第9話おしまい
青空の中の月
健斗を欲しいと思ったのは好きだと思ったのは、ベッドに押し倒された高3のあの日から。
あの瞬間、葉坂くんなんていう存在はどこかに消えて、健斗とこのまま終わりまで行ってもいいと思った。意外と筋肉質な腕だった。あ、健斗も男だったのかと今さらながら気づいたの。その瞬間今までの彼の優しい行動を思いだし恋に落ちた。
ただ私はある可能性を危惧した。健斗はいつか心変わりするかもしれない。人は、なんでも簡単に手に入るとああ、こんなものかと手に入ったものを過小評価する。そういう風に扱われたくなかった。私は昔から健斗にお姫様のように大事に守られてきたからそれに慣れていた。
だからお姫様は城から脱走した。そうすれば王子様はいなくなったお姫様を血眼になって探してくれる。
大学を県外にした理由もそれ。
就職を機に戻ってきたのはもうそろそらこっちが好きという気持ちに耐えられなくなっていたから。
それに4年離れていたんだからこれで十分じゃないかという気持ちもあった。
ただ母とに健斗の住所を聞いても知らないと言われたのは驚いた。健斗のおばちゃんに聞こうかとも思ったけど、おばちゃんはすっかりボケてしまっていた。LINEで連絡するのではなく、直に会いたかった。何をすればいいか分からなくて手詰まりになった。
でもお正月には帰ってくるはずだからこの4月から12月の間は準備期間にした。
まず会社で、女遊びで有名な慎二に接近し、無事彼女となった。
慎二に女がいるのは元々知っている。むしろそれを狙って近づいたのだ。
そしてお正月。
実際はこの日が私と健斗の再会した日だ。
私は健斗に自分の家の住所を教えた。遊びに来てねと言ったら、もちろんと笑っていた健斗。
まだ私のこと、好きでいてくれてるのかな?
私はものすごい好き。
少し不安もあったけどそれは最近吹き飛んだ。
健斗が私の隣に引っ越してきた時。
わざわざ隣に越してこないでしょういくらなんでも。
ただ隣が私の家だと知っていたのに知らないふりで驚いたふりしていたのには笑えた。
そしてそれからもう自然と健斗を手に入れた。
途切れそうな意識の中、私を抱き締める健斗に聞く。
「慎二と別れるからさ…、付き合って」
「やだ」
そう言われた瞬間がつんと鈍器で頭を殴られた気分だった。
「もう結婚しようぜ?俺らどうせうまく行くに決まってるんだから」
私は笑った。笑いながらうなずいた。最高の気分だった。まるで世界を手に入れたような。
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