第5話居酒屋
「慎二。今日も飲みに行かない?」
今日は定時で終わった。前に飲みに行った時から3日くらい経った今日。かなりお酒に強い私はたいていこの3日おきくらいに誰かと飲みに行く。
ただ私は会社でも友達が少ないから、数少ない女友達にも今日はちょっと…と断られたところだ。
慎二が頼みの綱!
「あ…今日はちょっと…」
そんな私の願いもむなしく慎二には予定があるみたい。珍しいな、誘ったらほとんど来てくれるのに。
「ふーん、何かあるの?」
「親戚で集まりがあるんだよ」
「そっか。それははずせないね」
一人酒になっちゃうかもなあ。それはそれでいいかもだけど誰かと飲んでる方がやっぱ楽しいんだよな。
一回会社の外に出てざわざわとしている喧騒の中で誰か誘う相手がいないかと考える。
あ、そうだ。
幼馴染みで飲むっていうのはどうかな?
私が高3の時から最近再会するまで健斗からのLINEも何もかも無視してたから何気に一緒に飲むの初じゃない?
そうやって考えてるうちにそれがみるみるいいアイデアに思えて健斗にLINEを送った。
「今日今から飲みに行こうよ☺」
ただあいつ不動産会社に勤務してるから忙しいかもな…と思ったのもつかの間すぐに既読がつき、返信が来た。
「しょうがないな。桐華の頼みなら行ってあげるよ」
駅で待ち合わせすることになり、私が人混みの中、健斗を探していると
「桐華!」
健斗から見つけてくれたから私は健斗のもとに駆け寄る。
「どこにいるのか分かんなかった」
「俺はすぐ分かった」
にこっと笑いかけてくる幼馴染みを見ながら私は聞いた。
「どこに行く?」
「俺、行きつけの居酒屋あるんだけど行く?」
「じゃあそこに行こう!」
そうして駅の北口を出て10分くらい歩いたところに「のぶちゃん」という居酒屋があり、そこに入った。
店内は明るい雰囲気で人も多く、お座敷とテーブル席両方あった。
私達はお座敷で向かいあって座った。
お互いにビールと枝豆、海鮮丼を頼む。
「メニュー豊富なのねここ」
「いいだろ?俺のおかげたよ~」
「はいはい」
そんな無駄口を騒いでるとすぐに頼んだ品が来た。
「まあひとまず乾杯しよう」
「そうだね」
「乾杯!」
「乾杯!」
ビールのジョッキを合わせると一気に半分より少し多いくらいに飲む。
「いい飲みっぷりだね桐華」
「この前彼にも私はキングオブ酒豪だと言われたわ。それで私は突っ込んだの、女だわ‼って」
「え、女だったの?ごめん気づかなかったわ今のいままで」
「私も健斗のこと今ようやく男だと気づいたわ」
「え、でも俺、女装しても結構ばれなさそう」
「あー確かに」
「桐華も綺麗だからいけるよ男装」
「する気ない」
「そうでいらっしゃいますか」
「うん」
その時だった。聞き覚えのある声がして私は入り口の方を見た。
「ねえー私のこと、好き?」
「嫌いなわけないじゃん」
「好き?って聞いてるのー」
「…好きだよ」
その人達は店員に丁度案内されようとしているときだった。
何で。自分の目が信じられない。
でも心の奥底の私が告げている。
これが、現実だと。
「慎二…」
何で、慎二が他の女の人と腕を絡ませながらここにいるのよ…?
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