選ばれたのは、守銭奴でした

ここみさん

第1話 守銭奴とヒーロー

いつもみている風景に異物が混入すると、それは一気に、別の何かに変わって見える

学校から家に帰ると、家の前に一台の黒い車が止まっていた

傾いている太陽に照らされて、黒さをより一層美しく光らせているその車は、そういうのに疎い僕でも高級車ということが分かる

はて、こんなところにお金持ちそうな人が何の用だろうか。高級車は近くを歩くだけでも気を遣うから、どんな用であれ早急にお引き取りを願いたいところだ

カバンの中からカギを取り出しながら、どういう人が何の目的で来たのか考えてみる。まぁ普通に考えて両親の仕事関係ってところか、どんな事象でも親の仕事、という理由で大体は納得できるのって不思議だよねぇ。だけど今両親とも海外だから、今は家にいないし当分は帰ってこないって言っていたからな。僕って今、ラノベや漫画によくある、両親が仕事の都合で家にいない状態なんだよね。やったね、女の子連れ込み放題だ、女の子に友達どころか知り合いもいないけど

「ただいまー」

玄関には妹の靴と、ちょっとした外出用のサンダル、そして見慣れない黒の革靴が二足。多分男物だよな、二足とも

遊路のやつ、知らない男を家に連れ込みやがって、なんか意味が違って聞こえるが、家の妹の防犯意識はどうなっているんだ。普通家には上げないだろ

少し文句を言ってやろうと思って、リビングの扉を開けると

「あ、おかえりなさいお兄ちゃん。お兄ちゃんにお客さんが来ていますよ」

コーヒーカップ片手にソファに座っている我が妹の遊路と、テーブルを挟んで正面に座る二人のスーツの男が目に入った

「僕に?父さんや母さんにじゃなくて」

警戒心が籠っている目で二人を見た。一人は三十代前半の厳ついおっさんで、もう一人は五十代くらいの胡散臭いおじさん、と言ったところか。なんかおじさんの方はどっかで見たことある気がするんだよな、どこだっけ

「財部円さんですね、お邪魔しております」

「コーヒーをご馳走になっております」

二人はそんな適当な挨拶とともに、ぺこりと一礼をした

「ちょっと待っててくださいね、今お兄ちゃんの分のコーヒーを淹れますから」

ぱたぱたとスリッパの音を立てて、逃げるように台所に向かう遊路の背中を眺めながら、二人と向き合うようにソファに腰を下ろした。ふむ、まだ暖かい

「女子中学生しかいない家に、男二人で侵入するとは、どうかと思いますね」

「侵入とは人聞きの悪い、ちゃんと遊路さんから許可はいただきましたよ」

「あいつがそんな不用心な許可を出すとは思えないな。あの急いでこの場から去ろうとする感じ、多分自分でも流石にまずいことやったんじゃないか、と思っている証拠だよ」

となると、遊路自身が許可を出さざるを得ない、それも僕に弁解しずらい理由があったってことだ

「例えば、断りにくい状況を作って、遊路が自発的に家の中に入れてもらうとか」

「証拠がない推論ほど、時間の無駄になるものはありませんよ」

おじさんの方は、カップに口をつけ、優雅に笑った

「別に問い詰めているわけじゃないよ、コーヒーができるまで暇だから、ちょっとした推理ゲームをしているだけ。でもそう返されると、僕の推論が当たったっていると邪推したくなりますね」

「当たっているからどうこう、というわけでもありませんからね、どうぞご自由にお疑いください」

「じゃあそうさせてもらうよ、ロリコンの二人組さん」

と、そんな楽しい雑談をしていると、遊路がコーヒーとミルクと砂糖を持ってきた

「ありがとう。色々言いたいことはあるけど、今は部屋の方に戻っていてくれないかな」

「うぅ…ごめんなさい」

「別に怒っちゃいないさ、ただもう子供じゃないってことを理解してね」

我が妹はすごいのだ、それはもう色々と。てか中学生でDカップってすごくない、それで顔も可愛いってすごくない、そんな妹が僕のことを「お兄ちゃん」なんて呼ぶのってすごくない、勝ち組じゃない、僕

