14話 ライブ前のひととき

おい、兄ちゃん。お前んとこの可愛いのに、仕事を頼みたいんだが、できっか?」


8月に入り、ライブまで1週間を切った。こんなことを、あろうことか、肉屋のおじちゃんから言われたのは、チラシ配りをしているちょうど真っ最中だった。

「いやぁ、自治会で話題になってね、あのヒナちゃんたちよ。あれ、うちの街のイメージキャラクターにしたらいいんでねぇかな、って思ってよ」

俺の街の、イメージキャラクター。

「あんな奴らでいいんですか?」

当然の疑問だ。3人とも、少し個性が強すぎる、ような気がする。

「ああ、いいんだよ。すくねぇけど、これもあるって話だからよ!」

親指と人差し指で円を作るおじちゃんは、やけに楽しそうだ。

「とにかく、次のライブ見て、正式決定するってから。頑張れよ!」



「ということだ、ライブ、気合入れて行こう!」

「すごぉいです!さすが、プロデューサーです!」

そうだろ、そうであろう!ミーシャ!

「ふーん、いいんじゃない?」

いいよな、すごくいいよな!

「zzz」

まあ、いいんだけどさぁ・・・。


とにかく、ライブの最終調整だ。

「集合は朝7時、今回はうちの親も来るから、こっちでセッティングはやっておくよ

曲、ダンス、衣装の準備は、どうなってる?」

「曲は、前回歌ったものと、新しいもの、一曲。衣装は制服。ダンスはミーシャが教えたみたいね。」

「だいじょぉうぶ、でぇす!」

みなみさんとミーシャが、息の合った様子で言う。

俺は胸をなでおろす。みなみさんの管理能力には頭が上がらない。

そもそも、曲にもダンスにも衣装にも携われないプロデューサーってそれ、、どうなんだろうか・・・。

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