第18話
「お騒がせして申し訳ございませんでした」
俺はリビングで頭を下げていた
俺はパンツ事件のお詫びに観光旅行をプレゼントすることになった、俺がいない間に変態たちとの死闘でもあったんだろう、めっちゃ怒られた
金はもちろんギャンブルで稼いだ
ただし、ただのお詫びをするためだけに行くわけではない。
図書館で偶然読んだ文献によればこの世界で気になることが二つあった。一つは妖精の国があるらしい、もう一つはメイドロボの技術である。しかしメイドロボを買うにはかなり遠いシュウキュウの国に行かないと買えないらしい。つまり今回の俺の目的は妖精を捕まえることだった
「アヘ犬はここでお留守番しててくださいね~」
「アヘアヘ」
……アヘ犬を置いて俺たちは妖精の国マーグンへ行く
帰ってきたらアヘ犬が保健所に連れて行かれていることを望みながら
「ここが羽虫の国ですか」
「お前本当に俺の夢を壊さないでくれないかな?」
妖精の国へは飛空船できた、しかし他に誰もここで降りる人はいなかった。
妖精の国は幻想的な森のなかにあり、大きな木の上に家が作られている。よく見るとハシゴがあり、そこからも入れるようだが、この国にいる妖精たちはまばゆい光を発しながらハシゴを使わず家の中に入っていく
本当に可愛い妖精ばっかりだな、たまに男もいるみたいだけど、出生割合が違うのか?
俺たちが見とれていると一人だけ別行動をしていたようだ
「羽虫ゲーット」
ルナの方を見ると瓶の中に片手くらいの大きさの妖精が……捕まっていた
「確かに俺もさ、捕まえる気だったけどさ、この風景みて可愛い妖精を見て、お前よくそんなことできるな?」
「いやなのー! 出してなの、助けてなのー!」
妖精が瓶の中からポンポンとガラスを叩いていた
金髪で手のひらサイズの妖精だった、耳が少し長く、フリフリのドレスのようなものを着ている、胸はないが小さいエルを小さくしたような見た目かもしれない
「あら~可愛いです~」
エルが妖精の入った瓶をしゃがんで覗き込み、デコピンをした
「ぎぃやぁああああー死んじゃうのー! いやなのいやなの助けてなの、息が……息ができないの苦しいの、誰か……誰か蓋をあけてほしいの……このままじゃ……このままじゃ…………」
妖精の発する言葉がだんだん尻すぼみになっていく、手をついてゆっくり横になりながら言っていた。妖精の入った瓶はルナが手で蓋をしてる
息くらいできると思う。たぶん演技だな
「なんですって!? ルナ! 早く蓋をあけるのよ死んじゃうわ!」
サンがルナから瓶を奪い取って妖精を外に逃がした
妖精は俺たちの周りをぐるっと一周飛んだ後に
「バカバ~カなの! こんな演技に騙されるなんて頭イってるの! ちょっと病院紹介してあげようかなの、もちろん頭の病院なの、あひゃひゃひゃひゃ! べー」
妖精は舌を出して飛び去っていった
やっぱり演技だったか
「まぁほら元気出せ」
「…………うん」
サンが両手を地面に付き落ち込んでいた。あんだけ馬鹿にされたなら仕方ないな
「また捕まえてきますから元気出してください」
おいそれはやめろ
俺たちがサンを慰めているとゾロゾロとなにかがやってくる気配がした
「――をよこせぇええええ」
下をみると汚い小さいおっさんが集まってきていた
「にゃぁああああああああああああああああ!」
ヒマワリが汚いおっさんを蹴散らした
「ちょ、ヒマワリストップ!」
ヒマワリを引っぱたき、蹴散らすのを止める
汚いおっさんはハゲているが、たぶん妖精だ。
汚いがたぶん小人的な妖精だと思う
「なにをやとるかぁああああああああああああ!」
そこにヒゲだけ地面に付きそうなハゲたジジイが走ってきた、たぶん長老的な妖精だろう
この人に聞けばこれがなにかわかるか
「あの、この状況は一体なんですか?」
「すみませんの観光のお方達、なにぶん観光にきてくれる人が少なくての、村の者もきっと気分が高揚していたのじゃ、許してやってはくれぬかの」
「はぁ、もちろんいいですけど」
