第9話 子鬼達(ゴブリン)の輪舞
(マスター、囚われているものの中に通信可能なものがいるようです。)
ブリッツが連絡してくる。ミルヴィナの可能性が高い。
俺は無線IDのチャンネルを以前使用していたチャンネルに合わせる。
(ミルヴィナ、聞こえるか?ミルヴィナ。)
(富岳様!では先ほどの音は富岳様が?)
(やはり聞こえていたか、そちらの反応は?)
(こちらは宴会をしているためか、誰も気づいていないようです。)
ミルヴィナから敵の配置、人質の状態を聞く。その上で作戦を考える。
と、その前に。
(あー実はミルヴィナさん。ここへ来てから新たにアンドロイドというかロボットというか、を手に入れまして。)
(うむ、私が 起動強化兵器 SK-007 ブリッツ。よろしく頼む。)
(兵器・・・戦闘用ですか。心強いです。)
(戦闘は任せてくれ。あと分析も可能だ。)
(あ、それなら、ここの人間の言語の分析は出来ていますか?)
(必要なのは女性用かな?通信で分析データーを送る。フォーマットはそちらのものに合わせておこう。)
(ありがとうございます。これで人質とコミュニケーションが取れます)
俺単独で下見をする。
俺たちが出た扉はゴブリンたちのいる部屋の中2階につながっており、その場所から部屋をうかがう。
向かって左手に入り口、右手に部屋の奥が見える。
下の宴会場に居るのはゴブリン王×1、ゴブリン魔法使い×1、ゴブリン王女×1、ゴブリン×10。
部屋の一番奥にミルヴィナと人質が6人。その前にゴブリン王、その前にゴブリン王女と魔法使い。
そこから少し離れて、6匹のゴブリンが輪になって踊りその周りに4匹のゴブリンが音の出るものを叩いている。
ゴブリン王が人質に近すぎる。
だが、王といえどゴブリン、そこまで知能があるわけではない。
「ビゼン、ビンゴ。君たちに頼みがある。」
「臭い臭いと思っていたら、この様なところにゴミが固まっていたか!!」
「若、この様な輩を切ると刀が汚れます。ここはこの爺にお任せを。」
「いやいや、爺よ。手下の後ろに隠れて震えているそこの王もどきではないのだ。
このぐらいの敵は我一人で十分だ。」
「若~。立派になりなさって。この爺、感無量でございます。」
「来い!王もどき。我が直々に成敗してくれる!!」
ビセンとビンゴがゴブリン王を挑発する。
「蜥蜴、我、倒す、笑止。」
ゴブリン王が他のゴブリンをかき分け棍棒を片手に前に出てきた。今だ!
俺はブリッツに捕まりゴブリン王と人質の間に飛び込む。
「助けに来た!ブリッツ!薙ぎ払え!」
ブリッツの抜き打ちの一閃。コブリン程度なら一閃で倒せたが、さすがに魔法使いと王女は耐久度があるようだ。致命傷にはなっていない。
ゴブリン王女が自分と魔法使いを治す。
治療受けた魔法使いが呪文を唱える体勢に入る。
その瞬間でカイラルの矢が刺さる。
呪文を阻害され動きが止まったところをオースティンが飛び込み魔法使いを切る。
高所からの体重を乗せた攻撃が魔法使いを瀕死の重傷にする。
「こいつはおまけだ!」
オースティンは後ろ足で魔法使いにとどめを刺す。
魔法使いはオースティンの後ろ足に蹴り飛ばされ、ゴブリンを巻き込み壁に叩きつけられ壁に赤い跡を残す。
「ミスティック・レイ」
それと同時にヴィヴィのエネルギー光線の呪文がゴブリン王女を死亡させる。
「まだ2人、挟み、卑怯!」
ゴブリン王が吼える。
「卑怯?このような手に引っかかるお主が愚かなだけなのだよ。」
ビゼンは間合いを詰めゴブリン王を切る。着実にダメージを与えているようだ。
ビンゴはそのサポートに回り、回避や防御、命中向上等の能力上昇の呪文をビゼンに唱える。
俺とブリッツは人質を守りつつ、ゴブリンを攻撃する。
以前の様に剣に振り回されることは無くなっている。やはり、隣に頼りになるやつがいると違う。
俺とブリッツが人質を守っている間、着実にゴブリンを倒してゆく。
ゴブリン王の振り回す棍棒はビゼンをとらえることが出来ない。
技能に差がある上、回避等の能力を向上させている。命中させることは困難だろう。
「これで止めでござる。」
ビゼンの刀がゴブリン王の両腕を切り裂き返す刀で心臓を貫く。
「ごふぉぉおおおおおおおおおお。」
ゴブリン王は口から大量の血を吐きちらし絶命した。
「若!見事でございます。」
ビンゴがそういう頃には部屋のゴブリンの掃討は終わっていた。
ゴブリンは掃討した。
俺は人質に向くと話しかける。
「どこか怪我は無いか?」
「いいえ、大丈夫です。救出感謝いたします。」
年のころは15,6だろうか?俺は凛として礼を言う銀髪の美少女に目を奪われた。
**********
私は物心ついた時から一人だった。
周りに何人かの人はいた。だけと私は彼らとは違った。
私一人が色ないの世界にいる様な、そんな感じだった。
だからといって、他の人が妬ましいとか感じたことは無かった。
私にはお爺様も滅多に会えないけどお父様もいる。
水汲みをする子供たちに字を教える約束をしていたのを思い出し水汲み場に行った時、
ゴブリンの集団に攫われた。
ゴブリンは魔族の一種で人の肉とくに女、子供の肉を好む。
一緒にいた子供たちと城塞の中の祭壇らしい所に連れていかれた。
そこで、白磁の人形の様な少女が祭られていた。
(私たちは人形の神に捧げられる供物といったところでしょうか?)
