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文咲さくら

序章

プロローグ

0.十一月二日

 急いで作った固焼きの目玉焼き、彩りのためにえられたレタスとソーセージ、それにコンソメスープ。

 一般的な朝食を、豆乳でのどに流し込む。

 特においしいと思うわけでもなく、当たり前に当たり前のものを食べて、自然な行程で支度を済ませて家を出た。


 道路に出ると、息が白くなる。

 寒いのが苦手なわけじゃないから別に良いんだけど、昨日よりも少し肌寒いようだ。


 やけに人通りのない道。あれ、いつもはもう少し人がいたと思うんだけどな、なんてぼんやり考えながら、すみを歩く。

 人もいない道で、黒猫が「にゃあ」と鳴きながらこちらをじいっとながめめてくる。

「……食べられるものは持ってないよ」

 そう声をかけると、猫は逃げるように走って帰っていく。


 黒猫がいなくなったら、今度はからす。頭の上でくるくる飛び回っている。

 なにか不穏ふおんなことが起こるみたいじゃないか。冗談じょうだん半分に心の中でそんなことをつぶやいた。

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