2017年7月9日「だけど私もほんとはさみしがりやで」

『大丈夫だって!』

 いいかげんじゃない言葉探して、無難に落ち着いたアイツへの言葉。

『私もわかるわかる!』

 共感を探して不安がる、あの娘のために。……だけどやっぱり消化不良。


 だいじょうぶの約束が欲しいのは私。安い共感に安心したいのも。だけどどうしようもない。


 独りで歩く街並みもそうわるくない。道を聞かれたり――まだ制服姿の娘に嫉妬したり。私だって……私だって? 私にはなにもないの? おかしい。夢は? 未来は? いいえ、遠い誰かがもっているものじゃない、やさしい思い出……。


 ふと止まる歩みに、不審そうな男性の表情カオ。だけどすべては過ぎ去って。

 だいじょうぶじゃない。こんなのちっともわかりあえない。一人にしないで……。

 だれか! ……泣きたい。


 心の叫びはきっと誰にも届かなくて、一人で死んでいくんだ私は。そんな呪いに目をおおいたいのに、あとから呪詛じゅそのように降り注いでくる雨。

 さらっていってよ、その雲の向こうに。いつだって言ってくれたじゃない。


 ――君は独りじゃない。


 雲間に光がさして、ああ、虹が見える。ポケットのサイレン、とりだして頬にあてると、


「また、あえる?」

 こたえは一つ。

「愛してる」

 愛しかいらない。

「そばにいて」

 あなたしかいらない――愛しているから。

「なんでもないの。少し、さびしかっただけ……かな」

 愛してる……あなた。



               END

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