第3話 シスコンには能力なんてなかった

『『『よっしゃぁぁぁぁぁ!!』』』


ティナが提案した瞬間、俺、サラ、イザナが叫んだ。


叫ばなかった残り三人もすごく興奮してる様子だった。


『皆さん乗り気のようですね。それではこれをお渡ししますね!』


そう言いながらティナはまるでスマホのような形をしたものを全員に配った。


『これは パイレーツタブレットミニ 略してPTSというものです。』


『あっ、スマホじゃないですよ!』


あからさまな否定が入ったがスルーしておこう。


『で、これが海賊としての身分証明書みたい

なものでこれを使って一人に一つの能力の解放をします。』


『・・・えっ? ギルドっぽいのに行ったりしないの?』


イザナがとうとう言ってしまった。


まぁ俺たち全員が多少がっかりしていたのは事実だったけどな。


普通ラノベとかだとこういう登録作業はギルドというか集会所みたいなところに行ってしてもらうのがセオリーだったので不満が出てしまったのだろう。


『え、えーと、確かに普通はギルドに行って正式な手続きを踏んでからPTSをもらうんですけど、それやっちゃうとパクリだって上から怒られるんでそこの部分はカットです。要するに大人の事情ですね。』


ティナはにこやかに告げた。


もう、ツッコミは心の中だけにしておこう。


なんだよ大人の事情って?!

そういうこと登場人物に言っちゃダメだろ!


『さぁ、話を進めますけどそのPTSで皆さんの奥底に眠ってる能力の解放もできるんですよ。』


『ということで早速アプリをインストールして、能力解放しちゃってください!』


さっき否定したのにさらっとアプリとか言っちゃっていいのかなぁと思いながらも俺たちはティナのいう通りに能力解放をしてみた。


『皆さん解放出来ました? 上の方に名前が出てると思うんで教えてください。』


『えーと、私は瞬間移動って書いてありました。』


『あっそれはすごいですよ! テレポート能力です。半径五十メートルの範囲で瞬間移動ができるんですよ!』


サラの次はフーカが教えていた。


『私のは飛行って書いてあったけどー もしかしてこれって!』


『はい! それはスカイウォークっていってすいすい飛べますよ!』


なんか説明雑だなぁ。 もう少しちゃんと説明が欲しいとは思う。


『ほう、サラがテレポートでフーカが飛行か、私のは回復と書いてあるが…』


『ヒーリングですか! 回復能力は結構珍しいんですよ! みなさんすごいですね!』


『こんなのまだまだ序の口よ! 私は能力を使って真の私TUEEEEを実現するのよ! ってあれ?』


『か、家事上昇ってって書いてあるけど、戦いに役立つ能力よね!?』


イザナはとても必死にティナに聞いていた。


『それはハウスヘルパーという能力で、家事能力が上がるので戦闘向けじゃないですね。』


ティナがイザナにとどめを刺してしまった。


『お、オワッタ、私の、私TUEEEEが…』


イザナは声が掛けられない程に真っ白に燃え尽きていた。


『と、とりあえず僕のもみ、見てみますね。』


イザナのこともありグランもすごく不安そうだった。


『あっグランさんは戦闘向けですよ! しかも魔法である雷です!』


それを聞いた時のグランの安堵した表情は凄まじいものだった。


『最後はユーリさんですね。』


『よし、イザナの分まで俺がTUEEEEしてやる、ってあれ?』


『ティナ!俺のやつ何も書かれてないんだけど……』


『あのー、大変申し上げにくいんですけど、ユーリさん、能力なしです。』


ティナはまるでクビを告げる上司のように言った。


『えっ? 俺の聞き間違いだよな?能力なしなんて』


『いいえ、完璧に能力なしです。』


言い切られてしまった。


要するに、異世界召喚の醍醐味である特殊能力がないと、つまり君一般人だよ。と言われてしまったのだ。


『お、オワッタ、俺の俺TUEEEEが…』


港の隅でドス黒いオーラを俺とイザナが出しまくる情景は、哀れ以外のなにものでもなかった。


ティナもだいぶ気を使いながらその二人を含めた全員に言った。


『この世界はなにも能力だけじゃないですからね! ほら、武器とかあるじゃないですか!』

その言葉で二人は立ち上がった。


『そうだな! 能力が全てじゃないもんな!』


『そうよね! 武器と身体能力があれば十分TUEEEEできるものね!』


半分ヤケクソになりながら言い聞かせている感じだった。


『あっ、今調べたら駆け出しの海賊に武器を無料でプレゼントするキャンペーンをやってる武器屋があるみたいですよ!』


『それじゃ、行ってみるか。』


俺たちはやっと港を離れ、街中へ向かい出した。

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