第21話 悔恨とティオ
「まずいな。」
「まずいですね。」
「まずいでござる。」
オースティン、カイルス、ビゼンの三人は顔をつき合わせて相談していた。
彼らが借りてもらっている宿というより空き家である。
その家のリビングで引きこもってしまったリーダーの対策の相談をしているのである。
「ミルヴィナさんでも無理だそうだし。」
「私は富岳様のメイドですので。」
フガクのメイドであるミルヴィナでは説得が出来ないでいた。
「ここはやはり、ティオ様に出張ってもらうしか。」
「某もそれしか方法を思いつかないでござる。」
「・・・やはりそれしかないか。ティオ様は辺境伯の孫なのだけど?」
「「そこは、お主の出番じゃないか。」」
「ふぅ。やはりその役は私になるか。」
あの日、遺跡から帰ってもう三日になる。
俺は・・・・・。
何か悪かったのか。
悪人を切り捨てなかったのが良くなかったのか。
盗賊とはいえ、みだりに人を殺すことは考えられない。
商人達に付いて行くべきだったのか。
遺跡に行く予定があったし、関係のない俺達が無理をして付いて行く理由は無い。
それとも注意すべきだったのか。
そこまで危ない認識はない。
何かできたのだろうか?
何もできやしない。
いくら考えても答えの出ない悔恨しか残らない。
コンコン
扉をノックする音が聞こえる。
「失礼します。」
心配そうな顔をしてティオが入ってきた。
カイルスやオースティン辺りの仕業だろうか?
入ってきて、ティオは何も言わず俺の前に座った。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
どのくらい時間がたったのだろうか?
「何も言わないんだな。」
「あなたが話したくなるまで私は待ちます。」
ティオはにっこり笑ってそう言った。
「・・・・・もっと早く動いていれば、助けられたかもしれない?」
「それだけじゃない。あんな悪人を見逃したおかげで罪のない人が死んでしまった。」
「・・・俺は何かできたのではないかと・・・・・。」
ティオは黙って聞いてくれている。
「リーダー。フガクって変わっているよな。」
「確かにそうだな。彼は独特の考え方を持っているな。」
「拙者、不思議なのはあの考えでよく今まで無事で済んだものだと思うでござる。」
「そういえば最初あったときゴブリンに囲まれていたな。」
「左様か。ふむ。」
「守りの法具を壊してしまったとかも聞いたな。」
「法具を!どこのお大尽だ。」
「だが実際のところ、彼はいったいどこの出身だ?」
とカイルスがミルヴィナに尋ねる。
「富岳様がお話になることだと思うので、私からは何も。」
「だよねぇ。いろいろ秘密はあるよねぇ。ぐふふ。」
いつの間にかヴィヴィも話の輪に加わっていた。
「彼はあきらめが悪い様だからねぇ。」
「ふむ。その辺はティオ様に期待するところですな。」
「結局、その反動を極悪人とはいえあの盗賊に向けてしまった。」
「何もできなかった。何も成すことが無かった。」
「俺は何もできないんだ。」
ティオはそっと俺の頭を抱きかかえてくれる。
「いいえ。あなたは私の命を救ってくださいました。」
「でもそれはたまたまだし、ブリッツがいたからで。」
「あの時、あのままでは遅かれ早かれ、私たちの命はなかったでしょう。」
ティオは続ける
「でもあなたは現れた。
それに私はどんなに安堵したことか。皆もそうだと思います。」
「あのゴーレムもあなたが居なければあの場にはいなかったでしょう。」
ティオは俺を見つめると、真剣な目で言った。
「ここに、あなたに助けられた命があるのです。」
「だから、何もできないなんて、そんな悲しいことは言わないでください。」
ティオの言った言葉を考えてみる。
俺にも何かできるかもしれないと思わせてくれる。
そう考えると、何か胸の奥が熱くなる気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます