第24話 人機一体

「損傷した臓器の修復・・・100%、終了。

戦闘用学習・・・100%、終了。

バイタル正常、脳波通常値へ移行、覚醒します。」


「」

「・・・・・」

「・・・生きている?」


あの時マンティコアに袈裟懸けに切り裂かれたはずである。

恐ろしいほどの痛みがあったが、今はそれは無い。

ぼんやりする頭で辺りを見回す。

目の前にいくつかの数字が並んでいる。

「これは?」

「お目覚めのところ申し訳ありませんが、本機は現在、通称“マンティコア”と交戦中です。」

ブリッツの声が聞こえるが、姿が見えない。

目の前に顔を向けると、戦っていたマンティコアが今はビゼンと戦っている所が見える。

マンティコアが見えるがいくつかの表示が増えている様だ。

推定HPや損傷度、交戦時間も表示されている。


「どのくらいの間、意識を失っていた?」

「時間にして450秒。」


気のせいか視線が高い気がする。

周りを確認しようとヘッドマウントユニットを取り外そうと手を頭に?????


手が緋色?


「????」


「これはどうなっているんだ?」


「現在、富岳殿は本機、TYPE:SK-007 機動強化兵器 ブリッツを装着している状態です。」

「富岳殿は仕官への承認ならびに遺伝子情報の登録をもって正規パイロットに登録されました。」

「以降、富岳殿は階級をOF-1とし、許可された武装での敵性勢力の駆除の任務が義務づけられます。」

「なお、富岳殿が装備していたゾモロドネガルは本機基本装備の大剣(ツヴァイハインダー)に統合されました。」

説明と共に、様々なリストが提示される。


そのリストの内、いくつかの文字と大剣(ツヴァイハインダー)の文字が点灯していた。

大剣を指定する。


ガコン。


亜空間から大剣の柄が出現する。


俺はその柄を持ち大剣を抜き放つ。


ジャキャァーン!!


刃渡りが120cmもある大剣が出現する。


ギュォォオオオオオオオオオオオ!!!!


同時にブリッツ自体も防御から攻撃状態に移行する。

まるで、ブリッツ自身が雄たけびを上げている様である。



「むう。あれは!!」

「知っているのか、爺。」

「ゴーレムマスターの中にはさらに強くなる為にゴーレムと一つになり戦うと言われています。」

「それを“人機一体”と呼ばれています。」



ブリッツの目が俺の目に。手足が俺の手足に。


正に人機一体。


その姿がここにあった。




大剣を構え、マンティコアに突撃する。


ビゼン、ビンゴと入れ替わりマンティコアと対峙する。


「富岳殿、戦闘用学習により実践的な剣術が使えるはずです。」

「む?」

確かに習得した覚えのない技の記憶がある。

これが戦闘用学習の成果なのだろうか?


マンティコアは尻尾をこちらに向け大量の棘を発射する。


記憶している剣術を使ってみる。

マンティコアの棘の攻撃を大剣で打ち払い、逸らし、避ける。

その剣術の動きはまるで踊っているかの様であった。

また、通常の状態であれば大剣でこのような動きをするのは無謀と言うものであろう。

しかし、ブリッツにより力や機動力を強化されている今の状態なら可能である。


大量に棘を打ち込んだマンティコアは一飛で間合いを詰め、強靭な鉤爪を持つその腕を振るった。


だが、その攻撃さえも受け流し返す刀でその腕を切り裂く。


「行くぞ。夢想剣舞流、秘儀!」


大剣を構え力をためる。

記憶しているこの技は、大剣でできる技ではない。


「八葉!」


ザザザザッ!!!


大剣が唸りをあげマンティコアを一瞬で八つに切り裂く。

八つに斬られた傷口から血が噴き出し、その様子が八つ葉の様に見えることからつけられた秘儀である。


ゴフォォファアアアアアア


マンティコアは断末魔の叫び声をあげて地に伏せた。



戦いが終わって、ブリッツの体が開き降りる。

身体の傷どころか切り裂かれた装備一式も元に戻っている。


「よかった、無事で。本当に良かった。」

ティオは無事な姿を見て安堵したのか、その場でしゃがみ込む。


見ると、オースティンもワイバーンの迎撃に成功したようだ。

「何とか勝てたな。」

「ああ。」


俺はマンティコアとの闘いの末、ブリッツの本来の姿を手に入れたのだ。

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