おやつ作るからゲームやって!
後日、家でくつろいでいるとミサエから電話がかかってきた。
「もしもしー」
「あ、今ヒマ? 聞きたいことがあるんだけど」
「ああ、いいぞ」
「あのさ……」
その話の内容とは……。
「『漆黒の沼』のボスの倒し方、分かる?」
オレから借りた、ゲームの攻略法だった。
「何だよ、もうすぐでクリアじゃん。あいつは『赤い溶岩』で手に入れる剣が効くぞ」
「分かったー」
ツー、ツー、ツー……。
……やれやれ。
と、思いきや。
「うお! またミサエ!」
何だよ、人が録画した番組を見ようとしているときに……。
「はい」
「ねー、『赤い溶岩』の剣って何ー?」
「はあっ? お前さっき分かったって言ってたじゃねーか!」
「何ムキになってんだよ~! 分かんないもんは、分かんないの! ていうかさぁ、」
「ん、何?」
「家に来て、代わりにやってよ!」
「えぇー」
と、いうことで外出決定。
せっかく自宅に誰もいないというのに、そんなときにこそ録画の消化だっていうのに……。
なんてグチグチ呟いているが、何だかんだで呼ばれたことが嬉しいオレ。
完全にミサエにホの字じゃねーかよ……。
「ほら、ここだよ。ここで剣を取って、『漆黒の沼』に戻れ」
「えー、ここ絶対に落ちるじゃん。嫌~」
「まだオレがやんのか」
「ていうかボス倒してよ。そのために呼んだのに」
「お前にクリアしたいって意志、ねーの?」
「クリアしたいけど~、もう何回も
「オレはこれを、何度もクリアした」
「すごいね、じゃあやれよ」
「そこはサラッと流さず、もっと褒めろよ! オレは代わりにやってやる側の人間なんだぞ!」
「はいはい、後はよろしくー。あたし、他にやることあるし」
そう言って、ミサエは去っていった。
ちなみにミサエがこのゲームを借りた理由は、前にあげたTシャツに描かれたキャラクターが主人公のゲームだからだ。だがしかし、アクションゲームが苦手なミサエは、こうして自分の手でクリアすることを潔く諦め、オレにまかせることにしたのであった……。
やれやれ。さて、進めるか。もう何回もクリアした、このゲームを。
「はー、簡単簡単」
あっという間にゲームのラスボスの体力ゲージは、残りわずかとなった。ここで一気に倒したいところだが、キャラクター目当てでゲームを借りたミサエのことだ。絶対にエンディングが見たいに決まっている。
ポーズ、ポーズっ、と……。
「おーい」
コンコンコン、と部屋のドアをノックする音。
「ナイスタイミングだな。もうエンディング間近だぜ」
「本当っ? すげーじゃん!」
すごく嬉しそうな顔をして、ミサエが入室してきた。
「おっ?」
「……オマエはあたしに良いことすれば、良いことが返ってくるんだよ!」
ミサエは、パンケーキと共に姿を現したのであった。
「ほら、食えよ!」
「お、おう!」
パンケーキ……。
ミサエが作った、パンケーキ!
パンッ!
「いただきますっ!」
オレはパンケーキの前で手を合わせ、そしてケーキシロップをかけて食べ始めた。
「……うまい……!」
「あたしが作ったもんが、まずいワケねーだろ?」
それには素直に頷ける。実はミサエは、めちゃくちゃ料理が上手い! ありがたいことに、オレは何回もミサエの手料理を食べている。そして今まで食べた手料理は、全部全部、最高だ!
ミサエのやつ、ガサツで痴女で、ときにブタで、ときにゴリラだけど……。
こいつの、こういう女の子らしいところ、本当にキュンとするんだよなぁ……。
「しかし、よくこんなに分厚く焼けるよなー。粉のパッケージでしか見たことないぜ?」
「あっそう」
「どうしてそんな風になるの?」
「牛乳を、ヨーグルトに変えたからかな?」
「へー、すげーな。何でヨーグルトって膨らむんだろ…」
「知らない。とりあえずヨーグルトが良いって聞いたから、入れた」
「そうか……」
こんなざっくりした奴が、こんなうまいパンケーキを作れるとは、何だか信じられない。
「あたし『料理』はちゃんとすっから!」
「んぐっ、」
読まれた……。
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