おバカとデートと勉強会

「じゃあ、今度の休みは勉強会だな。圭菜けいなの家で」

「やだ! デートがいい!」

「分かった、買いデートな。お勉強が終わったら付き合ってもいい」

「テルのイジワル。夕方までスケジュール組むくせに……」


 流石は幼馴染のことだけはある。僕の考えていたプランを見事読み当てた。これは褒美を与えないとな……。

 部屋に戻り、机の卓上カレンダーを確認する。予定が一ヶ月先まで大体埋まってることに、自分のことながら驚き丁度予定の空いている日を見つけると、


「仕方ないから、七月の海の日なら出掛けてもいい」

「ふぇっ? テル、もう一度言ってくれる?」

「だからな、海の日なら空いてるって言ってんだ。あ、ムリか。それならーー」

「だいじょぶ! むしろ、いつでもオッケー!」


 いつでもは流石に盛り過ぎだとは思うが、喜んで貰えるだけまだマシだ。一応あらかじめ諸注意を申しておく。


「その代わり、勉強会で僕が出すテストに合格出来たらな」

「…………」


 フリーズした。何かを悟ったようだが、これくらいの頑張りがなければ褒美というのは嬉しいもんではなかろう。努力をし、結果を残さなければ褒美はない。これが常識である。

 電話越しのため、フリーズした幼馴染を溶かす方法は言葉でしかない。が、風呂に入ってるならその湯で是非、おバカな頭も一緒に溶かして欲しいもんだ。

 しかし、そんな夢見たいな願いは到底叶うことはなく、時間にして三分でフリーズ状態の幼馴染はやっと溶けて現実に戻って来た。


「どうした? テストって言っても二、三問の確認程度だから安心しろ」

「はぁ……それなら早く言ってよ。私の学力が低いのは知ってんだからさ。ほんっとテルは鈍感だよね」


 ものすごい煽りが電話越しに聞こえてきた。これはテストの難易度を上げても問題ない、という宣言なのだろうか……。うん、そうじゃないとしてもそうしよう。

 泣いて僕に縋ってくる圭菜の姿が直ぐに想像出来る。電話越しを良いことにニヤニヤが抑えられない。今、鏡で自分の顔を見たらものすごく気持ち悪いだろうな……。


「それにしても、テルが私をデートに誘ってくれる日が来るなんて……」

「幼馴染を誘うのがそんなに変か?」

「誘うのは普通。テルだから珍しいの、もしかして私⁉︎ 一生の何かを使ってしまった……かも」


 お願いなのか、運なのか、はたまた別の物なのか、それは神のみぞ知る。そう、おバカな幼馴染に言ってやりたい。それにしても何か、はないだろう。何かは。

 副題の話で盛り上がり過ぎたが、そろそろ本題へと話を移そう。


「圭菜、これは真剣に聞いてくれ」

「う、うん。どうしたの……」

「実は……一ヶ月前からストーカーに後を付けられてる」

「なんだなんだ、ストーカーね、ストー、カー……はぁい⁉︎」


 良いリアクションをありがとう、と褒めたいくらい反応が良かった。

 これが作り話ならいいのになぁ、と思うのは流石に心が汚れ過ぎているだろうか?

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