第九話 小さな仲間

 翌日、オレたちは今度こそ城を出て、城下町を馬を引きながら抜けようとしていた。


「……あれ……」

「なんだ? あぁ、石族か。最近増えてるよな」

「石族?」

「石の中に住む精霊の総称で、人のサポートや護衛を務めます。初めは一部の冒険者などがオークから譲り受けていましたが、今では多く市場に出回っています」

「せっかくだし、ちょっと覗いてみるか。石族もピンキリだからな。案外掘り出し物がいるかもしれねぇよ」


 オレたちが露店に近づくと、体格のいい店主がにこやかに出迎えた。


「へい、らっしゃい! 君たち冒険者か? いいのが入ってるよ。一石どうだい?」


 並んでいる石は様々で、精霊も話しかけてくるものモノや外に姿を現しているモノもある。


「店主のオススメはどれなんだ?」

「残念ながらまだ眠ってるやつもいて全部の性能は分かってないだが、この辺は結構いいサポートをしてくれるよ」


 店主が指さした一角は確かに他に比べて美しく、宝石としても純度が高いことが伺えた。


「……これ」


 真剣に見ていたらしいカノが一つを指さした。それは他の物よりも輝きの劣る小ぶりな石だった。


「これがいいのかい? まだ目覚めてないし、石もあんまりよくないなぁ。別のヤツの方がいいと思うけど……」


 そう言われてもカノは頑なに譲ろうとせず、じっとロクロウを見つめた。


「いや、いい。これを貰おう」

「お代はおいくらですか?」

「そうだねぇ……ちょっとまけて銀貨一枚でいいよ」


 銀貨を渡すキヨミチの傍からロクロウが手を伸ばし、買った石族を太陽に透かす。見た目は少しキレイな石だ。


「石族の相場はそんなもんなのか? ずいぶん良心的なんだな。生きてるんだろ?」

「えぇ。現在の石族は採掘するオークの労働費もそれほどかかりませんし、一市民も購入できる価格帯なんです」

「毎度あり。兄ちゃん達の買い物がいいものだったことを願ってるぜ」


 店主に別れを告げ、露店を離れる。ロクロウはすでに興味をなくしたように石をカノに渡した。


「お前が選んだから持ってろよ」


 カノは手のひらに乗せられた石を見つめ、僅かに首をかしげたあと、何かを思いついたようにパッと顔を上げた。


「……チヒロ」


 そして、石を俺に差し出した。


「……オレが持っておくの?」

「……石族……魔法使える……チヒロ……一番危ない」


 オレが一番弱いからお守り代わりに持っておけと言うことだろう。素直に石を預かり、懐にしまう。


「さてと、そろそろいい時間だし、昼飯食ってから街を出るか」


 オレたちは手頃な価格だと言う大衆食堂で昼食をとる。カノの食べる量は相変わらず凄まじかった。


 そして、オレたちは旅の決意から四日目にしてようやく街を出た。

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