第5話 第3種接近遭遇

このままでは盗賊集団の上に落ちそうだ。携帯フィールドがあるから落下のダメージは受けることはない・・・


「・・・携帯フィールドをつけていない・・・」


このままでは大けが、いやいや、この高さからの落ちた場合まず即死・・・。


「富岳さま!!これを!」


ミルヴィナがとっさに飛び降りて携帯フィールドを投げ渡す。


勢いをつけて飛び降りた分、ミルヴィナが先に落ちる。


ズガガガガ!!!!


落下の衝撃波で盗賊の集団は半壊している。

だが、ミルヴィナの方も少なからずのダメージを追っている。


「手足が変な方向に曲がってないか?あれ?」


俺がこのまま落下すると携帯フィールドでミルヴィナを弾き飛ばし、さらにダメージを与えそうである。


とっさに携帯フィールドを操作し展開範囲を縮小する。

慌てて操作したた為エネルギー減少率も縮小してしまい落下の衝撃を殺しきれない。


ドン!


「ぐはっ!」


余りの衝撃に気が遠くなる。

霞む意識の中で最後に見たのは、槍を手に近づく盗賊の姿だった。



カッカッカッ・・・。

頭の下で蹄の音が聞こえる。

ぼんやりする頭であたりを確認しようと体をもぞもぞ動かす。


『おっと、気が付いたか。もう少したら村に着くからそれまでおとなしくしてくれ。』


頭の上の方から声が聞こえる。

残念なことに何を言っているのかあまり判らない。自動翻訳を行うにもデーター不足のようだ。

上を見ると逆光になってよく見えないが、馬の背に乗っているらしい。

どうやら、この男に助けられたみたいだ。

ただ、乗せ方がぞんざいで荷物のように扱われている気がする。

乗せられている馬は皮鎧をつけているらしく側面には剣の鞘が取り付けられている。



『気が付いたんなら、ちょっと飛ばすぞ。しっかり捕まってろよ。』


何か男がしゃべった途端、速度を上げた。

振り落とされないよう、馬につけられている鞘に必死で捕まる。

地面の流れ方を見ると結構な速度で走らせているようだ。


しばらくすると、歩みはやや遅くなり男が声をかけてくる。


『よし、ここまでくれば安全だろう。さすがにゴブリンどももやってこれまい。歩けるか?』


ゆっくり地面に降りる、足に異常はない。


「危ない所を助けられ・・・」


礼を言いながら男の方を向く。


そこには栗毛の馬がいた。ただし、上半身が人間の。

男はセントールだった。


セントールの男はオースティンと名乗った。若駒の様に見える。

俺とオースティンは並んで歩く。オースティンの頭の位置は高いので自然に見上げる格好なる。


『しかし、すごく大きな音がしたので行ってみると地面にへこんで、馬車は半壊、

死人はいるは、ゴブリンが散らばっているはで驚いたよ。』


最初は何を言っているのか判り辛かったが何分か喋っている内に片言だが自動翻訳で会話が可能になる。文明の利器万歳である。



「その中でもアンタ・・・えっと名前は?」


「シノノメ フガク。」


『フガク、なぜゴブリンに囲まれていた。フガクは####か?』


『####?ナンダ?』


「ゴブリン、フガクを囲む、銀色の光る膜。膜、ゴブリン阻む。####の盾?####の上の盾?」


どうやら、携帯フィールドを何かと勘違いしたようだ。進んだ科学は魔法に見えるから・・・####と言うのは魔法?


「光ってゴブリン、散らす。よかった。」


ふと気になって、携帯フィールドのエネルギー残量を見るとほぼ0を示していた。


(まずいな。もともと少なかったのか、落下の時やゴブリンで減らされたか?

何にせよミルヴィナに・・・。そう言えばミルヴィナは・・・)


オースティンに尋ねてみようと思うが、片言なのでうまく伝わらない。


(しばらく会話を拾う必要があるな。)


片言ながら、オースティンと会話をしつつ、村に向かった。

オースティンはやはり若駒らしく大人になる為に彼らの集落を出たそうだ。


「しゃべっているうちにだいぶ話し方がましになって来たな。やはり、魔法か何かか?」


「そンナとこロダ。」


構文が似ていることもあり、翻訳もだいぶ良くなってきている。


村には何も問題なく入れた。ケンタウロスだと呼び止められるかと思ったが別に珍しくないようだ。

珍しくないことは村に入ると判った。様々な種族がこの世界に存在するらしい。

村と言っても、町と言ってもおかしくないぐらいの人はいる。


「フガクは金はあるのか?」


来たばかりなので有るはずはない。と言うより、お金という物自体使用したことが無い。

通常は認証決済もしくはカード決済である。


(やれやれ、この世界じゃ認証決済はおろかカード決済もできない。うむー。)


「金がないんなら、上着とか珍しい物みたいだから結構金になるかもよ。」


(さすがに上着はまずいな。)


「おっと、そうだ、こいつを渡し忘れていた。」


オースティンは鞄からスケッチブックを取り出す。


「あんたが持っていたものだから、一緒に持ってきたんだ。そいつを売れば結構な金になるんじゃないのか?」


(確か、紙が大量生産されたのは19世紀ごろだったから、この世界の科学水準では珍しいかもしれない。)


「いくらになる、思う?」


「そうだな、金貨25枚は下らないだろう。なんなら俺も付いて行ってやろうか?」


「ありがとう。助かる。」


「いいてことよ。俺の取り分は2割な。」


「わかった。」


「おいおい、そこは払わないと言って値引きさせるところだろう。」


「そうなのか?」


「はぁ~。心配になって来たよ。よし、1割でいい。その代わり、宿、武具、道具は俺が見繕ってやる。」


「?」


「宿や武具屋に客を連れてゆくと、俺の分の割引があるのさ。」


「わかった。」


オースティンは面倒見のいい奴のようだ。


その後は、道具屋、武具屋と周り装備一式を整える。スケッチブックは金貨40枚になったのだがショートソード、レザーアーマー、バックパック、その他の必需品を買うと残りの金貨は9枚。

これだけあればしばらくは大丈夫だそうだ。


その後、オースティンは他に用事があるとのことで、別行動になった。

俺の方は腕試しを兼ねて、遺跡に向かう。


そして今に至る。

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