poet:5 ローズ=マリー女史の夭折
ーー今日もお綺麗ですね。
そんな言葉で貴方は私を潤すのだけれど、きっと貴方は何も気付いていないから、そんな甘い残酷な褒め言葉を私に与えるのでしょう?
私にはこの美しさがもうじきに枯れ去ることは判りきっているし、美しさが枯れ果て、醜い姿になった私を貴方が見たら、それでもそんな私を愛してくれるのかしら。美しさが無くなった私には、貴方を引き止める術がひとつもないのよ。それに、貴方の前で、私は常に美しくありたいの。
ーーもしも私が怪我をしたり、動けなくなったとしたら、私の元から去っていいのよ。
戯れに、そう声をかけてみると、貴方は憮然とし、こう返す。
ーーそんなこと言わないで下さい。僕は貴女を愛しているのですから、貴女のために何だってするんですよ。
嗚呼、そうなのね。
じゃあ、いま、私がまだ美しさを保ち続けているこの瞬間を、永遠のものにするために、貴方は私のことを殺してくれるのかしら。
そう喉元まで出掛かった言葉は、いつものように私の鋭い棘に遮られ、声を出す代わりに、枯れ果ててしまうまでに、まだほんの幾ばくかの猶予がある美しいこの顔で、柔らかい笑みを作ってみせた私を、貴方はいつものように、そっと優しく抱きしめるのだった。
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