8話 最高のライブ

ストリングスの静かなハーモニーで、曲は始まる。

観客の話し声がスッと静まる

主旋律が高音部に突入し、木管楽器がハーモニーに参加する重厚な音が世界を包む。一瞬の静けさが訪れる。静かに歌い始める美優。ステージの周りに静かな森が、豊かな水を湛えた湖が、形成されていく。女神のような美優のソロ。観客は、まだ3人の姿をみることはできない。ステージの周囲50メートルに、美優の世界が形成されたところで、ドラムがその世界に加わり、流れの変化を予感させる。

「せーの!」

3人が観客の前に出る。金管がここぞとばかりに盛り上げる。3人揃ったステップ、練習の成果がしっかりと発揮されている!

明るいAメロ、落ち着いたBメロ。サビ前の静けさを越えて、曲はクライマックスへ向かう。

サビ、美優が一人で歌っていたところを、3人の声を会わせて歌う。ミーシャのダンス、美優の声、ヒナの笑顔。3人の個性がぶつかり、はじける。

このステージは、最高だ!


その後も、大きなアクシデントなく、ライブは終わった。観客は、のべ1000人を越えていた。道端にあったライブ会場は、隣の道路を埋め、歩道橋から見る人もいたほどだ。

「お疲れさま! 最高のステージだったよ! 」

興奮した俺の声、自分でも震えているのがわかるくらいだ。

「私たち、ちゃんと、アイドルできてた?」

美優の不安そうな声

「ああ、もちろん!最高のアイドルだったよ!」

「ありがとう、おに・・じゃない。プロデューサー!」


この最高のアイドルユニット、絶対に、武道館につれていく

そう決心した。

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