マイクラ建築家は凄い!
冒険者達を監視付きで追い出す。
ぶんどった武器とかは、雑然と積み上げておこう。
『合計で400ポイントが入りました。現在保有するダンジョン・ポイントは、802ポイントとなります』
先ほどの戦闘において、レベルを上げなくてもモンスターは進化したり、スキルや魔法を獲得する事がわかった。
これは、特定条件を満たせばスキルや魔法となって、経験が結晶化する、という事を意味する。
例えば剣術を習っていないけど、剣を振るい続ければ、我流でも剣技を覚えるという具合よ。
そして、そのスキルを覚える過程は、何もそれ一つだけという訳ではない。分かりづらくて回り道となっても、分かりやすい道を選ぼうが、そのスキルは習得できる。
または、違うスキルを覚える可能性もあるでしょうね。回り道をするという事は、そのスキル以外にも通じる知識に、触れるという事だからね。
「臓物スライムに命じる。ダンジョン内のモンスター達に、魔力操作の方法を教えよ」
『臓物スライムがスライム系統のモンスターと、情報を共有した事で、スライム達が魔力操作を獲得しました。パラサイト・スライムがモルモット達に寄生し、魔法操作を強制獲得させました』
「パラサイト・スライムに命じる。私に魔力操作を教えなさい」
パラサイト・スライムが近寄り、水っぽい触手を伸ばしてくる。
その触手に触れると、体内に異物が侵入して来るような感覚がして、とても不快だったけど根性で堪える。
しばらくすると、徐々に魔力の感じ方が何となくわかった。
「おお? ……不思議な感じ。まるで、使っていなかった回路や神経が、身体の奥にあったかのようだわ……」
いや、実際にあったんでしょう。魔力があり、それを感じられるんだから。
「このオーラを、身体の内側に収めれば、身体が強化され、頑強になるんだったわね」
女魔法使いは、身体強化魔法って言ってたか。
右手のオーラを凝縮させ、漏れ出ないように注意しつつ、纏わせていく。
その右手の圧縮した魔力を手本とし、手首、腕、肩と移動させるように、身体中のオーラを身に纏う。
部分強化から、全体強化と呼ばれるモノよ。
パワーの底上げ、つまりドーピングってこと。
禁止指定魔法って感じになったら、ほとんどの冒険者がドーピングに頼って戦うため、ダンジョンの攻略がままならなくなる。ま、薬物と違って、魔法を消せば効果は一瞬で消えるんだけどさ。
でも、このドーピングした後に来る、多幸福感っていうのかな?
力がみなぎってくる感じのせいで、この腕力さえあれば、何でも出来そうな気がするのよね!
この壁とか、殴ったら壊せそうだし!
あ、でも、そういえばコアが、壊れる可能性があるって言ってたよね?
殴ってもし壁に穴が空いたら、部屋が崩落して死んじゃうかも?
……うん、やめとこ。
生き埋めはちょっと嫌な死に方だし。
気を取り直して、妖精を二体召喚。
本に擬態してもらうも、使い古したままの状態で再現しやがった。
本を使い古す前の状態を教えるも、よくわかってないみたい。
私の言葉ではイマジネーションが湧かないのか。
妖精に直接、思い描くモノを見せるには……どうしたものかな?
妖精って霊的な存在だから、私の魂とリンク出来ればいいはず。でも霊感はないから、憑依しろとかはちょっと無理。
……私の魔力と妖精の魔力を、繋げられれば、魂にも届くかも?
体力や魔力って、普通は見えないんだし?
精神力を変換して魔力が得られるらしいし?
魔力が繋がれば、なんとかなりそう。精神は魂から来ているという、私の考えが合っていればだけど。
まず、妖精を近くに呼び寄せて、魔力のオーラを放出してみる。特に変化なし。
次に、オーラを妖精に向かって出してみる。首を傾げるだけ。
次、妖精に魔力を放出してもらう。
むぅ、妖精から漏れ出る魔力に触れても、魔力の違いは分からない。
ならば、パラサイト・スライムに受肉してもらおう。
妖精って基本的には草や花に受肉しているから、実体化しても魔力がダダ漏れする事はない。
妖精や精霊って、天使や悪魔と同じ精神生命体だからね。
魔力や魔法の扱いに長けているけど、魔力がダダ漏れだとそれも激減するっぽい。監視用の妖精達が、まさにそう。受肉してないから、魔法の持続性が低くなってるの。
ダンジョン・コアで召喚した妖精は、受肉してないままとなるので、めっちゃ弱いのも仕方ないって事よ。
特徴として、豊かな森の草花に住まう以上、外の世界には結構な数がいる。冒険者達の格好を見るに、大規模な自然破壊が行われている可能性は低い。だから自然豊かな土地が多いと推測も出来る。
ダンジョンから武器が出る以上、強化素材もダンジョンから出土するので、外に住む元々のモンスターは増えすぎない程度しか、狩られていないらしいし。
異常発生する事が稀で、例えモンスターが大移動とかしても、ギルドや貴族が動くため、冒険者や兵士はすぐに集まるとか。オマケにダンジョンから出る武器もあり、それで倒せないような普通のモンスターは、ほとんど居ないらしい。
まぁ、群れのボスとかは別なんだとか。
「妖精に命じる。パラサイト・スライムに受肉しろ。パラサイト・スライムに命じる。妖精を受け入れ、肉体の主導権を渡すようにしろ」
パラサイト・スライムに妖精が近付き、憑依して受肉が完了した。
不定形って、本当なら移動も儘ならないんだけど、核もあるし妖精も宿ったしで、より洗練されたフォルムとなったようだね。
外見的特徴は受肉したからか、妖精よりの格好で、羽根が生えた小人。だけど、半透明なのはスライムだからかな?
