ヒストリ・エイジ!①邪馬台国の卑弥呼さま!
伊東あやみ
第1章学校イチの秀才
2学期も終わりに近づいた12月の金曜日。外は少し肌寒い。6-Bの教室では、灰色の髪。下の方でゆるく結んだ2つ結び。前髪は、青のピンでとめ、ピンクのメガネをかけている女の子がいた。
「木下咲良」
「はーい」
今、私にとって最高にいや~な時間。なぜなら、
「木下、今日も赤点、だな」
先生が、すこ~し(いや、けっこう?!)怒り気味で言った。
そ~っとテストに目をやると、
歴史まとめテスト 木下咲良 10点
と、書かれていた。
「ま、まさか、また今日もほ、補習...ですか?」
私がおどおどしながらも先生に聞くと、
「あ・た・り・ま・え・だ・ろ」
と、笑顔だけど、怒りの炎が燃えている目で、言った。
「で、ですよね~...」
トボトボと自分の席に戻ると、これまたイヤミな前の席の幼なじみの、緑川勇利、通称ユーリが、
「ふーん。まーた下がったんだ~」
「む~...下がってなんかないもん!!」
「へ~...じゃあ、サクの手に持ってる10点のテストは、ほかのだれ かさんのなんだ」
ユーリは、上から目線の顔で言った。
う...見えてたか...。
えっと、私の前の席にいるのは、イヤミ大魔王の緑川勇利。少し茶色がかった髪。こ~んなにいやなやつなのに、他の女子からは、人気があるみたい。ま、私はこんなやつ、好きになんかなんないけどね!
そして、私のとなりにいるのは、ゆるっふわの日野ゆりあ。通称ゆりあ。ちょっと金髪みたいな髪。さっきのユーリのことが好きなんだよね。2人、お似合いだな~。
つぎにユーリのとなりにいるのは、広報委員、委員長の一ノ瀨みより!通称みよちゃん。黒髪で、高い位置でポニーテールにしてるの。そして、赤いメガネをかけてるの。すっっごい情報通なの!
最後に、私は、学校イチの秀才!...だけど、だいっきらいな歴史以外はね!そして私が一番怒ってるのは、学校イチ歴史で頭がいいのは、ユーリだってこと!そして、私の幼なじみのユーリ。み~んな小学6年生!
「よっし、サク!放課後サクんちで、歴史の勉強、徹底的に教えてやるか ら、カクゴしとけよ...?」
あ、そうそうユーリって、私のこと‘サク‘って言うんだよねぇ。...ちょっと待って。今、歴史って言いませんでした?
「あ、あのぉ...カ、カクゴできないんで...お、おてやわらかにぃ...」
私は、オドオドした顔で言った。
ユーリ先生に歴史を教わったことは、過去に一度だけあるけど、すっっっごくスパルタだったんだよね...。あぁ、考えるだけでオソロシイ。
「は?なーに言ってんの。この前よりか徹底的に教えてやる。ありがたく思え。先生!木下さんは、おれが教えるんで、補修ナシで!」
「お、緑川、じゃあ、よろしく頼む」
う、うそぉぉぉぉ...。この時、私は、ジゴクの底に突き落とされた気がした。
放課後。
私とユーリは、学校からいっしょに帰っていた。
「ねぇ」
私はユーリに言った。
「ん~...、なに...」
私は今まで疑問に思っていても、ユーリに聞くことが出来なかったことを聞くことにした。
「ユ、ユーリ、あの、えと、その...」
「なんだよ」
「ユ、ユーリってさ、私といっしょにいて恥ずかしくないの?」
すると、
「はあ?」
ユーリが額にしわを寄せて言った。
「だ、だってさ、ユーリにはグリーンクラブってゆーファンクラブがあるし。モテるし」
ユーリには、緑川の緑でグリーン。ファンクラブのクラブで、グリーンクラブというのがあり、登録者数は、100人をこえてるんだよね。
「私なんかがいっしょにいたら、クラブの皆様にもうしわけないと...。しかも、私にはただただユーリの幼なじみというだけで、ユーリのトナリにいる資格なんて...もがっ」
いきなりユーリが、私の口をふさいだ。
「...っなんだよトナリにいる資格って...!」
私は、ユーリの手を口から引き離して言った。
「そ、そりゃあ、か、かわいかったり...。恋人だったり...」
...うぐっ。それ以上どういえばいいか...。
「じゃあ、おれのトナリにいる資格は、かわいかったり、恋人ならいいんだな?」
うーん、そーゆーことになるのかな?