そりゃ汚いおっさんに集られる村なんて来たくないだろうな、みんな怯えてるし。いや、ルナだけは石を投げているように見えるが気のせいだろう
「おや、これはこれは、勇者様とお見受けする。ワシはこの村の村長ですじゃ、お詫びと言ってはなんじゃがどうかワシの家で、もてなしを受けてはくれぬかの」
「はぁ、ありがとうございます」
「ではまず歓迎の証をば」
そう言うと村長はヒゲの中から笛を取り出し鳴らした
笛の音が響き渡ると空中をフヨフヨと漂っていた妖精たちが輝きだし、より村の中が幻想的に輝き出す
「わ~綺麗です~」
みんな魅入っている、輝いている妖精をよく見るとケツだけ光っていて、妖精たちの恥ずかしそうな顔がまたたまらない。妖精たちは『もういいでしょ』と呟きながらそれぞれの家の中に入っていった
そりゃ恥ずかしいだろうな、でもよかったわ~
俺は村長の方を見る、すると目に入ってくる……ハゲたおっさん達も必死にケツをこちらに向け光っていた。……頭も光が反射して光っているのだろう
………………下見なきゃよかった
俺たちは村長の案内で家に向かうことになった
歩いていく途中に焼けた家を見つけ、まじまじと見てしまう
「あれが気になりますかな、家でゆっくりとお話を聞いてもらいたいですじゃ」
嫌な予感がするな
家につくと長老がドアをあけ、家の中に招き入れられる
「あ」
さっきの妖精がいた、俺たちと目が合うと間抜けな声を出していた
なぜか電気の下の紐の部分に羽が絡まっている
「あらあら~」
エルがウキウキしながら近づいていった、スキップしている
エルに似ているからだろうか? いつも同人誌にしか興味のないエルにしては珍しく人助けをするみたいだ
エルが妖精の体に手を伸ばすと
「ぎぃやぁああああああああああああああああ! なにするのほんとになにするの!? え……ほんとになにするの!? ねぇおかしいのこんなのおかしいと思うなの! なんで普通に助けてくれないの!?」
エルは妖精の体を掴むとそのまま引っ張って助けていた、助けたというか羽が二枚ヒラヒラと空を舞っていた
「あら~これでは飛べませんね~わたしのペットになりますか~?」
怖っ! 一人の妖精の人生なんてなんとも思っていないのか? お嬢様って怖い。ごめん、ほんとにごめんよ妖精さん
「ひどいの、あんまりなの」
妖精さんは暴れてエルの手の中から逃げると床を叩いている。が、羽がみるみる再生していく
おぉ、よかった、妖精さんよかったね、ほんとによかった人生これからいいことあるよ
「あら~? なんですかこれは~?」
エルが羽を毟ろうとするのを止めたところで、長老が土下座し話しだした
「お願いします、我らをお助けください」
羽が取れることはよくあることなのか? ぜんぜん気にしていなかった
異世界に来てから頼みごとをされるのが多い気がする、もう慣れたものだ
「どうぞ、話してください」
みんなは観光するらしい、木の上ならそんなに汚いおっさんも来ないらしく、綺麗でいいところだ
サンとヒマワリに二人が羽を毟らないように見てもらうことにして俺と長老と妖精さんは話に入る
「実は我が村の秘宝召喚魔法が盗まれましてな、これが悪用されれば必ずや禍が起きますじゃ。盗まれたことへの神の呪いなのか我らの羽はなくなり苦渋の日々を送っていますのじゃ、どうかそれを見つけだしては頂けぬでしょうかの? もちろん管理をしておった村一番の娘、ここにおりますフェアを連れて行ってくだされ」
「え、あれ?……それはいいとしてなんで私なの!?」
フェアが俺と村長の顔を交互に見てキョロキョロしだした
「お主が管理していたところを盗まれ焼かれたのじゃ! 当然じゃろう!?」
「え~、そうなの? ……ん~、ここにいても暇なの、一緒にどこか行くのもいいかもなの」
首をチョコンと傾けて考えたようだ
ちょっと可愛いじゃないか。なんかフェアが付いてくるらしいけど、まぁいいか。たぶん召喚魔法ってあのドラゴンだろ?