「それでは失礼します。十条さん、二宮さん、ごゆっくりしていってくださいね」

丁寧なあいさつを残して、遊路はリビングから出ていった

あーあ、僕が指示を出しといてなんだけど、華のない空間になっちゃったな。男二人のうち、片方が女だったらよかったのに

僕はコーヒーに砂糖とミルクを、ドン引きするくらいまで入れて、それを口に含み「ふぅ」と声を漏らした

「それで、あんたらはどこのどなたですか。流石に得体のしれない男二人を、遊路と同じ屋根の下に入れておくのは抵抗があるんだけど。てか、あんたらが僕のことを知っていて、僕があんたらを知らないってのも気に入らない、名詞でもなんでもいいから、身分証的なの出せや」

「おい、仮にも年上にだぞ、その口の利き方はなんだ」

「気を悪くされたのでしたら、お引き取りいただいて結構ですよ」

若いほうが噛みついてきたので、反射的に強気の対応をしてしまったな。どうしよ、この二人が両親の関係者とかで、迷惑がかかる展開になってしまったら。でももし両親関係なら、僕にお客さんなんて表現をしないよな

「落ち着きなさい二宮。申し訳ありません財部さん、確かに自己紹介がまだでしたね」

そう言って名刺を手渡してきた

「十条源二さんですか、ですか。ほぉ、この党って、政治家さんってことですかね」

「えぇ、まぁそのような仕事をさせてもらってますよ、表向きは」

表向きは?

少し気になるが、これが本物かどうかを調べるのが先だな

懐からスマートフォンを取り出して、この名前を検索してみた。いろいろなサイトがでることでること、なんか関連サイトが多すぎて見る気が失せるな

真ん中ら辺にあった、動画サイトでの候補の中から、それっぽいものを一つ見た。十条さんが、国会で何かをやっている映像だ、答弁って言うんだっけ、これって

「マジもんですか。そりゃ遊路も家にあげるわけだ」

「これで、満足していただけましたか」

「十条さんのほうはね、そっちの若造は知らんよ」

「若造って…お前なぁ」

「政治家とか議員さんとかで、あんたみたいなのって比較的若いほうなんだろ、勝手なイメージだけど。なら若造君で良いじゃん、このあだ名が嫌ならとっとと名刺でもなんでも寄越せよ」

おうおう、怒っているねぇ、正面からだと僕を不機嫌そうに睨みつけているのがよくわかる。ちょっと挑発しすぎたかな、まぁこのまま怒って帰ってもらえたら楽なんだけど、僕当てに日本政府からのお客さんとか、恐怖でしかないよ。要件聞く前にとっとと帰ってもらいたいよ

「二宮、はやくしなさい」

十条さんに急かされ、渋々と言ったように僕に名刺を渡した。ふーん、二宮吾郎っていうんだ

受け取った名刺を無造作にポケットに突っ込み、僕はコーヒーに再び口をつけた

「それで、この国のお偉いさん方が、こんな一介の高校生に何の用なんですか。うちは見ての通り、両親があまり家に帰らないので、あの二人に用があるのなら直接電話を掛けた方が早いですよ」

「いえ、遊路さんにはお話しましたが、我々はあなたに、財部円さんに用があるのです」

十条さんはまっすぐ僕の瞳を見つめた後、二宮さんと共に勢いよく頭を下げた

「どうか、我々人類を救うためのヒーローになってください」

「…」

「…」

「……」

「……」

しばしの沈黙

「あの、今ヒーローになってくださいって言ったんですか」

流石に動揺が隠せず、少し震えた声で訊き返した

「ええ、そう言いました」

「ドッキリの類ですか。それともバラエティ番組で、一般人にこういうことをやったらどんな反応をするのか、みたいな企画ですか。正直あれって性質が悪いと思うんですよね。僕そもそも、リアクションが面白いからって色々ちょっかいかけたり、ヘンテコだからって、運動神経の悪い人にスポーツやらせて、笑いものにしようって趣向嫌いなんですよね。別にそういう企画を否定しているわけではないけど…」

