サーモン
冒険者をノシた。
ガラス玉を回収し、アクセス。
「どの程度のモノまでなら、ポイントに変換が出来る?」
『警告、ポイント変換機能にエラーが発生しました。強力な武器や防具は変換できません。警告、召喚したモンスターのポイント還元が出来なくなりました。警告。フロア作成時に大部屋が使用できなくなりました』
「ひでぇ……質問に答えないバグもあるのか。……血と聖水をポイントに変換」
『選択されたものの、質と量を鑑定開始。……各1ポイントとなります』
「承認。現在のポイントを表示せよ」
『了解。冒険者の捕獲に成功。しかし、マスター・ルームまで侵攻されたため、減額となります。合計102ポイント』
えぇー、少なっ!
「初回ポイントは?」
『解答。使用期限を過ぎたため、消滅しました』
…………え、ちょっと待って。初回特典であるダンジョン・ポイントに、使用期限なんてあるの!?
いや、これもコアに八つ当たりした罰か。
自業自得という事で諦めようかな。
よしっ、モンスターを召喚してみよう!
さっさとしなければ、冒険者が起きてしまい面倒だし。
「妖精とスライムを一体ずつ召喚」
『妖精の召喚には1ポイント、スライムの召喚には10ポイント掛かります。召喚しますか?』
「……
……スライムよりも妖精の方が弱いのかぁ。
まぁ、分からなくもないけどね。スライムが大魔王になったりするらしいし、キングスライムとか上位には居るだろうし。
対して妖精はあまり戦ったりしない。魔法が使えても逃げてしまう事が多い。
ただ、妖精の一種には、スプリガンとかいう宝を守るのがいるけど、ポイントが高いから召喚すら出来ない。
「水1リットルとブロック型の非常食セットを4×7=28個。囚人セット--簡易トイレと簡易ベッド付き--を1個、100メートルのロープを召喚」
『水と非常食セットは56ポイント、囚人セットは5ポイント、ロープは1ポイント。合計で62ポイントとなります』
「承認する」
残り29ポイント。
召喚したモンスターはひとまず置いといて。
冒険者の肘、膝を折り曲げてから、四肢を縛る。
どうしてこうするのかというと、例えば握力は握る力の強さ、故に数値が高い場合が多い。でもその反対は?
握りしめた拳を掴まれたら、開く事はほぼ出来ない。何故なら、掌側には肉があるけど、手の甲には肉が無いから。
だから力が出ない。だから拳を作ると骨があるのが分かる。
とまぁ、そういうことよ。
更に四肢を後ろにして、身体を仰け反らせるようにし、宙吊りにして膝や肘を一点で吊し上げてしまえば、まず拘束から脱する事は出来ない。縄抜けの達人なら抜け出せるかもしれないけどね?
ま、宙吊りは無理だけど、亀のようにひっくり返しておこう。
これでよし。
次にスライムを出入り口の真下へ配置する。
これは不意討ちの罠。体面積を広げて土を被せてしまえば、完成。先ほどの摩擦係数を利用したモノよ。
まず一歩目、ないしは二歩目で必ず床を踏む。踏まれて次の足が出る際に、スライムが土ごと動く事で、バランスを崩させるの。
動かないままでいる上、パッと見た感じはモンスターがいるようにも見えない。よしんば感知されても、雑魚だから見向きもされないはず。
転倒先は和式便所を狙う。聖水で確実に精神的ダメージを与え、怒らせるように仕向ける。
キレたら正常な判断が出来ない場合が多く、戦闘の主導権を握れるから有利となる。
怒ってこちらに向かってくるというのがミソ。撃退する明確な理由付けも簡単よ。
こちらをどんなに悪と罵ろうと、命
タマ
を取りに来ているのはそちら側ってね。
ま、向かってくるなら、実力と策で叩くだけだし。
スライムには悪いけど、転ばせるだけだから、経験値とか入らないだろうね。ま、レベル1のままなら誰も脅威とは思わないでしょうから、私的にはいいんだけどさ?