「村長さんは探さないんですか?」
俺の質問に村長は腕を摩りながら答えた
「実は昔ゴブリンにやられたのじゃ、同時に膝と肘に矢を受けてしまっての」
実にピンポイントな精密射撃だな、ゴブリンが強いのか、ジジイが弱いのか。いや嘘でも付いてんのか? 行きたくないんじゃないのか?
俺の頭にうなぎの蒲焼が連想された
話がまとまり、家の外に出ると
「やめてよルナ~」
「ふふふ」
「にゃ、にゃあ~」
「ハァハァ」
ルナは妖精の入った瓶を抱きしめ、サンはルナに泣きつき、エルが瓶をデコピンし、それをヒマワリが羽交い締めにしていた
俺はフェアに透明化を掛け、すぐに飛空船に二人を詰め込み、妖精の国から出た
家にたどり着いた
「あんまり観光できなかったな」
「一目見れただけでも楽しかったわ! あとは見たくないものが多かったわね……」
サンと二人でガックリとテーブルに伏せた
疲れた
「はぅ~妖精さんがほしかったですぅ~」
「売り飛ばせませんでした」
お前らのせいで疲れてんだよ?
「なんか秘術の召喚魔法が盗まれたらしいぞ」
「そうなのね、やっぱりおばあさまを召喚した人がいるのね……たぶん……ドラゴン、おばあさまの存在を知っているのはドラゴンしかいないはず」
「あれ、魔法使えないんじゃなかったのか?」
「召喚陣を書くのに魔力は必要ないわ」
気を付けないとな
「そうなの! きっとドラゴンなの! 悪用される前に見つけないとなの!」
もう悪用されてたけどな
透明化が解けたフェアに、ルナが目を輝かせている
「これから一緒に盗まれた秘術探すんだから捕まえて売るとかしないでくれよ?」
たぶんわかってくれたはず、たぶん
エルはニコニコしていた、たぶん家に来たんだから羽は毟らないはず、たぶん
「羽はなんで生えてくるんですか~?」
「羽は髪の毛みたいなものなの! 元々は長老も飛んでたなの!」
えっ、おい、まさか地面を歩いてた妖精ってみんな元々…………髪の呪い……か
俺がテーブルに突っ伏して考えていると
「あー! やめなさいよアヘ犬!」
「アヘアヘアヘ!」
サンの声で顔をあげた
なんだ? サンがアヘ犬の首をしめている、フェアがいない。みんなの顔が青い………………え、食った?
見るとアヘ犬の口がモゴモゴしている
……あぁあああああああああ! やっちまったぁあああああああああああああ!
「ぷはー、なんなの!? いきなり食べられたの! 外の世界怖すぎるの! ふぇ!? ベタベタなの!」
生きてたぁああああああああああああ!
フェアがアヘ犬の口から這い出してテーブルの隅に逃げると同時に、エルがアヘ犬を躾としてぶん殴った、躾だ、虐待ではない。アヘ犬はたまらず走って外に逃げていった、二足歩行で。
いつも優しいエルに殴られたら逃げたくもなるだろうな、……それにしてもフェアは小さいな、こんなんだから食われるんだ
「パルプンテ」
大きいほうがいいだろきっと
「ふぇ!? なんなの!? 今度はなんなの!? いやなのいやなの、あ、きゃーなのぉおおおおおおお」
フェアが大事な部分を隠しながら大きくなっていく
予想どうりフェアは大きくなった、さすがパルプンテだ。予想外だったがフェアの服が破れた、犬の唾液でべっとりのまま大きくなっている。そして大きくなり気がついた事があった、小さいとよく胸の大きさがわからなかったのだ
サンより上だな
俺の息子も大きくなった
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