7話 ライブ当日

「マイクチェック、マイクチェック」

よし、これで準備は完了だ。

「みなさん! ありがとうございます! 準備完了です! 開演までもうしばらく待っていてください!」

わぁーという歓声をあげたのは、ヒナの知り合いの高校生たちだ。近くを歩いている人たちは、この中に、今日、ここで初ライブをする少女たちが混ざっていることなど、想像だにしないだろう。むしろ、このライブの存在すら知らない人も多いと思う。このライブの広告は、近くの知り合いのお店に貼らせてもらったポスターと、一部のネット掲示板への書き込みだけだ。妹たちには、気軽にやってほしい。



開演時間が近づく。人だかりを作る高校生たちと、それを見て近づく一般の通行人たち。

妹たちの様子は?

美優は・・・いつも通り本を読んでいる、ように見える。しかし表情や、からだの動きは固く、まさに「初ライブ前」って感じだ。

「大丈夫か?」

「大丈夫に決まってる!」

威勢のよさは失っていない、まだ大丈夫みたいだ。

ミーシャは・・・

跳び跳ねていた。なるほど、緊張すると跳び跳ねるタイプなのか・・・?

「大丈夫か、体力つかうぞ?」

「楽しみ、です! 」

息を切らしながら答えるミーシャ。

ロシア式の緊張解消法なのだろうか、世界は広いな・・・

ヒナは・・・

寝ていた。いや、何で寝れるの!

「おい! もうすぐはじまるぞ! おきろ!」

「ふわぁ、ごめん、ふわぁ」

顔にはいつもの天使の微笑み。寝起きだけはかわいいから、これはこれでいいのだろうか。

しかし、妹の通常運転過ぎる態度は、謎のベテラン感を醸し出し、他の二人を緊張させている。ということだけは、確実に言えそうだ。


「みんな、思いっきりやってこい!」

「да!(ダー!)」

「は、はいっ!」

「ふぁーい!」

三者三様の答えは、妙に俺を安心させた。

時計は9時の鐘をならす。

さあ、ライブの始まりだ!



あ、音楽かけるの俺だった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る