腐ってやがる……!

 男には他言無用と念を押し、実際に締め上げを体感させてから、外へ解放した。

 迷惑料代わりに、兜と甲冑は貰った。剣は見逃してあげたわ。

 だって、帰り道にも野生のモンスターが出るって話なのよ?

 さすがに武器まで取り上げたら、道中でくたばるかもしれない。それなら生かした意味がないし。


『冒険者の撃退に成功しました。しかし減点され、100ポイントが加算されます』

 ……まぁいい。

 やるべき事があるし。

 ズバリ、リフォームです!

 もう安全地帯の効果はない。次はないのだ。

 生き延びる為にも、残りのポイントで出来る事を考える。


 手元にはある意味使い古した本。

 そろそろ新調したいところだけど、この本はコアから召喚が出来ない。

 コアと本はどちらも重要。その二つを私は雑に扱いすぎた。

 本の中身がきちんと読めれば、もう少しマシに立ち回れるでしょうね。


「召喚出来るモンスターは……」


 スライム、妖精、モルモット、ホムンクルスのみ。

 モルモットは早い話がただの鼠ね。実験の被検体として、良く使われる鼠さん。1ポイントで十体召喚される。

 ホムンクルスは、自分の複製体のようね。能力値は本体次第と博打要素が高い。50ポイントで一体召喚可能。


 モルモットを餌として、スライムを増やすか?

 いや、待て。ゾンビ欲しい! 腐敗臭とウイルスを撒き散らして、冒険者のやる気を削ごう。

 鼠のゾンビ、脳ミソはスライムで代用すれば、一体が二体へと急に数が増える事となり、苦戦するはず。


 ちょっとしてみよう。内装はそれからでもいいや。


 白い鼠達がキョロキョロしてる。

 十体が二列横隊で、私の指示を待っているようね。

 それじゃあ、早速で悪いけど、死んでちょうだいな?

 五体をスライムの餌とし、一体を本で叩き潰す。

 残る四体は特にびっくりしたりせず、指示待ちのまま。

 本をどかすと、鼠は舌を出して喘いでいるように見え、どうみても死にかけだ。


「コアよ。死にかけの鼠をゾンビ、もしくはスケルトンに登録したい」

『了解。鑑定中……。ゾンビ、スケルトンの登録を了承しました。以降はゾンビ、スケルトン、霊魂の召喚が可能となります』


 よしっ、上手くいった!


 ゾンビ・ラットは気だるげに待機している。

 そこで、早々とスライムが二体に分裂したので、一体の核をゾンビ・ラットの頭に移植する。スライムは口から入り、ラットの腐った胃腸が膨らむ。腹部がモコモコすると、足が勝手にバタつくみたい。次第に頭部が張り詰め、涎が飛び散る。あ、肛門からスライムのゼリー体が出てきた。かと思ったら収納された。

 ……どうかな?


「コアよ。このラットを鑑定して」

『了解。鑑定中……。スライムがゾンビ・ラットの体内に寄生しています。新しいモンスターとしてパラサイト・スライム、スケルトン・ラット、スライム・ラットが解放されました』


 よーし、順調ね。戦力の基本は数がものを言うわ!

 鼠算式に増えろ! 餌はお前等自身だ、共食いして増えていけ!

 全滅してもゾンビ・ラットが四体に増えるはず。ダメならスライムの餌ね。

 思案していると、四体のモルモットのうち、二体が死に、スケルトン・ラットが二体生まれた。

 ……まぁ、良いわ。


 ちょっと寄り道したけど、内装をもう少しなんとかしましょう。

 囚人セットを元寝床に据え付ける。

 非常食と水、ロープはその隣。

 一人で土を退かすのって大変。でも手の空いているモンスターは鼠達だけだから、猫の手ならぬ鼠の手すら借りれない。


『お知らせ。新種のモンスターを、独自の方法で生み出したため、ボーナス・ポイントが加算されました。現在のポイントは595ポイントです』


 お、ポイントが増えたか。ラッキー!

 でも相変わらず少ねーなぁ。

 そう言えば魔力が餌だけど、この部屋、モンスター密集度的に、そろそろヤバいかな?


「コア。魔力を生産するアイテム、モンスターはいる?」

『魔素を放出するプラント系モンスターの召喚は、現在制限が掛かっているため、実行できません。また、アイテムとしてはマジック・ポイントを回復する道具のみ、ポイントを消費して召喚できます』

「アイテム召喚のポイント消費数は?」

『制限が掛かっているため、各種低品質となります。いずれも一個で100ポイント消費します』


 低品質なのに100ポイントも掛かるって、価格もなんだかおかしい事になってるみたい。

 どんな制限だよって話よ、まったく。

 とにかく、論外ね。

 低品質ならもう少し安くなっててもおかしくないはずよ!


 次に、使えそうなスキルを見ていく。

 魔力操作、幸運度アップ、モンスターの指導効率の最適化、思念共通、物理攻撃無効、毒生産、錬金術、流体力学の適正化、挑発成功率アップ等々、色々ある。

 でもほとんどが高い! 却下!


「安いのを表示」

『了解』


 体力増加、異世界知識付与(文献)、世界言語共有化、別世界文献(物資)、濾過装置(簡易)の自作、日曜大工(初級)、サバイバル技能(簡易)、呪文詠唱(初級)、格闘技(空手、合気道、柔道を含む。どれも初級)剣道(初級)、ブービー・トラップ作成(簡易)等々。


 どうも制限の掛けすぎで、スキルまでバグってらぁ。

 ろくなモノがないじゃん。

 異世界と別世界の区別って何よ?

 文献や物資とかも訳わかんないし……。

 もうこうなったらヤケよ、ヤケっぱち!


 ……まったくもって、ツいてないわぁ。

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