第22話 湖畔の旅路
2日後の朝、レンボルト辺境伯の城下町アデオム向けて出発した。
アデオムまでの帰路はアーカス湖畔の街道を使うことになっていた。
だが、この道のりだと一、二日余分にかかる。
湖畔の街道はアーカス湖を見ながら歩く風光明媚な道のりで人気がある。
湖の斜面には季節ごとに様々な花が咲き乱れ、以前は遠回りである湖畔の街道を使う人が多い人気の道であったらしい。
現在でも湖畔に住む人々(主にリザードマン)との取引のために使う人も多いが、
わざわざ遠回りするほどの道のりではない。
だが、気がまぎれるのも確かではある。
湖面には近くの森や空が反射して映し出され美しい景色を作り出していた。
湖からの爽やかな風は気持ちよく、暑さを忘れさせる。
所々白い建物のようなものが見えるのは遺跡であろうか?
「あの白い建物は古代遺跡なのですよ。」
ティオが湖面に見える建物について教えてくれる。
「もっとも、あの辺りはリザードマンにとって神聖な場所なので我々では入ることすらできませんが。」
どうやら、リザードマンの聖域に該当する所だそうだ。
湖をよく見ると、あまり船が浮かんでいない。
漁業は盛んではないのだろうか?
そのことを尋ねてみると
聖域だけあって、魔族との争いの絶えない地点なのだそうだ。
特に首都に近い所の生息している魔族のダゴンとの争いが激しく、
毎年、何らかの戦いが行われている。
ダゴンについて尋ねてみると、
魚の頭を持ち手足にヒレがあり全身鱗に覆われた人型の魔族なのだそうだ。
水中を自由に行動できるらしく、水中が得意なリザードマンでも手を焼く魔族だそうだ。
ティオと他愛もない話をしながら馬車に揺られる。
空は青く澄み渡り風が心地よい。
夕方ぐらいになったところで湖畔の村についた。
湖畔の村はイザーブルトと言う名で漁業を主に生活している。
取れた魚はヴォ―ドの方へ運ばれ売り買いされる。
村はヴォ―ドの食糧庫でもあったのである。
猟はリザードマンとの協定で月の半分と決められていた。
天気に関係なく、1月30日の内、偶数日がここの村、奇数日がリザードマンの村だそうだ。
ただ養殖など日に関係のない物はリザードマンとの共同になるそうだ。
その他も細かい取り決めがあるらしい。
だが、そうすることによって無用の衝突を避けているのだ。
「食事まで時間がありますので、ティオ様と湖の方へいらしたらどうですか?」
ミルヴィナがそう勧めてくれる。
曰く、世話になったのだからそれなりの礼をするのは当然であると。
(でも、湖に行くのが何で礼になるんだ?)
夕食までの間、散策がてらにティオと湖の方へ歩いてゆく。
湖は夕日に照らされ赤く輝く雲が映し出され、さながら一枚の絵画のような景色だった。
そんな中をティオと二人で歩く。
やがて夕日が落ち、辺りは夜の闇に包まれる。
空には満天の星や月が輝く。
湖にも星が輝き幻想的な景色を見せていた。
そんな星空の下を2人歩く。
「ありがとう。」
「え?」
「いや、なんとなく言いたくなって。」
「・・・元気になって何よりです。」
そう言いティオは手を繋いできた。
「戻りましょう。もう食事の時間です。」
「ああ、そう言えば」
「ふふふ。」
二人手を繋ぎ村に戻るのであった。
村に戻ると丁度食事の準備が整ったらしく皆食卓に着いている。
ブリッツの移動キャリアーおかげで、どこでもテーブルや食器が使えるのは便利である。
(一応、兵器のはずなんだが・・・・。)
ミルヴィナの作った食事に舌鼓をうち今日は休むことにする。
明日からしばらく村がないため、休む時は野宿になる。
屋根付きの宿泊場と布団とベッドの組み合わせはしばらくないのである。
とはいえ、移動キャリアーの中には布団もベッドもあるのだが。
――――――――――――――――――――――――――――――
オークを喰らったことでその飛竜は狡猾な知恵と強力な前足を手に入れた。
かつて飛竜であったものは考える。
金ピカを倒す方法を。
新たな力を得ても倒せるとは思えないほど強力であった。
それは確信している。
再び、金ピカと戦うことを。
そして、狡猾になった知恵でいろいろ策を張り巡らせるのであった。
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