第二話 聖剣

 広場はお祭りムードへと姿を変えようとしている最中だった。


「おっ、チヒロ! ユーリ! 丁度いい所に来たな。若いモンちょっとこっち来い!!」


 村で大工をする男、ケンに呼ばれ、その後を付いていく。

 連れていかれたのは冠婚葬祭の道具が仕舞われた地下蔵だった。灯りの灯された中を足元に気をつけながら階段を下り、どんどん奥へと進む。蔵の一番奥、周りには何も置かれていないその空間のど真ん中に置かれたのは岩に刺った剣だった。


 それは紛れもなく聖剣祭のメインである聖剣である。どうせレプリカだろう。けれど、天井のガラス窓から注ぐ陽に照らされてキラキラと輝くそれはまるでホンモノのようなオーラを放っていた。


「これを広場まで運ぶのがお前らの仕事だ」

「ハァ!? これを!? 俺はまだしもコイツこんなにヒョロいんだぞ!? 無理だっての!!」

「なんだ。おめさんらは老体にこんな重てぇもんを運ばせようってのかい?」

「何が老体だ! 俺らよりよっぽど力あんだろうが!!」


 などと言い合いを始めた二人にため息が零れる。どうせユーリが負ける。なら始めからしなければいいものを。


 結果の分かりきった言い合いを放って、今から運ばなければいかないのであろう剣にゆっくりと近づく。

 はずだったが、俺の足元には運悪く剥がれかかったタイルがあり、オレはそれにつまづいて、転んだ。そして、どうせ抜けないのだからと杖代わりに掴んだ剣は簡単に俺とともに倒れ……あれ?


「…………抜け……た……?」


 その声に言い合いをしていた二人の視線が集まり、二人が凍りつくのが背中越しでもわかった。まずい。オレはとんでもないことをしてしまったようだ。

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