6話 過ぎ行く日々と近づくライブ

彼女たちの4、5月は、練習漬けで終わっていった。もちろん、俺は俺の仕事をした。イオンモール前の会場は高すぎて、費用的にきつかったので、近くの別のイオンの前の会場を使うことにした。俺の通っていた高校の近くで、親近感のあるところだ。

もちろん、彼女たちのテストはお察しだ。こんなことでいいのだろうか・・


「ねえ、衣装」

ヒナがいつもの様子で聞いてくる。

「制服でいいんじゃないか」

妹の学校の制服は可愛い。中のモデルが輝いていれば、どんな服でも輝いて見える、というのが俺の持論だが、賛成する人も多いはずだ。

「ミーシャは?」

「ミーシャは可愛い服を持ってただろ? あれでセンターで踊ってもらおう」

二人が同じ服で、ミーシャが真ん中で目立つ。作戦的には、大成功の予感しかしない。

「格安でライブをする方法」って、本出したら売れるかもな、衣装も、舞台も、メンバーも、曲も、?

「そういえば、曲は・・・?」

「ああ、それなら、大丈夫」

くるっと回る妹、制服のスカートがひらりと舞う。

「美優作曲、オリジナル曲!」

最強のどや顔をする妹、幸せそうだから、このままフリーズドライにして、ブリザーブドフラワーにしたい。

フリーズドライにせずとも、3秒ほどその表情を保ったヒナは、改めてのことを口にした。

「ついに、今月、頑張らないと!」

どこか遠くをみるような妹の目は、俺に応援したいと思わせるには、十分すぎる魅力を持っていた。



そして、ついにその日がやって来る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る