/夜を裂く歌

「ーーーーーーー♪」


夜の街に、聴こえない歌が響く。

人の可聴域を超えた音。

もし聴こえたならば、さも楽しそうに聴こえるだろう。


眠らない街。


誰もが憧れる光の街。


だが、強い光はより深い闇を生む。

私は頬を上げて、仄暗い路地を歩く。


さぁ、次はどれにしよう。


長く、永く、髄を飲み干すまで。


布石は打たれた。


「あぁ、愉快だ」


芝居がかった口調を自覚しながら、私は大きく手を広げる。


「楽しみだねぇ楽しみだとも」


口端を今まで以上に吊り上げて笑う。


「ーーーーーーー♪」


夜の街に、聴こえない歌が響く。


あかい道が、私の後ろについてくる。


さぁ、高らかに謳おう。

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