「喋っているところ申し訳ありませんが、そういう類の物でもありません」

だろうね、もしそうなら最初の段階でグダりすぎて、放送事故確定のお蔵入り動画ができちゃうよ。それにいくらテレビ番組でも、政治家を動かすのは稀だろ

「でもそれだと、ヒーローになってほしいの意味が分からないんだけど。僕ってもう高校生だよ、そういうのが嬉しい年でもないよ。まだ闇の力の継承者とか、異能大戦の参加資格を得たとか、ダークファンタジーの方が胸躍るよ。まぁそういうのって高確率で主人公以外死にますよね、僕って主人公タイプじゃないから、どっちかって言うと序盤に出てくる噛ませ犬ポジションだから、できれば遠慮したいんですけど」

「そういう感じでもありません」

「あ、じゃあ…」

「何を言うかはわかりませんが、多分それも違います」

否定が速いな。まぁ碌なこと言うつもりじゃなかったから良いけど

「まぁ、この際ヒーローでも英雄でもスーパーマンでもなんでもいいんですけど、その話って長くなりますか」

「えぇ、私どもも、この件をちゃんと説明する自信がないので、多少はお時間を要するかと思います」

僕は少し渋い顔をして、立ち上がった

「あの、すいません、そろそろ夕食の準備をしなくちゃいけないので、できるだけ手短にお願いできませんか」

「誰のせいでこんなに時間がかかっていると思っているんだよ」

「僕のせいですかね、まぁそれはどうでもいいじゃないですか、犯人探しなんて心が貧しいやつがやることだぜ」

「それでは警察はみんな心が貧しいことになりますね」

十条さんは苦笑いをしたが、二宮さんは何がそんなに愉快なんだ、と言わんばかりに不機嫌そうに足を組んだ

「とりあえず準備をしながら話を聞くので、簡潔にまとめた説明をお願いします。お国で働くあなたたちも、僕みたいな鬱陶しいガキに時間を費やすのも嫌でしょ」

そう言って立ち上がり、台所の方へ向かった。今日は野菜炒めって気分だしまずは米研ぎだな

「本当に準備を始めましたよ、どうしましょうか十条さん」

「仕方ありません、近くまで行って簡潔に説明しますか。腐ってもヒーローになる人なのですから、力づくで話を聞かせるなんてことはできませんよ」

二人に足音が近づいてきた

「先ほど申したヒーローになってほしいということなのですが…」

「飲み終わってたらカップを持ってきといてください、お米の準備をしたら洗うので」

「あ、はい」

自分より年上を顎で使うって気分が良いな

まぁそれ以上に、これから頼まれることが不安でしかないんだけど。こんな怒って帰ってもしょうがないような対応をしているのに、未だ僕に説明をしようとしているあたり、よほどのことなんだろうな

「先ほど、表向きは、と言いましたよね」

ああ、言ってたね

「我々の本来の仕事は、この星を襲っている『星食み』という化け物の対策をすることです」

なんか、ヒーロー云々もアレだったが、一気に突拍子もない話になったな

「いきなりこんなことを言われても戸惑うかもしれませんが、一応その星食みが映った映像を持ってきてありますが、ご覧になりますか」

僕は濡れた手でそれを制した

「マジもんの政治家たちが来ているってのが、何よりの証拠だよ。話を続けてください」

「分かりました。と言ってもあとは先ほど言ったとおり、あなたに星食みと戦うためのヒーローになってほしいのです」

イマイチそこがよくわからないんだよな

「そういうのって自衛隊とかの仕事じゃないの、いや、日本に限った話って訳でもなさそうだから、アメリカとかの軍人さんの仕事なんじゃないの」

何でこんなウザいだけのガキにそんな話が回ってくるんだよ

「星食みと戦いうための装備『防人』というものがありまして、それが、まぁなんと言いますか、ゲームみたいに選ばれたものにしか扱えないのです」

「十条さんもゲームするんですね、何をされるんですか」

「ファミコン世代の話をしても仕方ないと思いますよ。話を戻しますが、防人は地球に選ばれたものにしかその力をフルに使うことができません。我々のような選ばれなかった人間では、ただの服やただの置物にしかなりません」

