第24話
ドーン! ドーン!
何かが連続で爆発するような音で目が覚めた、おそらく城の外で魔法を撃っている音だろう。何かが落ち、地面に当たる音や雷が落ちるような音も聞こえる。しかしおそらくまだ昼前だろう、まだ眠い
布団の中に潜り込む
するとドアが勢いよく開かれる音がする
「クス! いつまで寝てるのよ敵が来たわ!」
サンとルナに手を引かれて城の外に連れて行かれた
俺の平穏はいつくるのだろうか
城の外ではアルが騎士達に指示を出しているようだった、町の外では騎士たちが魔法を使いながら魔物たちを倒していた
こいつが働くなんて、よっぽどのことなのか?
「城が魔物に攻められているのである! このままでは我のセーブデータが壊されてしまう! 魔王様どうか助けて欲しいのである!」
なん……だと、それは困る! セーブデータは金では買えない思い出が詰まっている
「なんで魔物が攻めてくるのよ! こんなのありえないわ!」
サンが真剣な表情でアルに問い詰めていた
「おそらくであるが、何者かが召喚魔法を使っているのである!」
「フェアが言ってたやつか?」
俺の問にはルナが答えてくれる
「そうでしょうね、こんなに多くの魔物を召喚できるなんて聞いたことがありません」
秘術召喚術を盗んだのは門番達じゃなかったってことか?
「魔物は北から攻めて来ているのである、ある程度は城の騎士で抑えられるがこれが続くとまずいのである、魔王様たちは大元を叩いて欲しいのである」
「わかったわ! いくわよルナ!」
「はいサン」
二人の背中から翼が生え、俺の手を掴むと俺の体は中に浮いた
俺も羽ばたこう、鳥のように!
「あ、あああああああああああああああ!」
俺は飛んでいった、飛空船よりも早く
………………そしてたぶん、……一回死んだ……
二人はずっと前を見ている、俺と視線を合わせてくれない、胸のペンダントは崩れて消えてしまった、今はゆっくり飛んでいるが、きっと風圧にやられたのだろう。後で二人を問い詰めたい
少しすると大きな魔法陣のようなものの上に人影が二人立っていた
すぐ近くに降ろされ、俺達は人影と対峙する
そんな……そんなまさかあいつは…………
「アヘアヘアヘ」
なんでお前がそこにいるんだ! でも他の仲間じゃなくてお前でよかった、お前ならば裏切っていたなら容赦なく保健所に連れてってやる
青年くらいの男が話しかけてくる
「やぁ初めまして、この……犬が気になるのかい? この犬を操って君たちの行動を監視させてもらっていたんだよ。いやしかし驚いたよ、いきなり妖精を連れて帰ってくるんだもん、慌てて食べるように命令しちゃった」
「命令だと? まさか最初にアヘ犬が攻撃してきたのもお前の仕業か!」
「え……それは違うかな。でもキョウトウの国でドラゴンを倒した時にはもうすでに僕が操っていたよ、もちろんドラゴンを召喚したのは僕だよ」
「! じゃあパンツがほしいと言ったのはお前だったのか! この変態め!」
サンとルナも変態を見る目をしているだろう
「…………ちょっと待とうか、パンツは研究材料として――」
「うるさいぞ変質者め!」
「待てと言っただろ! 順番に説明させてくれ!」
ふむ、確かによくわからないな
「仕方ないな、わかった。説明してみろ」
男の説明を聞くことにした
しかしなんで敵は説明したがるのか
「……まず僕は宝剣ドラゴンキラーを持たせた勇者を操り、サン君を手に入れようとした。クス君が強くて失敗したけどね」
「待った! お前はロリコンなのか?」
男は嫌そうな顔をした
「サン君の力は他のドラゴンよりもかなり強い、それだけだよ。……次に僕は歴代ドラゴンの中でも強いドラゴンを召喚士しキョウトウの国を襲った。召喚魔法は思ったよりも使えなかったよ、でも君を殺す事には成功したみたいだけどね」
「待った! ドラゴンキラーを俺が使えば負けなかったぞ!」
男は心底嫌そうな顔した
「宝剣ドラゴンキラーに選ばれる人間なんてそうそういるものじゃないよ。……そして僕はわかったんだ、サン君を操れば良いってね。クス君はドラゴンより弱いんだろう? 魔法くらいならどうにでもなる。だから若いドラゴンを使って君たちをおびき出したんだ」
「待った! ドラゴンに魔法は効かないだろ! 操れないだろ!」
「どうだろうサン君、僕は君を操れる、できたら君の意思でこちらに来て欲しいのだが、またドラゴンの里で人を殺すように言われるのは嫌だろう?」
俺は無視された
「待って! 里で私に命令してきた大人たちもあんたが裏で支持していたの!?」
「そうだよ、そのまま君が殺ってくれるのが一番楽だったんだけどね」
男はそう言うと服を脱いだ
こいつ露出狂だったのか!
「その羽、あなたはまさか、禁忌の……」
おっと、ルナが大事そうなことを言っている
「そう、ドラゴンとのハーフだ。ドラゴンの肉体に魔法を使う才能。僕は選ばれた人間なんだ。おかしいと思わないか、なぜ選ばれた僕が禁忌とされ迫害を受けるのか、そしてなぜ選ばれた僕がサン君よりも弱いのか。でもいいんだ、さぁサン君こちらに来るんだ。世界をすべるのは人でもドラゴンでもない、選ばれた僕なんだ」
「そんなの断るに決まってるじゃない! わたしはクスと一緒に冒険するの!」
そりゃ断るわな、サンを拉致しようとしたり、国を襲い、戦争まで起こそうとしたわけだし、狂ってんじゃねーか? あんな説明をしただけでサンが納得するわけがない
「はぁ、仕方ないね。じゃあもうこの世界なんてどうでもいいよ」
男はナイフを取り出し、自分の胸に突き刺した
な!? こいつなにしてんだ!?
