第2話幼馴染

昔から健斗が近くにいたからイケメンっていう要素をそれほど重要なことだと感じなかった。

周りの子が誰々君格好いい~って騒いでても健斗よりイケメンな奴もあまりいなかったからそう?みたいな塩対応になったし、そもそも私は気が強いタイプだから友達ともすぐ喧嘩してしまって友達が少なかった。

ただ、健斗だけは私の側にずっといた。

中2の時、仲の良かったクラスのリーダー格の女子と大喧嘩してクラスの女子全員から口を聞いてもらえないみたいなことがあった。

その時も健斗はいつものように隣にいて笑顔を向けてくれた。

ただ、その時、一回昼休みに聞こえよがしに「桐華、大人ぶってうちらのこと馬鹿にしてるよね」

「いつもイケメンの幼馴染みに色目使って助けてもらえていいわよね」

「桐華って確かに健斗に似合う美人ではあるけど性格歪んでるよね」

という会話をされた時は目の前が真っ暗になった。

違う。性格悪いのはまだしも、馬鹿になんかしてない。健斗に色目なんか使ってない。

違う。違う。違う。違う!

「桐華?」

私の様子がおかしいことに気づいたのか健斗が顔をのぞきこんでくる。

ここで健斗に泣きついたらまた陰口を言われるだろう。そんなの分かってる。でもなんかもう分からないけど耐えられなかった。

「健斗…、ちょっと来て」

声が震えてるのに自分でも気づいた。

健斗の腕をぐいと掴んで教室から走るように出る。

廊下にはそれなりに人がいて何事かという風に見られたけど自分のことに精一杯で急いで人目の少ない屋上に行った。

「桐華?お前大丈夫なのかよ?」

「大丈夫じゃない!」

言ってるうちに堪えてた涙が溢れた。

「辛いよ健斗…。私健斗に色目なんか使ってないよね?もう色々あることないこと噂されるのが嫌だよ…」

「俺があいつらに言おうか?くだらないこと言ってんじゃねえよって。俺かなり怒ってるよ今」

「…、健斗は私のこと助けない方が良かったよ。そんなことするからくだらないこと健斗まで言われちゃうんだよ」

口ではそんなことを言いながらも心では健斗までいなくなったらどうしようと怯えてしまう。

「幼馴染みだからって一緒にいる必要ないし」

やだ、一緒にいて。助けて。健斗。

「馬鹿」

「は?」

「馬鹿だね~桐華。俺お前のこと幼馴染みだから助けたんじゃないよ」

「じゃあ何で⁉意味分からない」

「俺は桐華だから助けたんだ。他の奴は自分で何とかしろって見捨てるだけ」

「やっぱあんたも本性性格悪いよね」

「うん悪いよ。だから俺ら性格悪いコンビ!」

「あっそ」

「俺はとにかく桐華の側にいる。いざというとき助けるって小さい頃から決めてんの」

口調はかなり冗談半分ぽかったけど見つめてくる顔は真剣そのものだったのを覚えている。


私は健斗を幼馴染みだと、親友だと思っていた。でも高3のあの日、全てが壊れた。

あの日のことを思うと今でも胸騒ぎがする。警鐘が鳴る。

ただ昨日話した健斗はそんな雰囲気見せてなかったからもう大丈夫なのかな。

忘れてくれたのかな。

私はやっぱり、健斗を幼馴染みだと思ってるよ。




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