第二十七話 駅の視線
女子高校生のEさんが、学校からの帰り道、都内の地下鉄某駅のホームで電車を待っていた時のことだ。
少し早い昼下がりの時間ということもあって、周りにいる人の数もまばらである。黄色い線から少し下がったところに立って、スマートフォンをいじっていると、「間もなく電車が到着します」と、聞き慣れたアナウンスが入った。
ああ来るんだな、と思いながら、何気なく顔を上げた。
自然と、ホームの端が目に映った。
最近は転落事故防止のために、この部分にホームドアが設置された駅も増えてきている。しかし、この時Eさんがいたホームには、まだそのようなものはなかった。
だから――ホーム際にあった「それ」が、すぐ目に留まった。
白くて小さな球状のもので、中央に黒い丸模様がある――。
「……え?」
思わず目を疑った。
人の目玉――としか思えなかった。
ちょうどEさんを真正面から見上げるような形で、目玉はホーム際のギリギリのところに、ちょこんと落ちている。
……おもちゃ? それとも、本物?
Eさんがポカンと立ち尽くしていると、すぐに電車が近づいてくる音が聞こえた。
同時に――ホームの下から、真っ白な手がぬっと飛び出してきた。
手は、落ちていた目玉をつかみ取り、サッとまたホームの下に引っ込んだ。
唖然とする間もなく、目の前を電車が横切り、ごく普通に停まった。
「何今の……」
思わず声が出た。
すぐ目の前でドアが開いたが、何だか気持ちが悪くて、Eさんは、少し離れた別のドアから乗った。
乗り込む時、ホームと車両の隙間に目をやると、さっきの目玉が真下からEさんをじっと見上げていた。
わざわざ追いかけてきたのだろうか――と思うと、気が気ではなかった。
後で友達にそのことを話すと「パンツ見てたんじゃない?」と言われた。
おかげで怖さは薄れた。
……どのみち気持ち悪いのは、変わりなかったが。
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