第6話恐怖
慎二の隣にいる女の子はメイクが濃くて派手な感じの子だ。
慎二、浮気してるってこと?
入り口から見えにくい席に座っているし、慎二達が座った席とも離れているので慎二は私の存在に気づいていないようだ。
「桐華?どうした?」
健斗の声にはっとする。
「涙目だよ、お前」
まばたきすると涙が溢れた。
「彼氏が、…別の女の子と一緒に二人でいるの、あそこに」
そう言って、あっちに気づかれないように慎二達の席を指さす。
「ねえ、この後どこ行く?ホテル?わたしんち?慎二んち?」
「どこに行ってもやること同じじゃん」
「慎二とやるとほんと気持ちいいんだよね~」
意識しなくても自然と彼らの声が耳に入ってきてしまう。
聞きたくない。
でも、聞きたい。
矛盾した思いが交差する。
「健斗…」
私は健斗の手を握った。
「怖いけどちゃんとあの人達の話聞くから、握ってて。お願い…」
健斗はそっと私の手を握り返してくれた。
「ねえ慎二、早く彼女と別れてよお。なんだっけ、ゆりかさん?」
「あー桐華?あっちはそう思ってんのかもしれないけど遊びだぜ?」
「なんか、前写真見せてもらった時に思ったんだけど美人だけど真面目で仕事人間っぽいなあって」
「その通り!結婚しても仕事していい?って聞かれたぜ俺。もともとあんな奴と結婚するつもりさらさらないけどそれ聞いてさらに萎えた」
「あはは」
私は下を向き、口をふさいで嗚咽が漏れないように泣くことで必死だった。
慎二の笑顔、ぬくもりを思い出して、さらに泣けてくる。
何で、こうなるの。
私は慎二が好きなんだよ。大好きなの。なのに何で。
何で他の女の子と一緒にいるの、彼女と抱きあうの。
「嗚咽、漏れないようにしてやろうか?」
健斗の顔を見上げるとあの時のような顔をしていることを気づいた。
でも顎をぐいと上向きにされ、唇を唇でふさがれたとき抵抗することも出来たのに、私はしなかった。
静かにあの日のことを思い出していた。
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