勝ってみてぇ~!

 あのゴリラに勝つには、どうすれば良いのか。


 オレは部屋で、プロレスのことを考えていた。もういい加減に勝たないと、男としてどうかと思う。ミサエだって、自分より弱い奴となんて付き合いたくないはずだ。だからオレはあいつに男として見てもらえないんだ。


 そうだ、プロレスでオレがミサエに勝ったとしたら……。


「くっ……、あたしが負けるなんて……」


 そんなこと言って、泣きながら悔しがるあいつが見られるのか……。

 いや待てよ。


「強いのね、見直した……。これからは、あたしのことを守って……イタタッ!」


 痛がりながら、しおらしく負けを認める、いつになく女の子らしいミサエも良い!

 それでオレがミサエに「大丈夫か?」って心配して、あいつの手当てをしていて……。


「お前、女の子なんだな。こんな柔らかい体で……」

「ちょっ、やめてよ」

「……ミサエ……」

「えっ……、きゃっ」

「大丈夫、優しくするから」

「っ……!」


 オレに押し倒されたけど、痛みで抵抗できないミサエはオレにされるがままで……。

 あ、それならミサエにチャイナドレスを着て欲しい。スリットって良いよな。体の形がはっきり分かるのも最高。胸も尻も……。ミサエなら何色だ? 赤も青も黒もイケるぞ。赤は勝ち気な女って感じがたまらないし、青なんてもう、お決まりのやつだよな? 黒は何か色気が増す気がするし……。


「ひどいよ兄ちゃん! よりによって、おれが髪洗っているときに風呂の電気消すなんて……って、え?」


 そのとき、オレはハッとした。


「……兄ちゃん、どうしたの?」

「何が?」

「気持ち悪かったよ、笑っているの。何を考えていたの?」


 答えられる訳がない。

 ミサエで気持ち悪い妄想をしていたなんて、絶対に言えない!


「もしかして、ミサエちゃんのこと?」

「違うよ」

「じゃ、何?」

「……えーと……」


 その後、ごまかすのに三十分は時間を使ったと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る