塔の役割
「いらっしゃい、よく来たね。歓迎するよ。」
階段を上りきった先には、一人のおじいさんが優しげな表情を浮かべて立っていた。身長は少し高めでスラッとしている。
「あの……」
「お茶の準備をしてあるから、話は一息つきながらにしよう。さあ、こっちだ」
搭の頂上には何軒か家が建っていて、『休憩所』のように噴水や暖炉があった。そして、何種類か自然も根付いていた。
私たちはおじいさんに案内されるままに、中央に設置されている円形のテーブルを囲むかたちで設置されている椅子に座った。
おじいさんは家に戻り、少しすると紅茶とクッキーを持ってきてくれた。
おじいさんが淹れてくれた紅茶は優しい香りがしていて、美味しくて、今の自分が欲している温度だった。
「さて、質問とかがあるなら答えるよ」
私たちは顔を見合わせ、どちらから質問するかを、何となく、目で話し合った。
「じゃあ俺から。この搭はなんなんですか?」
「んー……この搭はね、神様が生き物に『余生は楽しく、なにも悩まないで過ごして欲しい』って、造ったところなんだ。昔の人たちはね、40年ちょっと生きたら、動けるうちにこの搭を上ってたんだよ」
まあ、文明が進んでないからそうなるよね。しかも休憩所の存在についても頷ける。でも、神様が実在した証拠があるんだ。
「見た目に反して、私たちが上ってきた時間は少なかった、それはなんでなんですか?」
「それは、搭を上る人に合わせて、休憩所で休んでいるときに上層部の休憩所に送られるようになっているからだよ。あと、ここでは空腹も疲労も感じずらくなってるんだ」
凄い親切設計。……この世界には、まだ神様がいるのかな。
「頂上に来る途中に話してた、塔の壁の透明度については?」
「あれは、単純にこの高さまで来ると外の景色が綺麗だから。もちろん下層でも景色は綺麗なんだけど、地上から塔の内側が見えるのが嫌な人もいたから、下層の壁には色を入れたんだよ」
そういえば、階段の途中で夜を迎えたら、とても寒かったんだけど、あれはなんでだろう。
「さて、私からもいくつか質問していいかい」
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