第2話
連絡先を交換した山ちゃんは菜美にいっぱいメールを送ったらしい。毎日学校に行くと山ちゃんが嬉しそうに菜美とのやりとりを報告をしてきた。
多分山ちゃんは菜美の事を完全に好きになっている。菜美の方も山ちゃんとやりとりする中で山ちゃんの人柄の良さを感じているに違いない。
しばらくそんな日が続いた。
「つっこ。菜美ちゃんにさぁ、昼休み一緒に弁当食べようって誘ってみようと思ってるんだけど大丈夫かなぁ?」と少しだけ緊張した表情で聞いてきた。
「まぁ大丈夫じゃない。誘うだけ誘ってみたら?」と何の根拠もないが背中を押した。
俺の何の根拠もない一言で勇気がでたのか、安心した表情で山ちゃんはすぐにメールを送った。
【おはよう。急なんだけどもし迷惑じゃなかったら昼休みに弁当一緒に食べてもらえない?直接色々話しをして菜美ちゃんの事よく知りたいから。】
暫くして返信がきたらしい。
【おはよう。迷惑とかじゃないんだけど、昼休みに2人きりで弁当食べてると周りから誤解されると思うんだよね……
つっこと一緒に3人ならそんな怪しまれないで済むし、私も周りの友達に幼馴染だって言えば説明しやすいから3人で食べるのはダメかな?】
山ちゃんが菜美から帰ってきたメールを俺に見せてきた。「つっこ!そういう訳だから頼む!一緒に昼休み弁当食べるのに付き合ってくれ。あんまり人目につかない方がいいから屋上で食べようと思うんだけど。」両手を合わせて真剣に頼む姿を見たら嫌だとは言えなかった。
「わかったよ。屋上ね。」仕方なさそうに俺は答えた。
早速その日の昼休みから3人で屋上で弁当を食べる事になった。
「菜美ちゃん。つっこって小さい頃どんな奴だったん?」ニヤニヤしながら菜美に聞いた。
「うーんとね……小さい頃は明るくて何でも出来て、色々な事を教えてくれるヒーローみたいな感じだったよ。今じゃ想像できないでしょ?」少しバカにした感じで答えた。
「マジで?全然想像出来ないわぁ。あははっ。」2人して笑っている。
「おい。バカにしすぎだろ!菜美は小さい頃を過大評価し過ぎだし、山ちゃんは俺を過小評価し過ぎ!」少し怒った素ぶりを見せたが内心全く怒ってない。むしろ菜美が言ってくれた言葉が少し嬉しかった。
俺達はそんなくだらない話しを、その日から毎日昼休みにした。
ーーーー5月ーーーー
入学から1ヶ月を過ぎ気温もだいぶ高くなってきた。あまりの暑さに校内では例年より早く衣替えが始まった。
男女それぞれワイシャツとブラウスになった。
「やっぱり衣替えはいいなぁ。ナイス夏日!」周りの女子を見ながら山ちゃんに話しかけた。
「まぁたまりませんわな。」山ちゃんも周りを見渡した。
うちらもその辺の高校生と同じで女子の体には大変興味があった。あの子は胸が大きいとか、凄い下着をつけてたとかバカな話で盛り上がった。
山ちゃんのこういうバカな所も俺は大好きだった。これだけのイケメンなら飾ってそんなな興味ありませんオーラを出す奴がいるが山ちゃんは違った。
俺達は生粋の変態だった。
3人でいつものように弁当を食べていると、「あのさぁ、こんなんあるらしいけど3人で行かない?」山ちゃんがゴールデンウィーク特別祭りのチラシを見せてきた。
「へぇー、屋台でたり、花火も上がるんだぁ。楽しそう。」興味ありそうに菜美も答えた。
「行きたいなら2人で行けば?俺、人混み嫌いなんだよね。暑苦しくて。」うちわで仰ぎながら俺が答えた。
「何言ってんの?どうせ暇でしょ!やる事ないなら行くよ!」行く前提で決めつけてくる菜美。
「そうだよ、つっこ。たまには人混みに揉まれろ!もしかしたらつっこ好みの巨乳の浴衣女子がいっぱいいるかもだろ。」本気で言ってるのか、冗談で言っているのか少しわかりにくいテンションで山ちゃんが説得してきた。
「おおっ!それなら行く価値あるかな。」目をつぶって巨乳の浴衣女子を想像してみた。いい眺めだ。
「変態。」菜美が呆れた顔でこちらを見てる。
「男はみんな変態じゃ!」俺は強気に反論した。
そんなこんなで3人で祭りに行く事にした。
祭りの当日。家が隣だという事もあり待ち合わせの場所まで菜美と行く事にした。
祭りの雰囲気を満喫する為、ドレスコードは浴衣になった。一応持ってはいたが、ほとんど着た事ない紺色の浴衣に着替えた。似合っているのか自分では分からない。
準備を終えたので菜美の家に迎えに行った。
ーーピンポーンーー
チャイムを鳴らした。なんだかんだ俺が菜美の家のチャイムを鳴らすのは、小学生の時以来かもしれない。
ーーガチャーー
玄関を開け浴衣姿の菜美が出てきた。
紺色の浴衣に身を包み、いつもと違う髪型をしていた。菜美の見慣れない姿に心臓が激しく音を立てた。
「おっ!つっこ凄い似合ってるじゃん!……私は変じゃないかな?」俺を褒めた後、少し恥ずかしそうに菜美が聞いてきた。
「そりゃどうも。菜美も全然変じゃないよ。いつもと違っていい感じ。」どうしても素直に可愛いと言えなかった。
「ならよかった。てかいつもと違ってって、どういう意味かな?」頬を膨らませ睨んできたが、全然怖くなかった。むしろもっと、からかいたくなった。
「なんか色もお揃いになっちゃったね。カップルに間違われないかな。」照れ笑いしながら菜美が言った。「それはないって!うちらじゃカップルにしては釣り合ってなさすぎだから。山ちゃんとなら間違われそうだけどな!」直接的じゃなければ褒めることができたが、少し照れたので山ちゃんの名前を出して紛らわせた。
「……そんな事ないのに。」とポツリ菜美が言ったが、あまりに小さなその声は俺の耳には届かなかった。
「よし。山ちゃんを迎えに行こう。」
「うん。いこっか。」と菜美が言って2人は歩き始めた。
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