13 夢告げの巫女
「ユメミ! この部屋から
わたしが、夢
「おお、これはこれは、
うららちゃんが、外見はどうみても10歳児のハクトちゃんに、うやうやしい態度でひざまずき、そう言った。
白兎神って……。ハクトちゃんが神様だということを知ってるの⁉
ていうか、神様のハクトちゃんは一般人には見えないはずなのに、うららちゃんには見えるんだ……。やっぱり、うららちゃんはただ者じゃないみたい。
「あ……あんたは、夢告げの巫女! どうして、こんなところにいるのよ」
「夢でオオクニヌシさまから『
「オオクニヌシさまが? ……ちぇっ、オオクニヌシさまったら、あたしのことを頼りないと思ってるのかしら? 妄想ヘタレ女子のサポート役なんて、あたし1人で十分なのに」
オオクニヌシさまからお告げをもらったって……。本当に、神様からのお告げを夢の中で聞くことができるんだぁ……。
「もしかして、わたしのそばにいるために、うちの学校の生徒になりすましているんですか? 愛花ちゃんと結衣ちゃん、あなたのことを以前からの友達みたいに接していたけれど……」
「ワシにはヒトの記憶をちょいちょいといじる能力があるのじゃ。学校の先生たちや他の生徒たちの記憶もすでにいじっておるゆえ、月曜日にワシが教室にいても、ユメミさま以外の人間はだれも
うららちゃんは口元を手で
さ、さすがは千年生きている巫女さん……。そんな
でも、千年の歳月を生きるためには、ヒトの記憶を改ざんする能力は必要不可欠なのかも。
うららちゃんは少女の外見のまま年をとらず、ずーっと生き続けているんだよね? それが本当なら、みんなに「なんでこの子は年をとらないんだ? 怪しい! さては妖怪か⁉」って思われちゃうよ。
そんなときに、みんなの記憶をいじってしまえば、抱いていた疑問も忘れちゃうはず。
別の町や村に移り住もうとしたときも、そこに住んでいるヒトたちの記憶をいじったら、うららちゃんは「ずっとその土地で暮らしていた、みんなの仲間」だと
「記憶をいじる力って、すごい……」
「おっほっほっほ。ただ、ユメミさまのように、神の
へー、そうなんだぁ~。
ん? もしかして、うららちゃんがわたしのことを「ユメミさま」と呼んでいるのは、わたしが神様の御使いだから?(ぜんぜんそんな自覚なかったけど……)
「わたしたち、これからはクラスメイトなんですよね? クラスメイトを『さま』づけで呼ぶのはおかしいから、『ユメミさま』はやめませんか?」
「なるほど、たしかに。では、おそれおおいが、『ユメミどの』と呼んでもよいか?」
「『ユメミどの』もちょっと……。結衣ちゃんたちにも『どの』をつけていたけど、やっぱり違和感が……」
「ふ~む。やはり、もうちょっと
この人は、ふつうに人の名前を呼ぶつもりはないのだろうか……。
これ以上、他の名前の呼びかたを
「……これからよろしくお願いします。うららちゃん」
「こちらこそ、よろしく頼むのじゃ。あと、ゆめみんも、
「うん……わかった」
「おい、こら! あんたたち、のんきに
わたしとうららちゃんがなごやかな
「そ、そうだった! ええとね、わたしのクラスの委員長の結衣ちゃんが――」
わたしはあわてて、結衣ちゃんが見た白ヘビの夢のこと、結衣ちゃんが夢占いのお兄さんにその夢を買ってもらったこと、それから
「『夢買い』ですって……? 昔の人間たちは、夢の売り買いをよくやっていたけれど、現代人の多くはそんな風習をすっかり忘れているはずよ。しかも、このお守りからは悪夢のにおいが……焦げた煮魚のにおいがプンプン漂ってくるわ。その夢占いの男、怪しいわね」
「『夢買い』って、昔はふつうのヒトもやってたの?」
「そうよ。あんた、歴史小説も読んでいるそうだから、
「うん。夫の頼朝が死んだ後、幕府の
「北条政子はね、自分の妹が不思議な夢を見て
「え、ええぇぇぇ……。妹さん、かわいそう……」
でも、『夢買い』って、本当にヒトの運命を買い取っちゃうことができるんだ……。
もしも、結衣ちゃんが見た夢が、凶夢じゃなくて吉夢だったら?
本当は弟の大地くんにとって
手術が成功するはずだった大地くんの運命が変わっちゃう恐れがあるってこと⁉
「ゆめみん。ワシが、
神使というのは、神様の使者となる神聖な動物のことだ。
入院中、「神様のお使いのウサギたちと小学生たちが仲良くなって、邪悪な神様を協力してやっつける」というファンタジー小説を読んだことがあるから、知ってる。
こういうとき、たくさん読書していてよかったなぁと思うね。でも、ひとつだけわからないことがあったから、うららちゃんに聞いてみた。
「タケミナカタさまって、どんな神様なの?」
「オオクニヌシさまの息子じゃよ」
「……あのオオクニヌシさまの息子かぁ。ちゃんとした神様なのかなぁ~?」
わたしが嫌な予感がしてそうつぶやくと、ハクトちゃんが「おい、こら! まるでオオクニヌシさまがちゃんとしていない神様みたいに言うな‼」とブチ切れて、わたしの足を踏んだ。
い、痛い! シューズで足を踏まないでよぉ~! ていうか、部屋の中で土足はやめてってば‼
「ゆめみん。ワシはいまからタケミナカタさまにお告げをいただくために、眠らねばならぬ。そこで、ゆめみんに頼みがあるのじゃ」
「結衣ちゃんのためだし、わたしにできることならなんでもやるよ。でも、わたしに頼みってなに?」
「
「へ? ひ、膝枕? なんで?」
トートツに膝枕をしてくれと言われて、わたしは頭の上にたくさんの?マークを浮かばせた。
恋人同士でもないのに……ていうか、女の子同士で、なんで膝枕をしなきゃいけないの⁉
「神々は用事があるときは勝手にワシの
「な……なんで膝枕なの?」
「それはワシにもわからん。この力を
すごく嫌な神眼だ……。というか、膝を見ただけで、本当にそんなことわかるの?
「ゆめみんの膝を見たとき、ワシはおどろいたぞ。ゆめみんの膝は、千年に一度あらわれるかどうかわからぬほど
うららちゃんは
そんな力説されても、ぜんぜんうれしくないんですけど……。
「相変わらず、膝枕の話をはじめると、うざったいやつね……」
ハクトちゃんも、ドン引きしている。
でも、わたしが膝枕をしてあげたら、うららちゃんがタケミナカタさまからお告げを授かることができるんだし……。
結衣ちゃんのために、それぐらいやってみよう。本当は、ステキな彼氏ができたときに、大好きな彼に膝枕をしてあげたかったけど。
「い、いいよ……。うららちゃん、わたしの膝で眠って?」
「ふ……ふふふ。極上の膝枕……。ふへへ~」
「よだれをたらしてわたしの膝をさわっていないで、早く寝てちょーだい‼ ていうか、巫女のくせしてセクハラしないでよぉぉぉぉぉ‼」
わたしは
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