僕は研ぎ終わって米を炊飯器にセットし、タイマーを起動させた。まぁ、七時半くらいに炊ければいいかな

「じゃあつまり、その地球に選ばれたって訳か、僕は。なんで僕みたいなの選んでいるんだよ」

「それは私共にも、研究開発の方もそれに関しては分かっておりません」

どうだか。それを僕に教える義理はないから、わからないと答えているんじゃないの

「正直あんたらの話はぶっ飛びすぎて納得はできないけど、言いたいことは理解できたよ。要するにあれでしょ、話は聞かせてもらった、どうやら俺の力が必要らしいなってやつでしょ」

「まぁ、ものすごく大雑把にまとめるとそのような感じですね」

コーヒーカップ四人分を洗いながら、大きなため息をついた。鏡はこの場にないが、ものすごく苦々しい顔をしているのが分かる

「それって拒否権とかはあるの」

「残念ながら」

まぁ、だろうね。あったらさっさと帰って、別の人にこの話を持っていくだろうしね

「地球を襲うって言ってたけど、その星食み君は具体的にどんなことをしているの。そもそも襲う意思があって襲っているの、それとも自然現象的に襲っているの」

「仮説の段階なので確証はありませんが、襲う意思があって襲ってると考えています。具体的には、様々なものがありますが、星食みが触れた大地は地震が発生したり、触れた生き物は生気を失い枯れ、最近の大きな台風は星食みが原因と考えています」

なるほど、最近災害が多いと思っていたけど、裏にそんな原因が潜んでいたのか

「裏にそんなんがいるのに、なんで認知されてないの。大体予想がつくけど」

「多分その予想通りですよ。人には認知されない空間を通り、害を及ぼす一瞬だけこちらの世界に干渉してくるのです」

まぁ、そんなところだろうね。そんな災害ばかり起こせる奴が、こそこそとする理由はないもんね

手早く洗ったコーヒーカップを、風通しの良い窓の近くに置いた

「最後に大事な質問、仮にその防人っていう武器だか防具だかを上手く扱うことができたとして、僕の生存確率は100%って言いきれる」

戦うということは、相手からの反撃も見込まれるということ。武器や装備を用意しているということは、それがないと戦いにすらならないということ。つまり、僕は死ぬ恐れがあるということだ、それはあまり好ましい展開ではない

「最初から負けるつもりかよ、男のくせに情けない」

「普通は負けるリスクが大事ですからね、勝率が1%でも負け損が0だったら暇つぶし程度にやりますよ。だからあなたを煽っているんです、さっきからずっと上司におんぶにだっこの二宮さん、そんなんだから若造って呼ばれるんですよ」

「煽るつもりが煽られてどうするんですか。申し訳ありません、二宮さんの失言について深くお詫び申し上げます」

「いえいえ、僕も若造相手に言い過ぎました。世の中には自分より下だと思っているものを攻撃しないと気が済まない、可哀想な人種がいるってことを理解できなかった僕の落ち度でもありますしね」