「ならサク、お前はおれのトナリにいる資格があるから、心配すんな」
...え?どゆこと?
「う、うん」
ユーリの言っていることがあいまいで、よくワカラナカッタから、なんかスッキリしない。
「じゃ、行くぞ」
こくん、とうなずいた。2人そろって歩く帰り道。私はさっきの話のことが気になって、ユーリを見上げる。去年まで私の方が背が高かったのに、今年は3センチぐらいユーリの方が高い。昔は私の方が強かったけど、今はたぶんユーリの方が強いよね。だから、私の目は、ちょうどユーリの口元くらい。
「どうした?」
ユーリが急に見下ろしてきた。目線がぶつかる。さっきまでユーリを見ていたことが恥ずかしくて、ユーリから目をそらす。
「ベ、別にぃ!?」
私の顔がほんのり赤くなる。
「ま、いいけど」
それから、なんか恥ずかしくって、ユーリとしゃべれないでいると、
「サク」
「はいいぃ!」
急に名前を呼ばれてビクッとして、声が裏返る。
「...くくっ、な、名前呼んだだけでビクるなよ」
私が、笑っている彼の顔をのぞきこむと、なんだよ、と言って、彼はそっぽを向いてしまった。
(ふう~ん。そんな顔するんだ)
私は、最近ユーリの無邪気で子どもっぽい笑顔は見ていなかった。大人っぽい顔や、イジワルな顔しか見なかったなあ。
(大・発・見!)
「それで、もうすぐサクの家に着くよ」
...ぐわああ!そうだ!ユーリ先生に歴史を教わるんだった!
「うえ~ん。で、でも、赤点取らないように、が、がんばるっ!」
ピンポ~ン
「は~い」
私のお母さんの声。
「緑川です。木下さんと、勉強しにきました」
ガチャ
「あら~、わざわざどうも。勉強って、歴史でしょう?この子、歴史だ・け・は、ダメダメでねぇ」
ボブヘアーのお母さんがやたらと、だけは、を強調するので、少しイラッとくる。
「はい。そこはちゃ~んと理解しています。だから徹・底・的に教えますので、安心してください」
ひえええぇぇ!ユーリも、徹底的、を強調しないでぇ!
「そう?たすかるわぁ」
お母さんが安心したって、私が安心できないよぉ。(しくしく)
「あ!そうだわ!」
お、お母さん!余計なこと、言わないで!
「今日、金曜日だし、泊まり込みで咲良に歴史、教えてやってくれないかしら!」
ぐああああぁ...。2日3日ジゴクがつづくのー!
「いいんですか?」
「えぇ!モチロン!」
「...でも、お母さんが...」
だ、だよね!ユーリのお母さんがいいって言わないと...。
「ちょっと待ってね!」
そう言って、お母さんが家の奥に入る。
(どうか、どうか、ユーリのお母さんが、ダメと言いますように...。神様。)
「今、サクが思ってること、あてよーか?」
なによ急に。
「ん~...おれのお母さんが泊まるなと言うように祈ってるだろ」
「なんでわかるの!」
ユーリって、人の心が読めるの!?
「なんとなく」
コワッ。
「勇利くん!お母さんから、オーケイでたわよ!1泊2日ね!」
ガーン。神様ぁ...。
「そうですか。ではよろしくお願いいたします」
ユーリがペコリと90度に礼をする。
こーゆー時は、礼儀正しいんだよねぇ。...学校と違って。
「勇利くんのお母さんが、後で着替えとか、持ってきてくれるって」
「分かりました」
うぅ...ジゴクの2日間。
「入って入って~!」
「お邪魔します」
お母さん、ノリノリ...。
階段を上り、2階にある私の部屋へ向かう。
ガチャリ
「ふう~ん」
「なによ、ふ~んって」
「別に」
えっと~、ランドセルはここで、ぼうしはここ。
「さぁ~てと、サク、は・じ・め・る・よ?」
ユーリが部屋の真ん中の茶色の長方形の、テーブルの近くの座椅子にすわる。
うぐっ。家の前でがんばるって宣言したけど、今もう逃げ出したいっ!でも、赤点取りたくないし...。
「は、はいぃ」
私は、しぶしぶユーリの向かいにすわった。
「まずは、縄文時代からだ」
私が、どうしたらいいのか分からなくって、ボーっとしていると、
「ノート3ページ!教科書7~9ページ!」
と、言われて急いでめくる。
「...縄文時代。今から1万2千年も前の時代のこと。狩りや漁を中心とした生活で、シカやイノシシなどの動物や魚、貝や木の実などを食料としていた。そして人々は、食料を煮炊きしたり、蓄えたりするための土器を作り始めた...」
私は、ノートと、ユーリ先生の声で復習する。
「先生!動物は、石や骨で作った道具でとったんですよね?」
「そうだ。よく分かったな」
よし!
