1793

文咲さくら

序章

プロローグ

0.十一月二日

 急いで作った固焼きの目玉焼き、彩りのためにえられたレタスとソーセージ、それにコンソメスープ。

 一般的な朝食を、豆乳でのどに流し込む。

 特においしいと思うわけでもなく、当たり前に当たり前のものを食べて、自然な行程で支度を済ませて家を出た。


 道路に出ると、息が白くなる。

 寒いのが苦手なわけじゃないから別に良いんだけど、昨日よりも少し肌寒いようだ。


 やけに人通りのない道。あれ、いつもはもう少し人がいたと思うんだけどな、なんてぼんやり考えながら、すみを歩く。

 人もいない道で、黒猫が「にゃあ」と鳴きながらこちらをじいっとながめめてくる。

「……食べられるものは持ってないよ」

 そう声をかけると、猫は逃げるように走って帰っていく。


 黒猫がいなくなったら、今度はからす。頭の上でくるくる飛び回っている。

 なにか不穏ふおんなことが起こるみたいじゃないか。冗談じょうだん半分に心の中でそんなことをつぶやいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る