第18話 魔族の饗宴

全くツイてねぇ。


渓谷の出口に隠れ家を持って時折り通る商人を襲うだけでたんまり稼げていた。

金ぴかの鎧を着た連中が通った時、またカモが来たと思ったんだが、それが裏目だった。

頭は即死。仲間はみんな捕まった。

もう命はねぇもんだと思っていたが、世の中とんだ甘ちゃんがいたもんだ。


何とか命は助かったが、犯罪奴隷としてこき使われる羽目になった。

飯はまずいし、女は抱けねぇ、商人どもの重い荷物を運ばなきゃならねぇ、最悪の環境だ。


この商人連中はオーク共の領域と魔力の渦の間の細い道を通るらしい。

「運が良ければ通れる」と言っている

あほだな。

その道はオークが狩りをするためにわざと通してるんだよ。


どうやら俺にも運が向いてきたらしい。

あそこのオークとはエサ(邪魔な奴)を調達したこともあるんでちょっとした知り合いだ。

何とか出し抜いてこんな生活からおさらばしてやる。




細い道をしばらく進んだところで、案の定オーク共が襲ってきやがった。

どうやら俺の知り合いの奴みたいだ。ツイてるぜ。


だが、商人の親父は前の方でオークに襲われるのを見てすぐに引き返そうとしている。

そうはいかねぇ。

オーク連中てのは子供が一番好きなんだ。

こんなところで一番の交渉材料を失うと、俺の命もあぶねえ。


「おいオヤジ!俺の縄を切って剣をよこせ。」

「何を言っている。お前は犯罪奴隷じゃないか。そんな奴に剣など・・・」

「バカヤロウ!俺だってこんなところで死ぬ気はねえんだよ。

あいつらを倒せるのは、この中では俺だけだろうが!」

「ううう、そうかもしれんが」

結局、商人のオヤジは少し躊躇したが俺の縄を切ることにしたらしい。グズが!


「ふぅ。ありがとよ。」

と言って親父から剣を受け取る。


「これでなんとか・・・・・」


ズブシュ。

商人のオヤジの腹に剣を突き立てる。


「ゴハゥ、なな何いい?!?!!」

「おとうさん!!」

「おーちゃん!」


「へへへへへ。お前さん達にはオークとの交渉の材料になってもらうのさ。」

「あ、あ、あ、あ、ああ、あ。にげるぉおおお。」

「へっ逃がしゃしねーよ。」

逃げようとする、姉妹を剣で追い詰める。

丁度、そこへオーク達がやって来た。


「ぶひぃ。なんだお前久しぶりだな。」

「遅かったじゃねえか。逃げられるとこだったぜ。」

「ぶひひひひひ。」

「ぶふぉぶふぉぶふぉ。」


ふひ、賢く立ち回るってのはこう言うことよ。

しかし、この姉の方、いい体だな。顔もきれいな方だし、ぐふぅ。


「なぁ、ついでに頼みたいことがあるんだが。」

「なんだ、人間。」

「こっちの大きい方。どうせあのオーガにやるんだろ。だったらその前に。」

「ぶひひひひひ。人間。お前も好きだなぁ。」

下卑た笑いだ。だが、どうやらお許しが出たらしい。


「ほらこっちに来な。どうせあの世に行くんだ。その前に天国に行かせてやるよ。」

姉の方を草むらに引き釣り込む。


「ぶひひひひ、ガキの方はぁ。」

「やっぱり、丸焼きだぁああああ。」

「ぶひぶひぶひ。よだれがたまらんブヒ。」

オーク達は抵抗する妹の方を金属の檻に入れ火にかけた。


「あねえちゃん。あちゅい。あちゅいよぉ」


「びひひひひ。泣き叫べば叫ぶほどいい味に焼けるびひぃ。」



「あぁ、・・・ひ、人でなし!!」

「人でなしで結構。俺は自分が良いければ後はどうなろうといいのさ。

それより、さっそく味見だ」


「あーじーみ?ダーメ―!!!」

味見といった声を聞きつけたオーガが姉の方を取り上げる。


「いや、味見ってのはそういう意味でなく・・・・・」

「ダーメー。」

こうなったら聞きやしねぇ。

まぁ、命を懸けてまでやり合う必要はねぇし。


「女、ごはん。生け作りサイコー。」

「もうガマンできなぁあい。」




「い、た、だ、き、ま、づ」

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