「命令だ、世界を壊し尽くせ。……犬、お前はおゆきっ! クス君、お前にサンが救えるか!?」
狂ってやがる!
男が倒れると同時にアヘ犬が二足歩行で逃げ出す、男とアヘ犬から白い塊が飛び出しサンの方へ向かってきた
なんか知らないけどやばいやつな気がする!
「パルプンテ!」
俺がパルプンテで作った障壁をすり抜けサンに向かってくる
「サン逃げてください」
ルナがサンをかばうようにして手を広げるが、白い塊はルナをすり抜け、サンの中に入った
「いやぁああああああああああああああ」
サンが倒れた
「おいなんだこれ! ルナ! なんだよこれ!」
「おそらく命を代償にしてサンを操ろうとしたのでしょう、サンの命に別状はないと思います」
なんだ、大丈夫なのか? 心配させやがって
サンが起き上がると少し大きなドラゴンになり、俺たちを手で払い飛ばそうとしてきた
俺たちはそれを後ろに下がって避ける
「サン! しっかりしてください!」
「ダメなの! 体が勝手に!」
なんだ!?
サンがブレスを吐いてくる、ルナがそれをブレスで迎撃、できずに俺のパルプンテでなんとか凌ぐ
「サン! どうした! 操られてんのか!」
「体が勝手に動くの! 頭の中で壊せって繰り返されるの、おかしくなりそう」
サンが体当たりしてきた、俺は横に動いて躱す、がルナに向かってサンの体当たりが続けられ、ルナが吹っ飛ばされた
「おいルナ!」
息をしているようだ、ドラゴンの回復力ならこれくらい大丈夫だろう
ルナがいた所にドラゴンキラーが落ちている
なんだよこの状況、どうしろってんだよ
サンがブレスを吐いてくる、俺は障壁を張りながら横に移動した
「頭が、痛い、助けて……クス」
俺はサンに向かって呪文を唱えるが、一向に状況はよくならない
「おい、どうなってんだ!」
「ダメ……ダメ……考えられなくなってきた……わ」
クソ、どうしたらいんだよ!
「サンなにかないか!」
「ドラゴンキラーを……拾って」
サンが体当たりしながら呟く、だんだん声が小さくなってきている気がする
横に交わしながらドラゴンキラーを拾う
ドラゴンキラーが光る
これが選ばれたってやつか? なにに? サンを刺すのに? そんなのできるわけがない、嫌だ
「サン?」
サンの動きが止まっている
なんだ? 術が解けたのか?
「ガルァアアアアアアアアアアアア」
サンがいきなりブンブンと手を振り回しながら迫ってきた
「おい、しっかりしろって!」
「もう……ダメ……私を…………殺して」
できるわけないだろ!
サンのブレスを呪文で止める
「一回だけ……動きを止めるから、お願い……合図したら、ドラゴンキラーを刺して、ドラゴンキラーなら魔術を払えるはず……構えて!」
俺はいつか見たアダムがしていた構えをとる
……サンを殺す? 無理だ。魔術を払うにしてもドラゴンキラーで刺したらサンが、あの時のように苦しむだけだ
「俺には、できない……」
力が抜けていく気がした
サンと一緒に死ぬなら、これでもいいかもしれない
「今から……動きを止める……から、お願い…………もう何も……考えられない」
「でも俺にはサンを刺すなんて……できないよ」
「今よ!」
俺はビクっとして剣を構える、でも足が動かない、目を閉じてしまう、涙が溢れてくる感覚がする
ダメだ、俺が何をしてもサンを助けられない、ごめんみんな、ごめん……サン
……………………手が温かい
なんだこれ? サンも襲ってこない
目をゆっくりと開けてみる
サンが俺に抱きつくようにして、ドラゴンキラーがサンのお腹に刺さっていた
……なん、で?
「サン?」
サンの体がゆっくりと人間に戻った
「だって……刺せないって言うから……」
なんだよこれ……
「今治してやるから!」
「無理よ……でもよかった」
何言ってんだよ!
「なにがいいんだよ!」
「クスに出会えて……よかった」
サン……嫌だサンがいなくなるなんて嫌だ、なんで自分からくるんだよ、あの時だって俺を逃がすことばっかり言ってやがった! ……あの時みたいにドラゴンキラーを使ったやつが死ねば、俺が死ねばサンが生きていられる?
俺はドラゴンキラーを自分の腹に刺そうとした…………動かない
見るとサンが剣を握り締めている
「お前……何してんだよ、手が……」
「私が生きてたとしても……クスが死ぬのなんて…………死んでも嫌」
もうなにもいらない
俺は剣を手放すとサンを思いきり抱きしめた
「なぁ、どうしたらいいんだ? お前がいなくなったら、俺はどうしたらいいんだ?」
「みんなで冒険して、ね? ルナたちを……幸せにしてあげて」
「お前も……一緒に行けるんだよな?」
「どうかな……あ、私のパンツ……持っていったらダメだから……ね」
そう言うとサンは微笑んだ
「こんな時に何言ってんだよ……」
「えへへ……バイバイ、大好きだ……よ」
サンはゆっくりと目を閉じていった
頼む、頼むからサンの笑顔をもう一度みたい、運なんてなくてもいいから。俺がもし死んだとしてもサンだけは、サンだけは助けてくれ、……神様
俺は精一杯の願いを込めて、奇跡を信じて、……唱えた
「パルプンテ」
サンの体が一瞬光った気がした
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