「ご、ご理解いただき、ありがとうございます」

おぉ、声がめっちゃ震えている。面白れぇ

「まぁ僕もどっちかというと二宮さんと同じ人種なので、お気になさらずに」

さてと、話が逸れてしまったな

「残念ながら、星食みとの戦いはどのようなものになるのか、完璧な予想は立てられません。ですが、防人の性能から言って、ある程度余裕のあるものになるかと思います」

「でも、あくまで予想でしょ、実際に戦ったわけではないんだし」

「ええ、あくまでデータ上の性能の話ですね。無責任なことを言いますと、わからない、が私個人の意見ですね」

僕の頭は、そんなデータの推論を信じられるほどおめでたくはない

僕は戸棚から急須を取り出し、茶葉とお湯を入れた。コーヒー飲んだ後に緑茶を飲むのって、妙な背徳感があっていいよね

三人分のお茶を用意し、再びソファに戻った

「説明は、この先随時受けるとして、大事なことをはっきり決めましょうか。僕は一回七千万円から話を始めたいと思います」

「は?」

唐突な数字に、二宮さんはもちろん、十条さんまでもが素っ頓狂な声を出した

「ですから、その星食みってやつと戦う報酬ですよ。まさか、無償で戦ってもらえるなんて笑えないこと考えていませんでしたよね」

「あぁ、報酬のことでしたか。勿論それなりのものを出すつもりでいます、この家に法外な援助、あなたはもちろん妹さんやご両親が苦労しないほどの生活や学業のサポート等々を考えております」

「いやいや、それは当たり前、言わばあんたらは雇い主、従業員が仕事に集中できる環境を作るのは義務みたいなものだよ、あ、もちろん、この戦いで僕が負った怪我とかの治療費や慰謝料、この戦い関係で僕の生活に損失が発生した場合、別途要求させていただきます。僕が言いたいのは、それにプラスして僕個人にあてた報酬。要求としては、一回の戦闘ごとに七千万円かな」

「な、七千万ですか、それも一回の戦闘に」

余裕ぶっこいている十条さんも、流石に表情を変化させた

「一回七千万なんて、馬鹿も休み休み言えよ、十回も出動したら七億じゃねぇか」

「え、十回も出動する可能性があるんですか、なら七千万は安いですね。一回の戦闘ごとに八千万円で」

「話聞いてなかったのかよ、個人にそんな金を払える余裕があると思っているのかよ、馬鹿じゃねえのか」

「きゃーこわーい、怒鳴られちゃった、怒鳴られるだけでこんなに怖いだなんて、命がけの闘いってどんなに恐ろしいんだろう。というわけで一回九千万円で」

「この野郎…」

「やめなさい二宮さん。さらに値上がりする機会を与えるだけですよ」

十条さんが二宮さんの方を掴み、不用意な発言を未然に防いだ。残念、もうちょっと吹っ掛けようと思ってたのに

「聡いあなたのことです、いくら我々のバックに政府がついていようと、そんな膨大なお金を支払う能力はありません。上にかけ合おうにも、何回戦うかもわからないものに一回七千万円など「九千万ね」おいそれと結ぶことのできる契約ではありません。必ず報酬は形にして支払わせていただきます、なので…」

「嫌だ、九千万じゃないと…あれだな、九千万だとちょっと半端だな、一億円にしよう。一回の戦闘に対して一億円って話じゃないと引き受けない」

ぴんと人差し指を立てた

二宮さんは忌々しそうに僕を睨みつけ、十条さんはさっきまでの余裕のある笑みはどこかに消えた

「……ここで頷くわけにはいきませんから、話を持ち帰らせていただきます」

「一応言っておくけど、変なこと考えないでよ。僕はお二人が思っている以上に賢くないし、大人でもない、人々のためとか誰かを守るためとか、そんなことを微塵も考えたことは無い、極論人類なんて滅んでも良いと考えている、十六年も生きたからね。何らかの弾みで、他の適合者さんに危害を加えるかもしれないですね」

「防人の適合者が他にもいるって、話をしましたっけ」

「いや、なんとなく口ぶりがそんな気がしたけど、やっぱりそうだったんだ」

僕のこの脅し…忠告の意味が分からない人はこの場にはいない。僕は今、この地球を人質に交渉しているのだ

「なんであなたみたいな人が選ばれたのか、疑問でなりませんよ」

十条さんはそう言って、二宮さんを連れてリビングの外に向かった

「あれ、一緒に夕飯を食べようと思っていたのに、残念ですね」

そんな気もないのが分かっているのか、特にその発言に対して触れることもなく玄関に向かった

「僕も疑問ですよ、なんでこんなクズな人間がそんな大役を任せられるのか。良いお返事、期待しています」

玄関の扉を開け、二人にお帰りを促した



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