「幼馴染なんだから!」
かくかくしかじかと僕がストーカーに後を付けられている状況を
本当に理解したかは不明だが、真剣に聞いていたのは電話越しでも伝わった。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫」
「そうじゃなくて、女子なんでしょ、ストーカー」
あ、そう言えばと思ったが原因が分からないからそこは気にしないでいよう。
「学校の生徒なら先生にでも言ったら……」
「別に、後を付けられてるだけで被害は何にもないからそこまでじゃないよ」
これは嘘。先ほどの怪しい手紙がまさにそうだ。
ストーカーに自宅の場所を特定されてしまい、しかも部屋番まで把握されている。これが俗に言う有名人たちがストーカー被害に遭った気分か……。うん、確かに少しばかり怖いな。
「被害は何もないって、私に電話して来てんじゃん!」
「もしも、僕に何かあった時の保険だよ、保険」
「保険って……なら、せめて下校時だけでも一緒に……」
「だから、僕は何も被害に遭ってないって。それに……立場を考えないと」
圭菜とは学校外なら幼馴染。しかし、学校内だと僕との関係は顔も名前も知らない同級生。だから関わってはいけないのだ。
「それでもありがとう。僕を心配してくれて」
「当たり前でしょ! 私はテルの……幼馴染なんだから!」
いつかは学校での見えない壁がなくなるのを僕は待ち遠しく思いながら、圭菜との通話を切る。
早速、勉強会のスケジュールを組み始めようとパソコンを立ち上げると、メールが一通来ていたので確認する。誰からなのかは差出人を見ずにとも分かる。
明日の昼休み、職員室へ来い。以上、
ツッコミ満載な文面だが、毎度のことだから気にしない。
一応、果たし状のようなメールに返信する。
「分かりました。明日の昼休みに職員室へ向かいます。っと、送信!」
メールをたった一通読んだだけなのにこんなに疲れるとは……。
ベッドで横になる前にリビングの電気を消し、部屋のカーテンを閉め電気を消す。
ベッドに横になると、自然に冴えていた目が少しずつ閉じていく。完全に閉じると一人の少女が僕の脳内に浮かび上がった。
絶対に僕と正反対な彼女がなぜ、浮かび上がるのかは不明だが少しでもお近付きになれたらなぁ、と思ってしまうのはやはり男だから仕方がない。しかし、重大なことを僕は見逃していた。いや、何も感じなかったのだ。
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