5話 可愛いモード

結局、俺は講義、彼女も用事があるということなので、一旦解散して、午後4時に家の最寄り駅に集合、ということになった。


そうそう、学校にいる妹にこれを報告したら、

「お兄ちゃんの可愛いは信用できない!」

だそうだ。家に来たら、もう一度面接をするらしい。俺はそんなの要らないと思うんだけどなぁ。



そして、講義の終わった俺に残された仕事は、二つ。ライブのセッティングと、ダンスを教えること、だ。

後者は俺の力では不可能なので、誰か、ダンスができる人を探そうと思う。今解決すべきは、前者だ。

幸い、俺の家の近くには、駆け出しアイドルにうってつけのステージがある。隣駅のイオンモールのステージだ。キャパこそ大きくないものの、通行人が多いステージで、あの可愛い高校生3人組が踊っていれば、きっと100人は足を止めることだろう。


そうそう、俺の悪い癖のひとつに、「希望的観測」がある。高校生の頃にビジネスプラングランプリに応募したときも、それを咎められ、全くいい成績を残せなかった。


ステージの使用申請のやり方を一通り調べたら、すでに午後3時、約束の時間が迫っている。

俺はイオンモール内のスタバを出て、隣駅、俺の最寄り駅へ急いだ。


俺がついたとき、そこには美優、ミーシャ、ヒナが、すでに揃っていた。ミーシャが一番の長身、ヒナは一番小さかった。

「ヒナ、お前、小さいな(笑)」

思ったことを、ただ、そのまま言う。

ヒナは俯き、隣の女子二人を見回す。俺もその視線を追う。あぁ、小さいなぁ、ヒナ、いろんな意味で。いや、そういうつもりでいったんじゃないんだけどね・・・

ヒナの顔がみるみる紅潮していく。

「えっと、そういうつもりじゃ・・・」

周りの二人の目線も冷たくなる

「お兄ちゃんのバカ!変態!」

ああ、最悪だ・・・


そして、妹たちは、駅前のサイゼリアに入っていった。俺は、ついて行くことができなかった。



夜、妹から話を聞いた。どうやら、ミーシャをスカウトしたことに免じて、大赦がでたらしい。もちろん、ミーシャの面接も合格だ。

特筆すべきは、ミーシャの運動能力。彼女はロシアでスケートをやっていて、ダンスがめちゃくちゃ上手らしい。

「お兄ちゃん、教えなくていい」

ストレートな発言は、グサッと音を立てて心に刺さる。

この妹、寝てるときと、何かを頼むときだけは可愛いんだけどなぁ。そう思いながらも、課題がひとつクリアされたことに、安心し、ゆっくりと休める。そんな夜になった。

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