はんぶんこ

あんまん嫌い

はんぶんこ

 いつも、僕は二歳年下の妹とはんぶんこしておやつを食べる。おやつが一つしかないときも、はんぶんこ。



 おやつだけじゃない。ご飯の時もはんぶんこ。お母さんはいつも『仲良く食べるのよ?』と言い聞かせる。言わば口癖のようだ。



 この日も何時ものように、妹も僕も大好きなクッキーをはんぶんこしようとした時だった。



 きっちり真ん中で割れたクッキー。その片割れを掴んだとき、ふと思ってしまったんだ。




『どうしてはんぶんこしなきゃいけないのだろう?』




 僕の方がお兄ちゃんだ。上なんだ、どうして妹と分けなきゃいけない?



 そう思った時にはもう腕が伸び、妹からクッキーを取って口に運んでいた。そんな僕を妹はただ呆然と見ていた。



 当然のようにお母さんは怒った。『どうしてお兄ちゃんなのにそんなことをするの? 謝りなさい!』



 僕はその場で謝らされたが、心の奥では謝まってなんていなかった。お兄ちゃんなのにどうして多く食べたらだめなのか、それが全く理解できず胸がモヤモヤした。



 それから妹と口を聞かず、何日もたった。お母さんは相変わらずはんぶんこさせたが、僕はまだそれが分からなく許せなかった。



 そんなある日、3時のおやつ。僕も妹も大好きなクッキーを食べている時、妹が中々クッキーにかじりつかない。



 『どうかしたのかな』と思い妹を見ていると、手に持ったクッキーを僕に差し出した。



 一瞬、何がしたいのが分からなかったが、妹の顔を見てみると涙でぐっしょりに濡れていた。



『お兄ちゃんの大好きなクッキーあげる。お兄ちゃんと話せなくなるのが一番辛いから』



 ようやく絞り出した言葉に胸のモヤモヤが晴れていく気がした。どうして、僕はこんな簡単な事に気づかなかったのだろう?



 それから僕はクッキーを妹とはんぶんこして二人で食べた。どうしてお母さんは怒っていたのか、今度は心の底から謝った。



 今日も僕は妹とはんぶんこ。ただ笑って、こうしているだけで楽しいから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はんぶんこ あんまん嫌い @simiya0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