第7話あの日

あの日。私達の関係はそこからおかしくなった。

それが修正できないことなんて本当はどこかで分かってた。


高3の時の4月の中旬の日の放課後。

私は同じクラスで当時気になっていた男子、葉坂くんに図書室の前に呼び出されていた。

何なんだろ、話って。

階段をかけ登りながら考える。何か、変なことしちゃったのかな…。

葉坂くんは健斗とも仲が良く、二人が話しているのをよく見ていた。

葉坂くんはバレー部に所属していて、私は一回体育館でその練習の様子を見て葉坂くんを好きになったの。

待ち合わせの時間に間に合わないかもと思って急いでたから図書室の前に来た時には息切れしていた。

葉坂くんはもう来ていた。

「ごめん、遅れちゃって」

「2分くらいじゃん全然いいよ」

「それで、話って?」

「…」

葉坂くんは何も言わず私の顔を見つめる。

私も思わず見つめ返す。

その周りには誰もいなくて、静かだったから何だか世界に二人だけな気がして嬉しかった。

「…付き合ってくれないかな。高3のこんな時期にいうのもおかしいとは思うけど」

「もちろん!」

葉坂くんがまだしゃべっている間に勢いよく返事をしたから葉坂くんはびっくりしたように笑った。

その日は葉坂くんと一緒に帰った。ちょうどその日は葉坂くんの部活はオフだったから。

そして家まで送ってもらって部屋に荷物を置いたあと、すぐに向かいの健斗の家に行った。

「健斗!入るわよ!」

健斗の部屋のドアをノックもせずに開けると健斗はベッドの上で寝転がりながら本を読んでいた。

意外と昔から本の虫なのよね。

「桐華?どしたの?」

「彼氏が出来たの!」

「は⁉」

健斗は本を床に投げ飛ばして飛び起きた。

「誰と⁉」

「葉坂くん」

「あいつかよ、」

健斗はなぜか頭をおさえている。

そのまま、静かになってしまったため部屋の中が沈黙で満ちた。

「ちょっとなんで何も反応してくれないのよっ」

私は健斗の隣に座った。

健斗は私の顔をじっと見てくる。何だか目がいつもと違う感じだった。

見ている私が吸い込まれてしまいそうな目。

ぼんやりとしてしまったその瞬間、私は健斗にベッドに押し倒された。

「な、何するのよ!健斗!ふざけてるの?」

有無を言わさぬ強さで両腕を掴まれ、唇に噛みつかれる。

「…んっ、…健斗っ」

頭がくらくらして何も考えられなくなってしまいそうだった。

それでも健斗はキスをやめない。

手は腕を離れ、私の制服のボタンをはずし始める。

健斗は本気だ。

気づいた私はものすごい恐怖感に襲われた。

「…んー!んー!」

叫び声をあげようとしたけど唇をふさがれているからうまく声をあげれない。

なんとか必死に手で健斗の肩を押したけどびくともしない。

私、ようやく彼氏が出来たのに、その日に幼馴染みに犯されちゃうの?

目から涙が溢れて、足をばたつかせる。

やめて、何でこんなことするの⁉

無我夢中でばたつかせてた足は健斗の腹にヒットして、健斗はお腹をおさえる。その隙に私はベッドから立ち上がり健斗から距離を置く。

急いではずされたボタンを止め直す。

健斗は理性が戻ったのか、私に謝った。

「ごめん」

「…何でそんなことするのよ!こういうことしたいなら誰かと付き合えばいいじゃない!」

「…桐華とじゃなきゃ嫌だ」

「は⁉」

「俺は小さい頃からずっとお前が好きなんだよ!」

私はそんな告白、全然嬉しくなかった。

「…幼馴染みなのに、そんなの気持ち悪い」

その本音が健斗を傷つけたことは十分分かった。

健斗の顔を見たくなくてそもそもここにいたくなくて私は入ってきたときと同じように走ってこの部屋を出た。



その日の夜、私は葉坂くんに電話してやっぱり付き合えないと言った。

理由は、確か受験を口実にしたはず。

だって言えるわけないじゃない。あなたの親友兼私の幼馴染みにファーストキスを奪われました、なんて。

私ははじめてのキスは好きな人にあげたかった。


そしてその日から健斗を無視して無視して無視しまくった。健斗のおばちゃんや母にあなた達何かあったの?と聞かれたけれどただの喧嘩だと言った。

じゃあ、何で私はマンションで再会した時、その頃と同じように無視しなかったんだろう。

分からない。でもやっぱり幼馴染みに戻りたいと思ったんだ。

なのに今。私と健斗はあの日のようにキスしている。今度は私も止めやしない。


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