『受肉が完了しました。ジェル・フェアリーを登録しました』
あー、はいはい。どうでもいいっての。
「ジェル・フェアリーに命じる。私に寄生し、魔力を同調させて、頭の中を見ろ。この本の本来の形を覚え、擬態してもらう」
ジェル・フェアリーは頷き、私の指先に触れる。
一度寄生させたからか、すんなりと受け入れられた。
よその魔力が入って来るけど、寄生しているからか、すぐに違和感はなくなる。
よしよし、順調ね。本の形を強く思い描くとしようかな。
しばらくして通じたのか、ジェル・フェアリーが離れ、ダンジョン・ブックに擬態した。
ストロング・サイクロンジェット・アームストロング砲か、完成度高ぇなおい。
ん!? 開けないぞこれ……。
情報の容量的に、外見だけしか擬態出来ないって事か!
それなら、妖精をもっと召喚しよう。
あれだよ、あれ。一体を社長とする事で、擬態した本を会社とするなら、内部を細かく部屋で区切り、班ごとに仕事を割り振らせていくんだよ。
いやね、ダンジョンに例えてもいいけど、分かりづらいからさぁ。
妖精を百体召喚!
『警告。内部の消費魔力を超過します。フロアを作成するか、魔力の上限を増やすか、部屋を個別に作成して下さい。警告。制限により通路作成が出来ません。警告。制限によりフロア作成が出来ません。警告。現状では魔力の上限は増やせません』
……ちくしょう!
えーと、10メートルほどの立方体な小部屋が100ポイント、25メートルの立方体みたいな中部屋250ポイントか。
てゆーか、通路ないんかい! 部屋は地続きみたいな感じで広くなるのか?
まぁいい。妖精を二十体ずつ召喚してみて、ダメなら部屋を拡張させるかな。
「この本に宿れ」
妖精達が次々とジェル・フェアリーが擬態した本に入っていく。
コアで魔力を確認すると、消費魔力は増えていたのが徐々に減ってきている。
おそらく、ジェル・フェアリーが妖精達に寄生したか、情報を共有して、擬態した本の部品ごとに憑依し、仮の受肉を果たす事で、魔力を安定させたのかも。
パラサイト・スライムの核に妖精が憑依したとは言え、核以外は実体化する上で姿形を安定させるだけのモノ。人間でいうなら、服に等しい余剰部分。擬態してもそれは変わらないようね。だから部品ごとに細かく区切る事で、妖精達が宿った状態となっているんでしょう。
更に二十体ほど追加召喚……。成功!
よーし、小出しで召喚と憑依を繰り返すぞ。
……そんなこんなで、計百体の妖精が宿ったレプリカのダンジョン・ブックが完成した。
「内部を解析し、正しいページに正しい文章を表せ」
本を開くと、一番最初に開いた記憶通りに、ぐちゃぐちゃだったので、正すように妖精達へ命じておく。
かなり時間が掛かるだろうから、マスター・ルームを改装しようっと。
妖精達を総括するジェル・フェアリーに、非常食を一つ与えて分裂を促す。
分裂したジェル・フェアリーを本に擬態させ、レプリカのダンジョン・ブックを更にもう一つ複製させる。
ジェル・フェアリーに命じ、気絶しても擬態を維持できるように、魔法を調整させておく。
そのレプリカを壁にぶつけ、気絶させた後に妖精を一体だけ宿らせ、真ん中から開閉が出来るようにする。
表紙やページを開閉させつつ、宙を飛んでもらう。
「コアよ。鑑定してくれ」
『了解。鑑定中……。ブック・フェアリーを登録しました。訂正。鑑定したモンスターを、ブック・フェアリーに改めました』
本が勝手に動いたりするのは、ポルターガイスト。物に霊が宿るのは、九十九神っていうんだけどね。
擬態魔法と誤魔化しの魔法を併用させ、本の状態を維持すれば、一冊の本と認識されやすくなるはず。その本に霊でもある妖精を宿すと、本が意思を持つように見えるだろう。そんな推測を重ね、実践した結果、コアを騙す事に成功したわ。
これで下準備が三割ほど終わった。
ただ、やっぱり進化の法則にも制限があるみたい。
キッカケはプレート・スライムだった。
普通なら変形しただけのスライムで終わるはずなのに、流体制御のスキルを獲得したからか、単に平べったくなっている時間の長さが、進化条件だったのかは分からないけど、名称が変わったりした。明確に通常のスライムとは違う個体となったのよ。
だからと言って、プレート・スライムはダンジョン・ブックが破損してるので、召喚は出来ない。
このままだと、種類だけしか増えない事となる。それではあんまりだ。