餌は魔力や聖水、埃とかよ。
妖精は捕らえた冒険者の監視よ。
妖精は見える人と見えない人が明確に別れている。基本的に感受性の高い子供にしか見えないの。
子供の頃は見えていたのに、大人になったら見えなくなるとか、そういう例もあるくらいだし。
また、八百万の如く、自然の一部という見方もされているわ。主に森を住みかとしているので、余計にね。
そこから亜種としてエルフが生まれ、人間と関わっては痛い目に遇わされたり、奴隷として売られたりされる。妖精も金の鉱脈を探し出す為に利用されてきた。
姿を誤魔化す魔法や物に擬態する魔法をデフォルトで持つ。
物に化けるのは主にイタズラ目的のようね。
水溜まりを作り出す魔法を、知っている個体もいるみたい。
監視しやすいよう、縄に擬態してもらおう。あまり複雑だったり、自分よりも大きなモノには擬態が出来ないらしい。
妖精も餌は魔力。というか、基本的にダンジョンのモンスターは魔力を餌としているみたい。
魔力が餌って、ちょっと都合が良いけど、気にしたら負けよね!
「妖精を四体召喚」
手足の枷、それと首輪よ。
妖精が擬態したロープが小さくなっていけば、手首や足首が折れるか、最悪の場合は切断されてしまうかもね。
「起きろ」
敢えて、腹に腰掛けようっと。
「いでででっ! ひ、肘と脚がいてぇ! あと重い!」
「妖精さーん、鼻フックお願いしまーす」
妖精が男の鼻に両手を突っ込み、めくるように引っ張る。
わぁ、変な顔。
本当なら体重をかけて、両腕と脚を折ってやりたいところだけど、それだと利用価値がほとんど無くなる。むしろ回復させる手間を考えると、マイナスかもしれん。
ギャーギャー煩いままだと話が進まないので、ある程度したら妖精を止めよう。
「ケツから言って、お前は今から私の犬ね」
「はぁ!?」
「黙れ。発言を許可した覚えはない」
妖精が鼻をペシペシと叩く。それだけで、男は言葉を呑み込んだ。
「まー安心しなさい。犬といっても今までのように、普段通りの生活は送れるから。毎日ここに通ってもらい、たまに私の手伝いをしてくれれば、それでいいわ」
「……よく、わからねぇんだが?」
「ん? そうね。具体的に言うと、冒険者として培った知識を、私に教えて。どんな職業があるのか、どんなダンジョンが有名なのか、どういう国があるのか、宗教や魔法、料理……。そんなところよ。あと、家で出たり、探索中に出たゴミを持って来て」
「ゴミを?」
「そう、どんなガラクタでもいいわ。妖精のオモチャには丁度いいでしょうしね」
「ここにゴミ出しに来ればいいんだな?」
「いやなら、より強い契約を施す。もしくは、死んで?」
「喜んでゴミ出しに来させていただきます!」
「ベネ(良し)」
はい、一連の会話は悪党が好んで使う手口ですよー。
本当の要求を呑ませるために、まずは軽くジャブを連打して撹乱。無理難題を押し付けておいて、相手が渋ったりしたら、簡単な事を再度要求する。
だって、それまでの要求に比べたら、圧倒的に簡単だもの。
今回、男は私の教えて教えてという要求を無視して、たんにゴミ出しに来るだけという、バカみたいな要求を優先的に呑んだ。
だって、教えるのはそれなりに手間だし、自分自身もよく知っておかないと、間違った事を教えてしまう。それは最悪の場合死に繋がるからね。
落とし所としての、ゴミ出しよ。
話の流れで契約済みとか思っただろうけど、実際には妖精の逐次交代と撃退ポイントが狙い。
コアの制限さえなければ、本当に手駒として使えるのだろうけど……まぁ、嘘も方便。
撃退ポイントが入らなくても、ゴミをポイントに還元すればいい。
ゴミ出しのお礼に、妖精が擬態したナイフとか送れば、拘束力は更に高まる。監視も強まる。
見聞きした事を他の妖精達と共有すれば、弱い妖精でも強くなれるかも知れないし。
ネックは擬態していられる時間が、今のままだと最大で六時間ほどだという事か。
まぁ、解けても男に張り付いていれば、妖精に気に入られているように見られるでしょうし。たぶん大丈夫でしょう。
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