目の前に来た時、それは声を発しゴブリンたちに何か指示を出した。
(これはオートマタ―?お爺様の研究室で見たことがありますがもっと精巧な物でしょうか?)
私と子供たちはオートマタ―の横に押しやられた。
(どうやら生贄の役からは逃れたようですが・・・。)
獣の様な悪臭の中、ゴブリンの宴が始まりました。
酸っぱい、饐えた匂いのする鍋の何かわからない肉を食べています。
何の肉か考えないようにしました。
時折り外からゴブリンがやってきて何かを叫んでいます。
お爺様がやって来たのでしょうか?
でも、今までこの城塞は取り返せなかったのです。
今回もだめでしょう。
?
正面入り口ではなく横の方から大きな音が聞こえました。
ゴブリンたちは宴に夢中で気付いてないようです。
「失礼します。お名前をお聞かせいただけますか?」
オートマタ―は私に名前を訪ねてきました。
「私はXX-000ミルヴィナと言います。今、救出の部隊がこちらに来ております。
ついては戦闘に巻き込まれない様、下がっておく必要があると上申いたします。」
「ありがとう、ミルヴィナ。私はティオ・レンボルト。この地方の辺境伯の孫娘です。
救出部隊というのは?」
「私のマスターがこの近くまで来ております。」
「マスター?あなたはゴブリンの神様じゃ?」
「それは間違った認識です。私は偶然、彼らの神に祭り上げられたにすぎません。」
その時、正面入り口で騒ぎが起こりました。
何やらゴブリンを挑発しているみたいです。
挑発に乗った大きなゴブリンが小さいのをかき分けまえに出てゆきます。
その時、日緋色の鎧と共に黒髪の青年が飛び込んで来ました。
「助けに来た。」
まるでそこにだけ色が着いている、そんな不思議な光景でした。
**********
「うひょー。パツキンゴスロリキター!!!!!!」
「うへへへ、はかなげ銀髪美少女も。」
「ごちそうです、おかわりです。くんかくんかくんか。」
ヴィヴィが奇声をあげ怪しげな行動をしている。
うーん。妖術師とはいったい?
ゴブリン王を倒したが外にはここの数倍のゴブリンがいる。
その中でゴブリン王の代わりになるものがいないとも限らない。
人質は地下道から逃がすとしても、再び使えるとは限らない。
そうなると城塞の奪還は難しくなるだろう。
今、ゴブリンを叩かなくてはならない。
本隊の方は城門を破れずにいる。
やはり城門にゴブリンが固まっており、城門の開放する前にゴブリンに阻まれるだろう。
(ブリッツ、あの量のゴブリンを突破して城門を開放することは出来るか?)
(難しいですね。ゴブリンの量が多すぎて。突撃したとしても死骸自体が進行の妨げになります。)
(ゴブリン死骸が発生しなければいいのか。)
「何か考え事か?」
「ああ、オースティンアのゴブリンを除外しないと城門を破れそうにないんでね。」
「ふぅん、そうか。じゃ、ちょっと任せてくれ。」
そういうとオースティンはゴブリン王の首を持ち外に出た。
その首を掲げ城門の方向へ突撃する。
倒されたゴブリン王の首を見たゴブリンは散り散りに逃げてゆく。
主を倒されたゴブリンは烏合の衆だった。
「道が空いたぜ。」
「ブリッツ!突撃だ!」
(了解。クラッシュシールド展開、突撃します!)
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
轟音と共に城門が吹き飛ばされる。
城門が開いたのを見た正規部隊が突入してきた。
混乱している城塞を正規の部隊が落とせないはずは無い。
こうして俺たちは、城塞を取り戻したのだった。
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