そこで、妖精の擬態魔法によって本を複製してみる。単に擬態しただけでは、ただでさえ魔力を垂れ流している状態であるため、現実味がないモノとなるので、重量感を出すべく受肉させ、能力面も強化させていく。
受肉したら、ずっと実体化していられるので、擬態魔法が解けにくいし、魔力の制御率も向上するから、長時間変身していられる。
ただ、妖精はスライムと違って簡単には増えない。
そこで、妖精をスライムの核に受肉させ、本に変身させる。が、それだけでは身動きすら取れない。擬態している間は動けないので、もう一体の妖精をスライムのゼリー体にでも憑依させ、動けるだけのリソースを確保する。
ここで重要なのは、モンスターの姿形だ。
早い話が、ドラゴンは召喚出来なくとも、この世界には存在するし、ダンジョンにも居る。ただ、名称だけでどんなモンスターなのかが、想像できるという例は少なく、姿形だけでも最低限は似せる必要があるのだ。
似せる事で、ダンジョン・コアにその存在を認識させられる。容姿から逆算させ、特定のモンスターを登録させるという訳だ。
進化条件を満たせば勝手に進化するとはいえ、満たすにはそれなりの時間が必要となってしまう。
制限があるこのダンジョンでは、登録されたモンスターは再召喚が出来ない。ダンジョン・ブックが破損しているためだ。
でも、だからと言ってモンスターの種類を、増やさない訳にもいかない。
認識させられれば、本が直った時に使えるようになるからだ。……保存する有効期限を過ぎていなければだけど。
次にいこう。プレート・スライムを増やす。
モルモットがいつの間にか、二体から二十六体に増えていた。
モルモットを餌として、プレート・スライムに与える。
どうも、餌の量に比例して、分裂する速度が早まるみたいね。
とりあえずは部屋の床一面に、プレート・スライムを敷き詰めていくか。
プレート同士が結合し、大きなプレート・スライムとなったみたいね。核を複数持つから、簡単には倒せないかも。
そんでもって、土をプレート・スライムの上にばら蒔く。勿論、プレート・スライムには戦闘よりも、敵の転倒や動作の妨害を主にやってもらう。
足や重心が移動した瞬間に、足元の床が動いたら、攻撃動作や防御動作は鈍くなるものよ。踏ん張りが効かないし、体重を掛けている足の方へと倒れ込む。
けれど、敵と違って、プレート・スライムの足場は、私の移動補助に使える。
早い話が、足を動かさなくても、床の上を移動出来るのよ。
スライドっていうかスウェーする感じで、氷の上を滑るように、スライム達がウネウネして運ぶ。
そうそう、土をばら蒔いたのは、炎や氷の魔法に対する、耐性を付けるためでもあるのよ。ま、レベル1のスライムには変わりないから、念のためなんだけど。
これで、なんちゃって的だけど、土の操作が出来る。
合図一つでコケさせたり、入って早々で追い出す事も可能よ。
『プレート・スライムの一体が、リキッド・スライムに変化しました』
液体のスライム……ってか、そこは変化や変形のくくりなんだ。あれ、でも個体名が別れてる。
まぁ、魔力操作で消費魔力を節約してるから、問題ないかな?
和式便所の向かい側に、土を被せたプレート・スライムで大きな風呂桶を作り、中へリキッド・スライムを入れる。
リキッド・スライムには、冒険者にまとわりつく事だけを、優先的に命じておこう。
そう、ローション風呂よ! ヌメってしまえば更にコケるって寸法よ!
これでトイレか風呂、どちらか一方に冒険者が頭から突っ込むという、イタズラじみたトラップが完成したわ。
あ、和式の方にもリキッド・スライムを入れておこうっと。聖水とダブルで精神的ダメージを与えてやらぁっ!
え? 発想が幼いって?
リキッド・スライムを使って溺死やら、体内に入り込み、内部から冒険者をヤろうって?
はっはっはっ、それじゃあメリットが少ないって。
骨の髄までしゃぶり、利用できなくなったら捨てるのよ。単にぶっ殺すのは簡単だっての。
殺すよりも生かす方が難しいんだから。
あと、恨みとかの禍根も残りにくいはずだし。
次はブック・フェアリーを増やす。
大元がスライムに受肉した妖精なので、モルモットを餌に出来る。ハリー・ツイッターには襲い掛かる本があったりするからね。ん? 名前違ったっけ?
十冊の、もとい十体のブック・フェアリーに、分裂して増えた。
この本が、私の最高戦力よ。
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