第4話 第2惑星も青かった

保護装置を解除すると、そこには何もなかった。


周囲には、ブラックホール自体が無くなっていたのである。


「星座が判らない。星の位置が・・・。」


船から見える星の位置は全く見たことのない物だった。

星座は何千年も前から使われており、太陽系の近くならどこでも同じ形である。

その星座、星の位置が判らない。

ここは富岳が知っている宇宙では無いことを示していた。


「艦の状態、エネルギーの残量はどうなっている。」

ミルヴィナに尋ねる。

「本艦の損傷は軽微。武装もおよびフィールド、リアクターに問題ありません。エネルギー残量は若干の低下がみられます。

ただ、エネルギー回収ユニットは機能していないようです。」

「ブラックホールが無くなっているのだから仕方が無いか。どこかに移動可能な星系はないか調べてくれ。」


俺がそう支持するとミルヴィナはしなやかに指を動かしパネルを操作する。


「移動可能位置に星系が存在。ここから20AU。」


「近いな、ハビタブルゾーンに惑星は?」


「1.005AUの位置に地球と同じ規模の惑星があります。

どうやらこの星系の第2惑星のようです。スペクトル分析の結果、大気の状態は地球にほぼ近い状態です。

ただ、惑星温度が5度ほど高いようですが、生存に適していると考えられます。

衛星は3つ。月の3分の2程度のものと、半分ぐらいのものが2つです。」


ミルヴィナの報告から今後の方針を考える。

このまま死ぬまで宇宙空間で過ごせないわけではない。

だが、地球を見つけ出すにしても、どこかの惑星に腰を落ち着けたほうがよい。

未知の惑星には未知の住人、ひょっとしたらもっと科学が進んでいる文明があるかもしれない。


しばらく熟考した後、方針を決める。

「よし。第2惑星に降下しよう。」

「いきなりですか?

惑星からの抵抗があるかもしれません。病原菌も未知のものも考えられます。」


「抵抗がある場合、文明社会があるならその前に何らかの警告があるだろう。

警告が無い場合、フィールドの反射を変えて光学迷彩にすれば大丈夫だろう。」


俺は居住可能な惑星があったことで気楽に考えていた。

船はゆっくりと第2惑星に近づき降下する。



第2惑星は地球に似た青い星だった。ま、青い理由はレイリー錯乱なのだが。


「衛星軌道上に人工物は見当たりません。

多少デブリが多い程度です。

惑星温度は予想より3度ほど低いです。」


ミルヴィナは観測結果を報告する。


「降下地点はどこがいいか?」

俺が尋ねると


「候補は3つに絞りました。

1つ目は南半球にある2番目に大きな大陸の中央部、

2つ目は北半球にある1番大きな大陸の北東部、

3つ目は2つ目の大陸の東部です。」


「候補地選定の理由は?」


「何らかの構造物の反応があるのと反対に生命反応の低さです。

さらに加えるなら、生命反応の多い所を集落と仮定して、そこから10km以上離れている点です。」


しばらく思案する。どこも選定の決定打にかける。

別の要素が必要だろう

「平均気温が20度前後のところは?」


「3番目が25度です。1つ目は31度、2つ目は7度です。」


「よし、3番目の地点に降下しよう。」

降下後、しばらく過ごすことになる。やはり、住みやすいところが一番だ。

船はゆっくり雲を分けながら降下してゆく。


今のところ、この星の大気に病原菌や毒素もない様だ、問題はないだろう。

陸は25%ぐらいで、後は海。

様々な動植物がいることが船の観測機器から読み取れる。

雲を抜けた先は、緩やかな丘陵地帯でいくつかの生命集団が観測できた。


「よし、高度を低く、100m、速度も5km/sec。あとは自動操縦で目的地に着けるだろう。」

そう言うとブリッジから出ようとする。


「富岳さまはどちらへ?」


「下部展望デッキで現住生物を観測する」


宇宙船の下部には小型艇用の発着ハンガーの他に展望用のデッキがある。

そこだと、直に地上の様子が観察できる。

衛星軌道上に人工物がないということは、ロケットのようなものは発明されていない。

そう考えて展望デッキに出る。


展望デッキから、地上の様子が一望できた。独特の空気の匂いがする。

宇宙船の中は環境を安定に保つために、大きな変化はなく代り映えしない。

匂いはほとんど無いのだ。


(いつまでも船の中てのも疲れる。こんな時は絵でも描くに限るね。)


趣味のスケッチブックと色鉛筆を持ち出す。

時代が変わっても、この様な物はなくならないのだ。



(ん、何だろう。偉く背の低い80cmぐらいか、でも2足歩行だな。

この星の現住生物か?知能はどのくらいだ?)

眼下を集団で動く生物に注目する。


(何かに群がっているようだ?木製の四角い箱?馬車か?

少なくとも中世ぐらいの技術水準か。)



(どうやら集団は盗賊のようだ。もう少し近くで見てみるか。)


展望デッキからワイヤーの梯子でぶら下がる。

その体勢でスケッチをするために地上の様子をうかがう。


「富岳さま、その体勢では危険です。安全帯の着用をお願いします。」

いつの間に、降りてきたのかミルヴィナに言われる。


「大丈夫、ほんの1,2分だから。」


「世の中その1,2分で事故は起こるのです。」


「大丈夫、見てみなよ、あの盗賊らしい集団を。

粗末な槍と変な棒しか持っていないよ。

攻撃はここまで届かない・・・」


そう言い終わろうとしたその時、下から火炎球が飛んできた。

直撃はしなかったが、火炎球の熱はワイヤーを溶かす。


「えええええええええええ???」


ブッ!


ワイヤーが切れ俺は船から落ちた。

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