しにかみ

@cocomeno

しにかみ

初めまして、死神をしている夜ミよみながと申します。死神とは生を持つ人間の人生最後の瞬間に立ち合い、未練なくあの世へお連れするのがお役目、もといい仕事でございます。最近は老若男女にかかわらず多く方が、昼夜も問わず生を終える時代になっています。世のニーズに合わせるように、死神もいろいろな変遷を辿ってきております。

時代の変化はいかなるときも、摩擦が生じ問題は起こるものです。一番最初に生じた問題といえば、ご存知ではあると思いますが「天使、悪魔」問題です。一般のイメージでは対立関係にあるのですが、初めは天使や悪魔という呼称はありませんでした。生者の反対の死者として天使も悪魔も同一視され、手の出すことの出来ない実態のない集合意識として認知されていました。しかし、死者の中でも生への渇望や怨念が強く、未練を断ち切れていないものが生者に手を出し、害悪として認知され始めました。

その際に、あの世の存在を一括りに害あるもの悪しきものと呼ぶのではなく、生者にとって悪しきものを「悪魔」、それに対の天という郷に使え害のない者達を「天使」と呼び分けることにしたのです。

人は見えないもの分からないものに恐怖心を抱き、自身を見失ってしまいます。だから、分からないものを呼称しイメージではありますが認知できるようにしたかったのでしょう。

この二つの分岐から幾重にも細分化され、幽霊や悪霊、妖怪、妖精、死神などたくさんの呼称を用いて認知されやすい形になっていきました。


その中でも死神は生ある人間に近く、生を感じるとこができるため老若男女問わず人気の職業となっています。もちろん、死神として働いているのは自身の人生を終え、死を迎えた人でございます。我が社では、生ある際に才能豊かで今後の見込みがある人間をこの目で見極め直接声をかけており、我が社の社員たちは言わば精鋭の集まりです。


......おや、不思議そうな顔をしていますね。私の話の中で理解し難い所があったでしょうか。

......いいやそうじゃない。なんで、そんな話を自分にするのか......ですか?


あ、まだ伝えてなかったですね。この度は死神としてあなたをお迎えに参りました。

そして、社長としてあなたをスカウトさせていただけないでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しにかみ @cocomeno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る