ以上の不可侵を約束しました。もちろん決闘で手に入れた領土は、手に入れた者のモノとなります。地球は決闘に必要なモノとしてロボットです。そして私が宇宙から日本に技術を教えにきた者です」


 決闘制度など鈴木は知らない。そんなことは歴史のどこにも書いていなかった。地球側が勝利を治め、宇宙側が悪あがきをしているとしか、学校では教わらなかったのだ。


「ここまでが説明になりますが、何か質問はありますか?」


 ブレインの言葉に鈴木は考えを巡らせる。疑問などいくらでも浮かんでくる。どうして宇宙人は全力で地球を奪いにこないのか、ブレイン以外にも宇宙人は地球にいるのか、交渉とはいったいどのようにして行われたのか……


「質問はまだまだありそうですね。全てを答えるのはもっと仲良くなってからにしましょう。まずは一つだけ聞きたいことを聞いてください」


 ブレインの言葉に鈴木は一つだけを考えて声を出した。


「では一つだけ、あなたは寂しくないですか?」


 鈴木の質問に対して、ブレインは言葉を失っていた。どんなことを聞かれるのだろうとブレインなりに考えていた。ロボットとは何なのかとか、お前は味方か敵かとか、今まで来た者はあくまで地球人であり、自分は宇宙人としての扱いしか受けて来なかった。


「ふふふ、本当に面白い人を連れてきましたね。耄さん」


 耄は名前を呼ばれて、笑顔になっていた。


「鈴木さん、私は寂しさを感じていませんよ。我々は人間よりも脳が発達しています。あなた方が言うところの超能力というモノを使うことができるんです。その力で仲間と話すこともできますし、一瞬で移動することもできるんです」


 日本に伝わる妖怪やエスパーと言ったものは、もしかしたら宇宙人なのかもしれないなと鈴木は納得した。鈴木は常に平常心を保ち続けた。彼は成績も身長も平均値を叩きだす。仕事も真面目だが、できる方ではない。それでも彼の精神は常に平常であり続ける。常にニュートラルを維持しようとしているのだ。


「そうだったんですね。ならよかった」


 だからこそ鈴木は、ブレインが宇宙人であろうと一人は寂しいのではないかという。至極当たり前だと思う答えを導き出し、質問するに至った。鈴木の言葉を聞いた、耄もブレインも唖然として、次の瞬間には笑っていた。


「ふふふふ、本当に面白い」

「ふぉふぉふぉ。ワシの目に狂いはなかったな」


 二人が何故笑っているか鈴木にはわからなかった。しかし、ブレインが光り出したと思ったら、そこには髪の長い綺麗な女の子が立っていた。


「改めてよろしくお願いします。鈴木さん。あなたが私の友になってください」


 少女は鈴木の前に歩いてきて、ブレインの声で握手を求めてくる。


「えっ、えっ、えっ?女の子?」

「変身ぐらいできるじゃろ」


 耄の言葉で鈴木は納得して、少女を手を取る。


「こちらこそよろしくお願いします」


 少女になったブレインと握手を交わし、鈴木は頭を掻いた。

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