第三話 伝説の勇者

「ちょ、長老を連れてくる! お前らはここにいろ!!」


 なんとか復活したケンが慌てて出ていく。あんなに慌てているのは初めて見た。いつも飄々とした頼りがいのある男だったはずだ。

 レプリカを壊したということは祭りは中止か。オレ一人のせいで伝統が途切れた。とんでもないな。

 だが、剣も岩も壊れてはいない。また刺せばなんとかなるんじゃ……いや、あの慌てっぷりはそれぐらいじゃすまないんだろうな。マジでオレ何やらかしちゃったんだよ……


「チヒロ!」


 オレを現実に引き戻したのは、蔵に響き渡る威厳のある声だった。


「……ちょう……ろう……」

「それはそなたがやったのか」


 杖を突き、背が曲がりながらも威厳のある白ひげをたっぷりと蓄えた老人、長老が真っ直ぐに俺の目を見て問いかける。オレはただ頷くことしか出来ない。


「そうか……では、そなたが……そなたが伝説の勇者であるのだな」


 ハァ? とうとうボケたのかこの老人は。

 オレは相当訝しげな顔をしていたことだろう。


「…………これ……レプリカじゃないの……?」

「何を言っておる。それは正真正銘、ホンモノの勇者の聖剣じゃ。今まで誰が触ってもビクともせんかったな」


 長老の表情が嘘ではないとありありと伝えてきた。ということはこれは本当にホンモノの聖剣であり、オレはそれを抜いてしまった。


 あれ? とんでもないこと……だよな?


「えぇぇぇええええええ!?」


 オレの叫び声は蔵を抜けて、村全体に響き渡ったらしい。

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