魔獣領域
第10話 新たなる旅へ
今日もゴブリンの残党狩りを終え町に戻る。
あれから1か月、城塞とその城下町は徐々に復興しつつあった。
ゴブリンは地下の暗いところが好みだったらしく、城塞や城下町の地上部分はあまり使用されていなかった。
ほとんどが経年劣化によるもので新しいものに替えれば済む程度であったのが幸いした。
そんな中で俺は城塞や町の復興の手伝いをしつつ、情報を集めていた。
船が着陸予想地点まで、馬車で半年はかかるようだ。
途中、元帝国の首都の近くを通る必要があるのと、魔力渦動溜といった危険地帯がある。
魔力渦動溜というのは魔法発動に必要なエネルギーであるマナが極端に濃く、渦を巻いている所だそうだ。
元帝国の首都はオークやオーガに占拠されているし、他の道も楽な道のりではない。
「おかえりなさい。富岳さま。」
町に入ると、辺境伯の孫であるティオ・レンボルトが出迎えてくれた。
話しながら歩く。
彼女と話したり出かけたりするのは楽しい。
助け出してからというもの、町の外から帰るとよく出迎えてくれたわいもない話をしながら宿に帰る。
「・・・そういえば、オーシムの村って今どうなっているんだろう?大部分の人が城下町に移動したから人手が足りないんじゃないかなぁ。」
「大丈夫ですよ。もともと武器を移動させておくための駐屯用の村だったので、村の住人はすべて城下町に移動しているんですよ。」
・・・何だろう。彼女は他の人とは何か違う気がする。
ここに着て初めて会ったような、何か・・・・。
「それとですね、お爺様があなた方にぜひ頼みたいことがあるとのことです。
屋敷の方へ来ていただきたいとのことです。」
俺はゴブリン攻略時の連中と組んで、残党狩りをやっていた。
屋敷に伺うのにあいつらも連れて行った方がいいだろう。
「何だろうな。今夜、仲間と伺うと伝えてください。」
「わかりました。食事もご用意しますわね。楽しみにしててください。」
いつもの連中を連れて領主の館に出向く。
オースティンは肉がたくさんあるかどうか心配している。ビゼンとビンゴは刺身があればいいのにと言っている。(不思議なことに、この世界も刺身の文化がある。)
ヴィヴィは何やら不気味にぐふぐふ笑っている。そう言えばティオとミルヴィナを見たとき奇声をあげて挙げていた気がする。
カイルスは貴族の最低限のマナーを説明してくれる。
気取っているが面倒見は良い。
ミルヴィナとブリッツは食事の必要がないので、宿で留守番である。
領主の館での食事は魚のムニエルと各種野菜のサラダ、フォカッチャとパストローネ。
以外にシンプルで、メインが魚なのはビゼンとビンゴに合わせてくれたためらしい。
「さて、食事が終わったので本題に入ろうか。飲み物を飲みながらで良いので聞いていただきたい。
私は君たちへある依頼をしたいのだ。」
その依頼内容は、孫娘のティオ・レンボルトをいかゾーティアの町まで護衛してほしいとのことだった。
ゾーティアの領主とも連携をとって帝都奪還を行うためにゾーティアに行く必要があり、その役目を孫娘に託したとのこと。
俺達はその依頼を受けることにした。
宿に帰り、この一か月の間で知ったことを考察する。
この一か月、ゴブリン残党狩り以外は領主の図書館で戦術や戦略論の他、様々な文献を閲覧していた。
まず、星系には惑星は5つ、この星は第2惑星であり大きさ差は地球とほぼ同じ。
大きな大陸が2つあり、平均気温は地球より2,3度高い。
酸素濃度も0.5%ほど高いそうだ。(ミルヴィナ談)
そして、そこに住む人々の文化レベルは地球で言う中世と同じぐらい。
大きく違うのは地球と違うのは様々な種族、人種ではない、全く異なる能力、姿かたちを持つ種族が存在すること。そして、魔法が存在することだった。
余談だが俺も魔法が使えるかと思って教えて貰おうとした。
が、全く才能が無いそうだ。
人間族はマナを扱う力(魔力)は全種族の中でも低い方だが、全く才能がないのは珍しいそうだ。
夕食に出たのムニエルに使われていた胡椒は中世では大変高価なものであるが、この世界では一般的な香辛料である。
サラダは中世に普及はしていない。
そして、ブリッツの存在はこの星の過去に俺の知る技術水準よりも高い水準であったことが判る。
そして彼の持つ通信規格が俺の規格の上位互換であったということである。
言語体系の構文もほぼ同じ。
単語の翻訳だけでほとんど意味が理解できる。
ここで仮説を立てる。
「同じようにこの世界にやって来た者がいた。」
という仮説である。
俺が巻き込まれたテロが同時テロで有った場合、他のエネルギープラントも襲われているはずである。
だとすれば、同じようにブラックホールによって時間と空間を超えた者がいた可能性がある。
シュヴァルツシルト面を超えた距離により時間が異なると考えれると、はるか過去にその者がやって来たことが想定できる。
そして、この星で科学技術を発展させるが、何らかの事情(たぶん魔法だろう)でその科学文明は衰退する。
その影響は言語や技術にみられるように各地に残る。
それを考えると、いろいろなところに残る古代遺跡には俺ならばわかる技術があると推察できる。
船の着陸地点に選んだ場所もそんな遺跡なのかもしれない。
様々な考えを考察しながら夜が更けてゆくのであった。
出発までの1週間は旅の備えに費やされた。
旅を出るにあたって、俺たちのメンバーに一人加わった。
手先の器用な斥候役である。
名前はフー、シェイプチェンジャーだそうだ。
彼は自分と同じサイズのものなら大抵のものに姿を似せることが出来るそうだ。
ここでメンバーを紹介すると
オースティン・ヴェイロン、種族 セントール
人?の好い年若いセントール。双剣の使い手。
恐るべき突破能力を誇る、メンバーの切り込み隊長である。
カイルス・ラ・ソーン、種族 有翼人
元帝国の貴族。秩序を重んじ融通が利かないところがある。
弓の名手で遠く離れたゴブリンの目を射抜くことが出来る。
ヴィヴィ・ドレッド・イル・ブラッド、種族 有角人
妖術士、攻撃系の呪文が多いが結構嫌な呪文も多い。
時折り奇声をあげたり、ぐふぐふ不気味に笑っていたり、とかく妖しい。
初めてミルヴィナ見たときは「パツキンゴスロリ美少女キタ―」とか
ティオさまを見たときは「儚げ銀髪と金髪ゴスロリ、ぐふぐふ」とか
なにか悪い病気なのかもしれない。
ビゼン、種族 リザードマン
いい所の出自らしいが家は没落してとのこと。
剣の腕は結構なものでオースティンといい勝負である。
ビンゴ、種族 リザードマン
メンバーの回復要員。ビゼンの執事。ビゼンが幼いころから使えているそうだ。
ビゼンと共に御家再興を目指しているらしい。
戦闘用ゴーレムのブリッツと俺、一般用ゴーレムのミルヴィナ。
この8人に加えこれに斥候役が加わる。
前衛職が多い気がするがそれなりにバランスが取れている気がする。
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