それから、2時間。縄文時代の勉強があった。
「...まとめ。縄文時代の人々は、狩り、漁などで、食料を得ていた。縄文土器を作り、煮炊き、蓄えることができた。竪穴住居に住み、多くの人々が協力して暮らすようになった。...よっし!これで、縄文時代の勉強は終わり!」
ふぅ~...やっと終わった。
「よくがんばったな!サク!」
ユーリのとびきりのさわやかスマイルを向けられて、
(ドキッ)
と、胸が鳴った。 (...え?今、なんでドキっとしたんだろ。)
「あ、サク、明日は弥生時代の...」
ユーリに顔をのぞきこまれて、
ボッ!
と、私の顔が赤くなる。
(は、はずかしいっ!)
「ちょ、サク!?」
ユーリが止めるのも無視して、玄関から外へ駆け出す。
タッタッタッタッ
私は、近くの公園に駆け込んだ。ここは昔からある場所で、何かあると、この公園に来てたんだよね。私は、ある遊具に向かった。
「おばさん!サク知りませんか!」
「え?咲良なら、外に行ったわよ...って、なに?サクって?」
え、外かっ!おれは、おばさんにサクと言ってしまったことも分からないほどサクのことで必死だった。
「ありがとうございます!」
おれは、サクを見つけるために、外に出た。
ギィーコギィーコ
私は、気持ちを落ち着かせるために、ブランコをこいでいた。
「さっきの...何だったんだろう...」
私の考えていることとは全くちがうことをしてしまった。私の中の何かの感情が、そうしてしまったのかな?
まさか...
love?
いやいやいやいや!まさかユーリに!?ナイナイ。
「...サク!」
「ユーリ!?」
「やっぱりここか。ほら、帰るぞ」
ユーリが私の手をにぎる。彼の手からの体温で、すっかり冷えてしまった体が、しだいに温まってくる。
ユーリは、私の前を歩いて私を引っ張ってくれる。恥ずかしくて、私の顔が真っ赤になる。チラッと前のユーリを見ると、少し見える両耳と、私の手をにぎってくれている手が、真っ赤になっていた。
(ユーリが、テレてる!)
私は、何だかうれしかった。
「着いたぞ」
気が付くと、私の家の前だった。
「「ただいま」」
「おかえりー。...あら~どうしちゃったの~2人で仲良く手なんかつないじゃって♥」
「「え?」」
ユーリと目を合わせる。そして、手の方に目をうつす。そこには、つないでいる2つの手が。
「「...っ!」」
バッ!!
2人は手を離した。2人は、恥ずかしいあまり、目をそらす。
「「ご、ごめん!!」」
「息もピッタリ!」
カア~...。
「あ!そうそう、勇利くん、お母さん来て、着替えセット、和室に置いてるわよ~」
「は、はい」
「ユ、ユーリ!も、もう寝よう!」
「そ、そうだな!」
そうして、ユーリは1階の和室、私は、2階の自分の部屋に向かった。
順番にお風呂に1人ずつ入った。ふとんに入ると、今日の疲れが出たのか、すぐに寝てしまった。
「ユ、ユーリ!」
「サク」
あれ?ここは、...あの公園だ!
「ずっと、ずっと、す、好きでした!」
えっ、えっ、KOKUHAKU?いつの間にか公園にいるし、ユーリいるし、私告白しちゃってるし!
「...おれも...」
え?...しかもOKもらってるし!
ユーリは、どんどん私に近づいて...?
バサッ!
私はふとんをめくって起き上がっていた。
ヒストリ・エイジ!①邪馬台国の卑弥呼さま! 伊東あやみ @413ayami
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