スキルの確認と見えざるもの
「えっ」
特に何もしていないにもかかわらずスキルが発言したときに聞こえる声が聞こえ、驚いてしまった。
スキル発現するときに聞こえる声(通称アナウンス)自体はキルヴィも聞いたことがあった。しかしそれは、例えば狩りを行っていてナイフの使い方がうまくなったからナイフ術のスキルが発現した、などの特定の行為を行った場合起こるものだと思っていた。
今はどうだろうか。夜暗い森を歩いているだけである。そんな条件で発現するスキルはあるのだろうか?それにアナウンスは何と言った?ユニークスキルといったか?MAPというスキルも聞いたことがない。わからないことだらけである。
「とりあえず、使ってみればわかるか」
MAPを使おうとすると、どうやらレベルごとにできる項目が増えていくタイプのもので、レベル1に関しては発動の有無が選べる以外は常時発動型のスキルであるらしい。発動すると念じてみる。
――瞬間、見えていた世界が変わった――
と同時に恐ろしい数の情報量がキルヴィの脳裏に流れ込んできた。
「なん、なんだこれ、頭の中に地形が浮かび上がってくる!木、木、木ばかりで視界が悪いはずなのにその先に川があるとか小高い丘があるとかまでわかってしまうなんて!それとなんだ、この点は…大きいのがあったりいくつも集まっていたり…も、もしかしてこれ全部生き物なのか?痛い!頭の中に一度にこんな、こんなこと覚えられるはずがないっ!」
すぐさま解除を念じる。
すると情報が流れ込んでくるのはピタッと止まった。が、すでに流れ込んできていた分に関しては消えもせず、脳裏に焼き付いているかの状態となった。頭を振って切り替えようにもついてくる。それどころか――
「見た方向に合わせてイメージが回転している…?もしかして」
そう思い先ほど小高い丘が浮かんでいる方角に定めて歩いてみる。しばらくたつと、そこには確かに小高い丘があった。
「もしかしてこれってこうやって使うのかな。…だとしたら常時発動型である必要性がないんじゃ」
一瞬発動しただけで結構遠くの地形まで情報として流れ込んできたのだ。であるならば一回一回使うスキルのほうが効率がいいように感じる。
そこでふと思い、能力発動して出てきた点のある位置に向かってみる。まずは一番近くにあった集まっていた点のところによってみた。
「ふむふむ、やっぱり生き物のいるところが点であらわされるんだ」
そこには小型の鳥の群れがあり、キルヴィの思わぬ来訪により目を覚まし一斉に飛び立った。
「おっと、ごめんね。…あれ、でも点の位置は変わらずここにある。ということはもしかして」
さっきみたいにものすごい情報量が叩き込まれるのではと少し覚悟をしたうえでもう一度MAPを発動させる。しかし、先ほどと違って点の位置が移動していくのが流れてくるだけであった。
「なるほどね、一度目は地形のデータの読み取りからあれだけの情報量がきてたけど、二回目はそこは省略できるんだ。で、生物の位置は発動しているときにいる地点を示しているんだね。…なかなか便利な能力だ。少なくともくいっぱぐれるリスクは減ったよ」
ちなみに暗視機能は暗い中でも物が見えやすくなるという、先ほどキルヴィが望んでいた機能であったためとてもうれしかった。
「この情報によると…うん、集落からはだいぶ離れることができたみたいだし、この辺には点はないみたいだね。もうだいぶ遅い時間みたいだしここらで一休みしようかなぁ」
なんとなく先ほどの小高い丘まで戻ってから休息をとることにした。ここならば開けていてたとえ何かに襲撃されそうになったとしてもどのようにでも逃げることができそうに感じたからだ。
「…目を閉じてても点の情報は来るんだ。若干点の位置の更新が遅いかもしれないけど、気にならない範囲だね」
眠ろうと目を閉じるがそれでも点は動き続けていた。先ほどの鳥を示す点があちらこちらに動き回っているのを感じ、少し申し訳ない気持ちになっていると、違和感。
「周りの点より薄い色の点が、こっちにくる…?」
目を閉じているのに目を凝らすというのはおかしい気がするが、よく見ると見えるような点がこの丘を目指しているかのように動いていた。点の大きさ的には先ほどの鳥を示していたものよりも大きい。
いったい何がこちらに来ているのだろう。キルヴィは目を開きその点が来る方角を見つめてみる。が、一向に何が来ているのかがわからなかった。そうしているうちに点との距離が近くなっていき、ついには目の前にいる状態にもかかわらずその姿を捉えることができなかったためキルヴィは緊張状態から汗がたらりと垂れるのを感じた。
キルヴィは焦っていた。
もしこれが害意あるものならば一方的に不利な相手だからだ。必死に目を凝らし正面にいるであろう何かを見ようとする。
しかしそのかいもむなしく、薄い点は正体がわからない。そうこうしているうちにキルヴィの周りを不規則に回りだした。動いては止まり、止まっては動きをしている。キルヴィは点のある方向を見続けるしかできなかった。
点の動きが止まり、ついにキルヴィに近づこうと動いたように感じた。キルヴィは覚悟を決めた。
「ねぇ君、もしかしてボクのこと――「うわあああああああああああ!?」きゃぁぁああああああ!?」
ただではやられまいと点の位置に向かって体当たりを仕掛けると、驚くことに話しかけられた。が勢いは止まらない。そのまま突進し何かにぶつかって倒れこむ。そして聞こえるアナウンス。
〈MAPレベル1の暗視効果から透明化無効の機能が派生されました。〉
MAP機能で世渡りを @1992asdes
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