中田さん(私)

 私はいつも、学校の帰りに駅シタのハンバーガー屋に立ち寄る。それも私ひとりだけで入店。

 チーズバーガーを注文するが、私の目当てはバイトの中田さんなのだ。


 中田さんはそのハンバーガー屋のバイトリーダーである。セミロングの髪はやや灰色に染めているが、落ち着いているが柔らかで甘い声、整った目鼻、そしてよく気がつき親切な男性だ。

 中田さんは聞き上手だから、私は出来上がりを待っている間よく愚痴を言ったり悩みを聞いてもらったりしている。

 JKという身分はこういうとき役に立つのだ。


 私は一度中田さんに

「やっぱりモテるんですか」

 と聞いてみたことがある。すると、

「そんなことないですよ。ハハハ」

 とやはりそのスイートボイスで言われれ、「ああ、なんて謙虚な人なんだろう!」と好意的に捉えてしまう。

 それくらい私は中田さんにゾッコンなのだ。

 彼は笑って付け加えた。

「でも、三年前に離婚したからね。今は三十路でバツイチさ」

 その時目の前が真っ白になった。

(408字)

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